緑茶とチーズのペアリングも フランスで日本茶ブーム
海外では日本食ブームや健康志向の高まりを追い風に日本茶の需要が伸びており、貿易統計によると輸出額はこの10年間で約4倍に増加している。特に抹茶ラテや抹茶スイーツなどに使用される “MATCHA ”の人気が続いているが、今回は抹茶からさらに広がりを見せているフランスの日本茶市場に迫る。
抹茶以外にも関心が拡大
フランスでは日本食人気や健康への意識の高まり、さらにコロナ禍の影響などが相まって、抹茶だけでなく煎茶や玄米茶や玉露などの日本茶全般に関心が寄せられている。
パリの百貨店内にある食料品売場では「SENCHA(煎茶)」「GYOKURO(玉露)」「HOJICHA(ほうじ茶)」と表記された日本茶が種類多く並べられており、その人気ぶりがうかがえる。
フランスには紅茶のメニューが充実した「サロン・ド・テ」と呼ばれる店も多くあるのだが、そこでも紅茶と並んで日本茶がメニューに用意されていることもある。
日本茶はオーガニック商品がメーン
フランスのお茶メーカー「Palais des Thés」や「Aromandise」でも日本茶をラインアップしている。
各社はWebサイト上で産地や品種、茶を煎れる際の温度や浸出時間、茶器の選び方など、日本茶に関するさまざまな情報を丁寧に説明している。また、健康志向の消費者が増えていることから、緑茶の機能性成分に着目し、抗酸化作用などを解説する記事も多い。
フランスを含むEU(欧州連合)は残留農薬基準が厳しく、オーガニック認証(ABマーク)の日本茶が目立つ。
日本茶でもフードペアリングを意識
美食を愛するフランスでは、飲み物と料理の相性を考え、互いの良さを引き出す「ペアリング」も重要だ。ペアリングというとワインやコーヒーなどがよく知られているが、日本茶に関してもフードペアリングが意識されている。
参照サイト:
Risotto au Sencha Ariake et aux crevettes – Palais des Thés
前述のPalais des Thésの公式サイト上では、同社の煎茶は山羊のチーズや魚料理などと、番茶は貝類やスモークサーモン、ウォッシュチーズやカマンベールなどとのフードペアリングのアドバイスを紹介。また、日本茶を飲料として楽しむだけでなく、茶葉を使用したレシピ提案など、料理の幅を広げる役割も期待されているようだ。
品種や産地はもちろん、どのように栽培されたかなどの背景を知り、その風味の違いを楽しむことができる点は、同じようにワインをたしなむ人々にとって新たな楽しみとなる可能性を秘めている。また、栽培のストーリーに加えて各国の食事に合わせたフードペアリングの提案を行っていくことは、今後も日本茶の魅力を世界へ伝えていく一助となりそうだ。(在フランス管理栄養士ライター 高城紗織)