ビール製造の廃棄大麦からインスタント麺も フランスの食品ロス削減を加速させるアップサイクルフード

食品ロス対策をサポートするビジネス展開が、フランスを含む欧州で活発だ。特に食品加工時に廃棄される部分に着目した商品が増えている。

加工することで付加価値アップ

フランス政府は2025年までに食品ロスを半減することを目標に掲げており、世界でいち早く2016年に「食品廃棄禁止法」が成立。その後、店舗で廃棄予定の食品を予約販売するアプリの普及など、サステナブル(持続可能性)を意識した動きが国でも民間でも進んでいる。

インスタント麺の商品棚
アップサイクルフードのインスタント麺(筆者撮影)

こうした中、「アップサイクルフード」が広まりつつある。アップサイクル(upcycle)とは、本来廃棄されるものをそのまま再利用するのではなく、加工することによって付加価値を高めること。衣類やアクセサリーなどファッション業界にも取組みが広まっている概念だ。

高い栄養価、ベジタリアンのニーズも

例えば、フランスのオーガニック専門店にはビール製造の廃棄物からつくられたインスタント麺が並んでいる。これまでごみとして捨てられていたビール醸造後の「使用済み穀物」を再利用した麺だ。

フランスのスタートアップ「Ramen tes drêches」は、ビール醸造工房で発生する大量の廃棄大麦が再利用できる可能性に着目。試行錯誤を繰り返しインスタント麺の開発に成功した。

インスタント麺のパッケージ
インスタント麺のパッケージ(筆者撮影)

パッケージには「約2000Lのビール製造時に出る300kgの大麦が2200食のラーメンの麺に」という説明が書かれている。

栄養価を見ると、1食当たり20gと非常に多くの食物繊維を含むだけでなく、使用済み穀物に豆類と小麦粉を組み合わせることで高タンパク質・ミネラル豊富となり、ベジタリアン・ビーガンなど動物性食材不使用の食事を求める消費者の期待に応えることも考えられているようだ。

リンゴの搾りかすなどでクラッカー

製造時の副産物から新たな価値をもつ商品を製造しようとするメーカーは他にも続く。「RESURRECTION」は醸造所の穀物、シードルの製造過程で出るリンゴの搾りかす、豆腐の加工時に出るおからなどをアップサイクルし、クラッカーを製造する。ブランド名は「復活」を意味しており、原材料の廃棄される部分に新しい命を吹き込むことを前面に打ち出し消費者にアピールする。

RESURRECTION アップサイクルクラッカー
アップサイクルクラッカー(「RESURRECTION」公式サイトから)

参考サイト:
Crackers Bio Olives Kalamata Romarin de Provence – RESURRECTION

栄養価が高く、環境に配慮された「アップサイクルフード」のコンセプトは消費者へのインパクトも大きく、広がりを見せつつある。一方、現時点では価格や味・食感に課題を抱えていることは否めないが、米国ではすでに認証制度も広がっており、今後さらに関連商品が研究開発されるとともに注目されていくのではないだろうか。(在フランス管理栄養士ライター 高城紗織)