ウイスキー特集

◆ウイスキー特集:市場拡大続く 5年間で1.5倍に 「ハイボール」成長けん引

酒類 特集 2019.10.21 11958号 05面
東京・六本木ヒルズ大屋根プラザで開かれた、スコットランドのシングルモルトウイスキー「グレンモーレンジィ」のポップアップバー(8日撮影)

東京・六本木ヒルズ大屋根プラザで開かれた、スコットランドのシングルモルトウイスキー「グレンモーレンジィ」のポップアップバー(8日撮影)

いなげや小金井東町店のウイスキー売場

いなげや小金井東町店のウイスキー売場

ウイスキー市場の拡大が続いている。市場は過去 5 年で約1.5倍に伸長。ウイスキーの炭酸割り「ハイボール」が成長をけん引している。ただ、国産のプレミアムウイスキーは原酒不足を背景に品薄感が強く、新たな提案が生まれにくい。今後は需要に応えきれない分を輸入ウイスキーで補う動きが広がりそうだ。(岡朋弘)

18年のウイスキーの出荷量(課税済み)は、前年比9.7%増の17万8522klだった。14年の11万7252klに対し、5年間で約1.5倍に伸びた。19年に入ってからも引き続き好調に伸びており、年間では10%増(缶ハイボールを除く)程度で着地しそうだ。

国産ウイスキーの輸出も堅調な伸びを示す。18年の輸出金額は約150億円と前年から1割程度増えた。品目別では清酒に次いで2番目に輸出が多く、日本産酒類の輸出の約4分の1を占める。

10月1日実施の消費増税を受け、ウイスキーの大容量品を中心に、増税前の駆け込み需要が発生したもよう。だが、仮需の規模は限定的だったと思われる。

キャッシュレス決済のポイント還元制度やラグビーワールドカップが開催されるなど消費を押し上げる好材料もあり、増税後の出荷状況も悪くないとの声が聞かれる。

増税後もハイボール需要を背景に、ビール類やワインといった他カテゴリーからのシフトも受け、ウイスキー市場は堅調に推移すると見られる。増税を機に節約志向の高まりが予想される中、今後は外食での外飲みが減少し、家飲みといった家庭用消費が強まると見る企業が多い。SMなどの店頭ではPOPでの情報発信や景品付きの商品展開といった販売強化策が増えそうだ。

若者の認知拡大と新規飲用者の獲得につなげる狙いで新たな取組みも広がる。アサヒビールはバーボンの「アーリータイムズ」ブランドのパッケージデザインを4月に刷新した。これに合わせて起業家支援企業と組み、新たな取組みをスタートさせた。その一環としてスタートアップ企業を支援する目的でアーリータイムズなどを提供するキャンペーンを実施。100社の定数に対して120社以上から応募があるなど反響を呼んだ。

アサヒは業務用のハイボール提案にも力を入れる。国産の主力ブランド「ブラックニッカ」の樽詰めハイボールは1~9月で21%増と伸長。ジャーで仕込みオリジナルハイボールがつくれる「ジャーハイ」は500店舗で展開している。今後は各エリアのご当地素材を漬け込む提案などを計画する。

キリンビールは今春から始めた料飲店向けの「三層ハイボール」提案に注力する。価格帯と味わいが異なる3種のハイボールメニューを来店客に提案し、飲み比べする楽しさを提供する。現在約800店舗で展開している。

三層ハイボールは、来店客に異なる三つの価格帯を提示するとミドルの価格帯が最も売れ行きの良い傾向があるが、価格帯による飲み比べも促進され料飲店の客単価アップにも貢献していることから実施店舗からの評価が非常に高いという。

大幅な伸長を見せるサッポロビールのスコッチ「デュワーズ」は、グローバル市場の中でも米国、スペインに次ぎ日本が販売量で世界第3位に浮上した。ハイボールの起源とされる同ブランドは、「100年ハイボール」という切り口で提案し、若者の需要を取り込んでいる。

各社のハイボール提案により、ハイボールをオンメニュー化する料飲店が増えるなどして、消費者との接点が一層拡大しそうだ。

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