食品ロス防止アプリが欧州で急速に普及 消費者を巻き込み2450万食分の廃棄阻止
食品廃棄は現在、世界的に大きな社会問題である。それは当地オランダを含むヨーロッパでも同じことだ。企業レベルでは取り組みがあっても、消費者レベルまでの取組みは、案外難しいのが現状ではないだろうか。今回紹介する「Too Good To Go」は、デンマークの若者が立ち上げたアプリで、多くの消費者の巻き込みに成功した食品ロス防止システムである。
飲食店でまだ食べられる料理が捨てられ…
2015年に立ち上げられた「Too Good To Go」。この企画を思いついたきっかけは、ある日3人でブュッフェに行った時だそうだ。営業時間の終了間近になり、片付けを始めた従業員が、残りの料理をゴミ箱に捨てているのを目撃した彼らは、従業員に聞いてみた。「この残り、まだ食べられるのにどうしてゴミ箱に入れるの?」と。
「食品衛生法により、残り物は全て処分しなくてはなりませんから」との答えを受けた彼らは、衝撃を受けた! 「まだ食べれるものを、どうして捨てなければならないのか!なんともったいないことだろうか。自分たちで取り組める何かないのだろうか」と。
こうして3人が考えあぐねた末に立ち上げたのが、廃棄寸前の売れ残り料理を格安で購入できるシステム「Too Good To Go」である。
ヨーロッパで13ヵ国、3万社以上が「Too Good To Go」に参加
若い3人が立ち上げたこの取組みは広く共感を呼んだ。現在ヨーロッパ圏内での参加国はデンマーク・オランダをはじめとする計13ヵ国。参加企業は、3万3249社(うちレストラン1万8462軒)にのぼる。
現在までに6万1233トンの二酸化炭素をセーブした。ヨーロッパ内でのアプリのダウンロード数は1750万に上る。これまでに約2450万食分(うちレストラン約721万食)の食品廃棄を阻止している。
ちなみにヨーロッパにおける家庭での食品廃棄量は、年間470億kgもあるそうだ。
オランダの参加企業数は、2750社。家庭における年間の食品廃棄量は17億から25億kgの間で、1人平均にすると約41kgの食品と57リットルの飲料を廃棄し、価格にして約145ユーロを捨てている計算となるそうだ。
出典元:
Too Good To Go
※各データは、2019年4月時点の統計
飲食店以外の生鮮食品にも拡大
この提案に共感し、どんな企業が参加しているのだろうか。すぐに思いつくのが、ビュッフェスタイルのレストランやケータリング業者。発案者の若者たちも、ここから始めている。これらの企業が廃棄する日々の、まだ食べられるけれど食品衛生法の関係で破棄せざる得ない食品の量は、半端ではないと思う。
それからベーカリーショップ。私が以前、デパートの地下で働いていた時に、閉店後の後片づけを初めて目にしたとき驚いたのを思い出す。参加企業はこれだけではない。生鮮食品を取り扱う企業なら、どんな企業でも参加可能である。
現在私の知る限りで参加しているのは、スーパー・ベーカリー・鮮魚店・精肉店・カフェテリア・ホテル・ケータリング企業・花屋など。内食・昼食・外食そして生花産業と実に幅広い。このことからも、いかに生鮮品関連業者の「まだ販売できるけど期限切れ商品」への関心が高かったかがうかがわれるのではなかろうか。
次回は、実際の参加企業からの声と具体的な利用方法、利用してみてのレポートをお送りしたい。(オランダ在住フードコンサルタント 白神三津恵)