パウチ惣菜特集

◆パウチ惣菜特集:コロナ禍でも8000億円超え

惣菜・中食 2020.07.10 12078号 05面

 ◆成長勢い止まらず 食品ロス削減にも貢献

 パウチ惣菜の成長の勢いが止まらない。単身・共働き世帯の増加、少子高齢化による個食ニーズの増加などを背景に、調理に手間をかけず、食べたい時にすぐ食べられる簡便性が受け入れられている。一方、食品ロス問題がクローズアップされる中で、事業者側としては少しでも日持ちのする惣菜を導入することで廃棄削減にもつながる。これに伴い日持向上剤の需要もアップトレンドにある。今年は新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて、全国で緊急事態宣言が発令されたことから、一時的に家庭で手作り料理ができる素材系食品にシフト。パウチ惣菜も4~5月は販売数量ベースでは前年同期に比べ約2割減少したもようだが、各社売れ筋商品への絞り込みや販促の工夫などによって比較的好調を維持しており、コロナ禍を乗り越えようとしている。アフターコロナは先行きが読めないものの、即食ニーズはまだ続くことから伸びしろは十分ありそうだ。(藤村顕太朗)

 ●7年間で市場規模4倍

 日本惣菜協会の「2020年版惣菜白書」によると、19年の「袋物惣菜」(容器包装後低温殺菌処理され、冷蔵で30日程度日持ちする調理済包装食品)の市場規模は、前年比11.8%増の8109億7800万円と8000億円の大台に突入、19年までの7年間で約4倍に成長した。惣菜市場全体の10兆3200億4300万円に占める「袋物惣菜」の構成比率は、前年比0.8ポイント増の7.9%と年々拡大を続けている。「袋物惣菜」はチルド帯を対象としているため、常温商品も含めると、その規模はさらに大きいとみられる。

 「袋物惣菜」市場を業態別に見ると、コンビニエンスストア(CVS)の市場規模は前年比20.7%増の5411億3600万円、構成比66.7%と圧倒的なポジションを占めている。以下、食料品スーパーマーケット(SM)、総合スーパー(GMS)、専門店その他、百貨店と続く。

 また、業態別カテゴリーで見ても、CVS内において「袋物惣菜」は米飯類、一般惣菜に次ぐ構成比16.1%を占め、他の業態に比べて存在感が大きい。さらに、カテゴリー別市場(売上高ベース)をみても、米飯類が年々構成比率を減らしている一方で、「袋物惣菜」の構成比率は前年比1.6ポイント増の11.9%と年々規模を拡大している。

 特にCVSでは、移り変わりの早い消費者ニーズを素早くとらえて商品展開。仕事帰りのビジネスパーソンを狙った時間帯や、コロナ禍では在宅勤務による生活リズムに合わせた販促活動を行うなどさまざまな工夫を凝らしている。

 ●売れ筋に変化 アイテム絞り込む

 今年は新型コロナが猛威を振るい、惣菜売場は大きな打撃を受けた。特に弁当類は軒並み売上げを落とす一方で、冷凍食品や乾物・乾麺など日持ちのするロングライフ食品売場は活況を呈した。また、緊急事態宣言発令に伴う外出自粛要請により、買いだめ需要が高まり、家で調理する機会が増加。生鮮売場の素材系に客足が向き、家庭で手料理を楽しむ傾向に傾いた。

 そうした中でパウチ惣菜も少なからず影響を受けた。緊急事態宣言中の4~5月を対象に、KSP-POSデータを基に本紙で独自集計した和洋パウチ惣菜の販売数量動向を見てみると、19年4~5月の主な和惣菜の販売数量が101万6901個に対して、20年4~5月は76万9185個と24%減少。主な洋惣菜を見ると19年4~5月の販売数量は144万1703個であったが、20年4~5月は124万8628個と13.4%減となった。洋惣菜はハンバーグが中心で、和惣菜に比べると依然として根強い人気を保つ。

 主な和惣菜のメーカー別販売数量を見ると、フジッコが20%以上と最もシェアが高く、2番手はシジシージャパン。この2社だけで約40%のシェアを占めている。主な洋惣菜については、石井食品が約40%のシェアを占めて数量ベースではダントツ1位。同社は素材本来の味を生かすため無添加調理にこだわっており、近年の健康志向に合致した製品作りが人気を支えていると見られる。次いで丸大食品が約20%を占め2位となり、日本ハム、滝沢ハムなどと続く。

 和洋惣菜とも前年同期に比べると全体の販売数量は落としているものの、今年4~5月の単月で見ると、和惣菜では5月の数量が4月より減少しているのに対して、洋惣菜の5月の数量は4月より増加しているのが特徴的。また、和洋惣菜とも新型コロナで売れ筋に変化が出てきたことから、4月から5月にかけて各社でアイテムを絞り込んで販売したことが功を奏して全体的な販売数量減をカバーしたもようだ。

 さらに、今年に入って注目すべきは、大豆ミートなどの代替肉が流通をはじめたことだ。例えば、大塚食品が肉を一切使用しない大豆を使用した「ゼロミート」シリーズを開発し、肉代替商品市場に参入した。19年4~5月のKSP-POSデータには登場しなかったが、今年4~5月には新規にデータとして上がってきている。このほか、日本ハムの「ナチュミートハンバーグ」や丸大食品の「大豆のお肉を使ったハンバーグ てりやきソース」などが新たに登場し売場をにぎわせている。

 ●日持向上剤の需要拡大

 パウチ惣菜市場の伸長に伴って日持向上剤の需要も拡大している。メーン成分の酢酸ナトリウムをはじめとする日持向上剤向け原料の生産も好調に推移。近年は惣菜の種類も増えていることから、その分だけ日持向上剤の種類も増加。惣菜によって問題となる原因菌はほぼ特定されつつあるので、それに対して各社は対策を提案している。例えば、加熱によるにおいをいかにマスキングするか、pH調整剤で問題となる酸味をいかに抑えるかなどのさまざまな課題に対して、各社は“配合の妙”などによって解決を図っている。パウチ惣菜で特徴的なのは、包装後に行う2次加熱処理により、風味や食品そのものの物性が変化することを避けるため、緩い加熱で済ませるケースがあるがその際には耐熱性菌対策としての日持向上剤が必要となっている。

 また、安全・安心のさらなる向上や健康志向の高まりを背景に、日持向上剤も“グリーンケミカル”がキーワードになっている。各社ともユーザーの無添加志向に寄り添った技術開発にしのぎを削っており、製品の仕上げの最後に添加するという従来型から、最初のレシピ段階から味の一部として置き換えることを狙った日持向上剤の開発も進んでいる。単なる“日持ち”だけが目的ではない複合的な機能が求められるようになっている。

 CVSではガス置換包装(MAP)によるトレータイプの惣菜が増えつつあるが、ユーザーによって日持向上剤は必要ないという考え方もあるものの、実際はMAPでも微生物は入るため、日持向上剤を一緒に入れることで万が一の保険として活用されることが多い。こうした日持ち期間の延長は、食品ロス削減にも貢献できるものとして取組みが活発化している。

 このほか、食品表示の面では保存料、pH調整剤、酸味料などの表示を避ける傾向にあり、各社はユーザーの要望に沿った表示ができる製品設計を提案している。

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