なめ茸・山菜加工特集

なめ茸・山菜加工特集:なめ茸認知度、若年層で低下 新世代ユーザー開拓が急務

農産加工 2019.06.24 11898号 08面
なめ茸の認知度は若年層で低下しており新世代ユーザーの開拓が急務(長野興農の「なめ茸をめぐる親子工場見学ツアー」=18年8月)

なめ茸の認知度は若年層で低下しており新世代ユーザーの開拓が急務(長野興農の「なめ茸をめぐる親子工場見学ツアー」=18年8月)

ナガノトマトが14年秋から展開している、ソフトボトル容器のなめ茸シリーズ。一般的なガラス瓶アイテムに比べ、スプーンなどが不要なハンドリングの良さ、軽量で破瓶の心配がない安全性などを武器に、家庭用、業務用の両市場でシェアを広げている。

昨夏、全国のご当地チューブ食品と特集したTVのバラエティー番組で取り上げられると、全国のSMなどから問い合わせが殺到。量販店や高速道のサービスエリア、「道の駅」などと併せ、さまざまなチャネルで採用を伸ばした。

軽量、破損リスクの軽減など輸送面でのメリットから、eコマースなどによる通信販売、宅配などでも優位性を発揮している。

同社の18年4月~19年3月期のなめ茸カテゴリー売上高は、前年比で約6%のアップ。瓶物は微減で推移し、ボトル製品の好調が引き上げた格好だ。

「ボトルタイプは通常の瓶物に比べて商品の背丈が高いため、スーパーの瓶詰棚ではまだちょっと浮いた感じだが、ユーザーからは冷蔵庫のドアポケットにマヨネーズ、ケチャップと同じようにしまえるのが良いと好評。瓶詰は、いつの間にか冷蔵庫の奥で眠ってしまいがちなので、ユーザーが食べる頻度も高まっているのでは」(同社営業部)

ただ、市場定着が進む半面、瓶詰製品と比べた割高感も顕在化しつつある。家庭用アイテム(270g)の実勢価格は400円弱と、一般的な瓶詰製品(固形分60%、120g)より約1.8倍高く推移。土産物系では500円前後で販売している店もある。

「SMの、いわゆる『300円の壁』をどう超えていくか。短期的には難しいが、製造効率の改善などを進め、価格を抑えていく必要がある」(井垣孝夫ナガノトマト社長)

メニュー展開の拡大も、大きなテーマ。採用の中心はレギュラータイプで、「梅じそ」「明太子」「キムチ味」の3品を展開するフレーバーアイテムは後塵を拝している格好。「現状では、やはり『ご飯のお供』が用途のメーン。フレーバー系の伸長には、『食べる調味料』的な用途やアレンジメニューの浸透が不可欠」(同社営業部)。9月には、「明太子」の明太子量を約2.4倍増にリニューアルする予定で、「明太子パスタ」を中心にメニュー提案を強化する方針だ。

SM生鮮売場でのクロスMDなどにも、取り組んでいく計画。「主戦場の瓶・缶詰売場は、客の回遊率が決して高くない。ボトルタイプの認知度も、市場全体で見ればまだまだ。多くの売場で、ユーザーの目に留まる機会を増やしていきたい」(井垣社長)

1月に丸善食品工業から販売会社として独立した業界トップ、テーブルランド(TBL)も、「軽量かつ割れにくい新たな容器」(同社営業部)を研究中。「輸送コストが上がる中で、破瓶トラブルなどが減ればメリットは大きい。ユーザーにとって、偏平瓶の形イコールなめ茸。定番のイメージを変えない形で、市場に投入していきたい」

世代交代が進むユーザーへのアプローチも、業界にとっては課題。ナガノトマトによると、ある女子大学で食物・食品関連について学んでいる学生50人に、なめ茸を知っているかどうか聞いたところ、2人しか手が上がらなかったという。「認知度4%はショックな数字。食べてもらうには知ってもらう、そこから始めなくては」(同社営業部)

毎年8月に、「なめ茸をめぐる親子工場見学ツアー」を行っている長野興農も、同様の指摘。11年2月には、長野県産農産物の普及キャンペーンの一環で県内の小中学校600校に県産エノキ茸が原料のなめ茸21万本を無料で配ったこともあり、「同じような取組みも、考えていきたい」(同社営業部)。

●売価再び低迷、中国産が増加

なめ茸メーカーの多くは16年春、実に二十数年ぶりに価格改定を行い、NB製品で平均5~10%値上げした。ただ、市場の大半を小売PB製品に抑え込まれる格好で、実勢価格は伸びなかった。

前年に倒産した小松食品が開けた約20万ケースと見られる市場の穴は大きく、国内製造では追い付かない需要を中国産でカバーせざるを得なかった結果、それまでの国産回帰が一転した形。一部PBで中国産への再切り替えも進み、高価格帯のボトルタイプが伸びる一方で、ボリュームゾーン全体は下振れしている。

瓶詰タイプのなめ茸は、エノキ茸の固形分60%が中心のいわゆる「普及品」と、固形分80%が一般的な「JAS特選品」に大きく分けられる。普及品の価格はスタンダードな120gタイプで税別90~120円程度、特選品は170~180gタイプで250~270円で推移している。

市場で大きなウエートを占めているPB製品は、以前の税込み100円から税別100円程度に価格が上がっているが、メーカー各社によると、収益性から見た普及品1瓶の適正な希望価格は120~150円で、実勢価格との開きはまだ大きいという。

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