紅茶特集
◆紅茶特集:「水出しアイス」や機能性製品の投入が活発化
20年の紅茶市場は、コロナ禍による巣ごもり需要、イエナカ需要拡大で、家庭用市場は伸長した。一方で、外出自粛などの移動の制限から、業務用市場は大きな影響を受けた。在宅時間の増加は、紅茶に対する興味や関心を高め、カフェ代替ニーズなどから、新規ユーザーの獲得に成功している。21年春夏は、この新たに獲得したユーザーの継続飲用や習慣化による定着化を図りたい。伸長する「水出しアイスティー」のラインアップ拡充や健康や機能性を訴求する製品投入が目立つ。(本吉卓也)
●新規ユーザー定着化 さらなる拡大へ
家庭内需要拡大を背景に、20年の家庭用紅茶市場は前年超えを果たしている。ティーバッグ(TB)がけん引する中で、サブカテゴリーでも軒並み好調が続き、近年は微減が続いたリーフ茶やニッチなハーブ茶などの伸長が目立つのが特徴となる。家庭内で過ごす時間の拡大から、じっくり紅茶と向き合うユーザーが増え、ひと手間かけて楽しむリーフ茶やハーブ茶など紅茶への感度も高まっているといえるだろう。また、外出自粛による移動の制限から、カフェ代替ニーズなどの新規ユーザー獲得にも成功しているという。
三井農林の竹田一也企画グループ商品企画・マーケティングチームチームリーダーは「20年の家庭用紅茶市場は、前年超えも果たし、非常に順調といえるだろう。消費者トレンドとして(1)コスパ重視(2)健康・機能性(3)ひと手間・こだわりが挙げられる。詳しく見てみると(1)コスパ重視として、50パックや100パックなどのコストパフォーマンスが高いスタンダードTBや水出しアイスTBが伸長している。特に、水出しアイスTBは、自宅で仕事をしながら、『ちびちび、だらだら』飲むイメージが高く、マイボトルでの飲用などの汎用(はんよう)性の高さも支持を獲得していると思われる(2)健康・機能性として、カフェインレスやショウガといった健康的な切り口も支持を高めている。(3)ひと手間・こだわりでは、ひと手間かけるリーフティーの伸長などがある。今後は、消費者意識としても高まる(4)サステナブルな訴求(5)紅茶での新たな体験を提案し、さらなる拡大を目指す」と語る。
ユニリーバ・ジャパン・サービスの佐藤由記リプトンブランドマネジャーは「消費者動向を深掘りすると、ウィズコロナという先行きの読めない世の中で、大手ブランドへの信頼の高まりや、メッセージ性の高いブランドへの需要の高まりがある。加えて、手元に届くまでの流通スピードを求めて、オンライン消費やローカル消費が増える傾向が見られた。コロナの感染拡大への恐れや対処しておきたいという気持ちからか、(体調管理などの自己防衛意識による)健康ニーズはさらに高まったとも考えられる。テレワークや在宅時間の拡大は、“家庭でもカフェのような飲み物を楽しみたい”というニーズの高まりにもつながっている。『リプトン』ブランドとして、アレンジレシピの発信を続けることで、イエナカ消費をけん引できたと考えている。高まる健康ニーズに応えるべく、20年秋冬には『ボタニックティー』の発売や『ルイボスティー』レンジの拡大を中心にヘルシーティーに注力し、新規ユーザー獲得に成功できた」と振り返る。
この両社が春夏、注力するのが、近年拡大傾向が続き、20年に大きく伸長した「水出しアイスティー」となる。
三井農林の企画グループ商品企画・マーケティングチーム商品企画ユニット大槻裕介氏が「水出し紅茶市場は、近年の猛暑日やマイボトル需要などから、年々拡大している好調なカテゴリーとなる。在宅ワーク拡大などから、RTD紅茶飲料からの流入など、間口も拡大し、今後も伸長が見込める」と語るように、春夏の紅茶市場の最激戦区となる。
夏のフレーバーとして人気の高い「レモン」を選定し、「レモン×ルイボスティー」の組み合わせで投入するのが三井農林の「日東紅茶 水出しアイスティー ルイボスレモン10袋入り」(TB)だ。
一方、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングが展開する「リプトン」ブランドからは、新フレーバー「リプトン 水出しアイスティー クールストロベリー」(TB)を投入している。なお、同ブランドは、アイスティーにビタミン豊富なフルーツやハーブを入れて、アイスティーをおいしく楽しくする提案「フルーツインティー」を例年、展開している。
また、新たな提案として、2種のフルーツ果汁に栄養成分をプラスしたインスタントタイプのフルーツティー「リプトン フルーツチャージティー」シリーズ3種(スティック)を新発売している。仕事や家事の合間で疲れた時などの心と体のリフレッシュとしての飲用を訴求していく。
加えて、在宅時間の拡大は紅茶の飲用杯数を増加させ、消費者の高まる健康志向から、カフェインレスのニーズも拡大している。「カフェインレス アールグレイ」をリニューアルするトワイニング・ジャパン、ノンカフェインティーを強化する日本緑茶センターなど、対応も進む。
アジアンティーに着目し新商品を投入する名糖産業など、各社がウィズコロナ・アフターコロナにより、多様化する消費者のインサイトに対応し、さらなる拡大を目指す。