即席麺特集

◆即席麺特集:市場好スタート 袋麺需要高止まり オープンプライス品も販売増

小麦加工 2020.07.08 12077号 05面
新型コロナウイルスの感染拡大により袋麺の販売が増加している

新型コロナウイルスの感染拡大により袋麺の販売が増加している

 19年度の即席麺総市場は、数量ベースで微減となったが、金額ベースでは増加した。19年6月に行った値上げで数量・金額とも6月以降苦しかったが、需要期の下期にかけて回復基調で推移していた。この状況化、年度末の3月に新型コロナウイルス感染拡大の影響で需要が急増し、数量ベースでは前年並みまで数字を戻し、金額ベースでは前年を上回った。20年の総市場で見ると1~4月は、数量ベース、金額ベースとも前年比2桁増で伸長している。特にコロナ禍の巣ごもり需要で3~4月が同約2割増と大きく伸ばしている。カップ麺、袋麺ともに販売増加し、中でも袋麺は需要が高止まりしているようだ。(久保喜寛)

 即席麺市場は、コロナウイルスの感染拡大を受け、外出自粛要請などの影響で3月に需要が急増した。4月をスタートとする第1四半期は、3月の状況の流れを継続し、全体的に伸長した。5月に入ると袋麺は好調を維持するも、カップ麺は通常の需要に戻った。

 袋麺に関しては6月に入っても、需要は高止まりしており、各社とも安定供給に努めている。一方、カップ麺は、5月には需要が安定したため、6月には新商品の投入などに取り組んでいる。市場のトレンドとしては、オープンプライス商品が売上げを伸ばしている。コロナ禍による収入減など、不安定な状況が続いていることから、価格コンシャスなニーズが高まっているようだ。そのため、オープンプライス商品を展開しているメーカーは、引き続き安定供給に取り組んでいる。

 これまで、小売店などでは三密を避けるため、特売や販促などを実施しなかったことから、値上げ(値締め)につながっていたが、6月中旬からチラシは出さないものの特売価格の商品の陳列が始まっており、価格コンシャスニーズがこのまま高まってくると、定番アイテムの低価格競争に拍車がかかるのではないかと不安の声もある。19年6月に値上げを実施して1年がたち、ようやく消費者の意識に新価格が定着しつつある状況なだけに、低価格競争は避けたいところだ。

 商品ラインアップで見ると今春は「ガッツリ系」商品が充実している。日清食品が年初に、「日清豚ラ王ヤサイ、アブラ、ニンニク」とラーメンキットの「豚園 背脂醤油豚ニンニク」を発売。既存の即席麺ユーザーとは違う、外食のガッツリ系ラーメンファンの獲得につながったようだ。6月には、東洋水産とサンヨー食品からも商品が展開されるなど、「ガッツリ系」アイテムが即席麺市場でにぎわいを見せそうだ。

 「ガッツリ系」とは、ニンニク、豚脂、モヤシ、チャーシューなどたっぷりの具材が入った味付けの濃いスープを太麺で味わうラーメンで、外食のラーメン市場では、醤油、味噌などのラーメンの一つの分野として「ガッツリ系」が存在感を表している。ニンニクが効いた濃い味付けと、太麺でたっぷりの具材によるボリューム感が、若年層男性を中心に支持を得ている。これらを背景にCVSの商品に調理麺の「ガッツリ系」ラーメンが採用されるなど、外食での人気が加工食品にも波及している。

 即席麺でも、東洋水産が19年12月に「マルちゃん正麺カップ がっつり系豚骨醤油」を販売するなど商品化されてきた。その中で注目だったのが、日清食品が即席麺市場に提案した「豚園」だ。同品は麺、チャーシュー、スープ、背脂、ニンニクをセットにした1食完結型即席麺で、モヤシをトッピングするだけで外食のガッツリ系ラーメンが家庭で楽しめる。税抜き希望小売価格368円と高価格帯であるものの、売上げは好調で即席麺市場でのガッツリ系の市場性を見いだした。この状況下、サンヨー食品は6月8日にカップ麺「野郎ラーメン ニンニクマシマシ野郎」を新発売し、東洋水産もカップ麺「でかまる がっつり豚骨醤油」を投入した。また、即席麺以外でも日清食品は5月に開始したデリバリーサービス「RAMEN EX」で「豚園」をベースに開発したオリジナル商品「豚天国」を販売している。アイテムが揃うことで、話題性の喚起や購買意欲の刺激となり、即席麺市場の活性化につながることに期待したい。

 また、うどんやそばといった和風カップ麺市場夏場の販売減に向け“汁なし・冷やし”提案を行い、需要の底上げを目指している。盛夏期を前に、日清食品が「日清のどん兵衛」で、東洋水産が「赤いきつねうどん」「緑のたぬき天そば」の和風麺シリーズの中から、「汁なし」「冷やし」商品を投入している。2社とも、汁なし・冷しタイプを新たな夏のトレンドへ育成していく考えだ。

 和風の汁なしは、湯切りものとして焼うどんなど、これまでも展開されていたが、“冷し”については昨年、東洋水産が発売した「マルちゃん 冷しぶっかけたぬきそば」が、湯切りカップ麺タイプの冷やしそばの先駆けとなった。盛夏期を狙って投入するも昨年は冷夏だったため、商品特徴が生かせなかった。

 昨年の展開を踏まえ、東洋水産は今シーズンも「マルちゃん 冷しぶっかけたぬきそば」を6月8日に投入。今年は、そばと合わせて「マルちゃん 冷しぶっかけうどん」を追加した。「赤いきつねうどん」「緑のたぬき天そば」を中心とした和風どんぶりカップ麺シリーズから、そばとうどんの2品体制で“冷し”を押し出している。

 6月22日には、日清食品が「日清の汁なしどん兵衛 冷しぶっかけうどん」を新発売した。同品は、「どん兵衛」史上初の“冷やしうどん”として展開している。

 2社の商品とも初動は順調のようで、気温が上がってくる7月以降の販売増に期待がかかる。冷やしタイプの調理は、湯切りしたあと冷水で冷やすという工程が加わるため、既存の湯切りカップ麺と比べて手間はかかるものの、冷たい麺が楽しめることは従来のカップ麺とは違った味わいを提供できる。猛暑などで食欲が落ちる時期に、冷たくさっぱりした味わいを提案することで、夏の即席麺需要の裾野を広げていく。

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