中田宏環境副大臣インタビュー(上)脱炭素で経済成長を 揺るがぬパリ協定の意義

中田宏環境副大臣

中田宏環境副大臣

 企業のサステナビリティ経営が一段と重みを増している。食品業界は今年、脱炭素経営の継続的な推進に加え、30年度に事業系食品ロス60%削減を目指す食品リサイクル法の新たな基本方針に向き合う。環境省は産業界の現況をどう評価し、どこに導くのか。「食と環境は切っても切り離せない関係」と語る中田宏環境副大臣にロングインタビューを行った。(聞き手=今野正義日本食糧新聞社会長、文=横田弘毅)

 –今年1月、米国トランプ政権がパリ協定からの再離脱を表明し、国際社会に動揺が広がっています。

 中田 私自身も残念に感じていますが、気候変動は人類共通の待ったなしの課題であり、パリ協定の重要性が失われることはありません。24年の世界平均気温は観測史上最高値を更新し、工業化前から1.55度Cも上昇しています。地球温暖化は確実に起こっており、洪水、干ばつ、熱波の増加などにより、食料生産にも影響を及ぼしています。日本でも高温によって一等米の比率が低下しており、昨今のコメ価格の高騰と相まって、国民の不安が高まっている状況です。

 20年前なら温室効果ガスと温暖化の因果関係を疑う向きもありましたが、いまや国際合意であり、各国の脱炭素の取り組みは地方政府、経済界を含むさまざまなステークホルダーに広く浸透し、世界的な潮流になっています。わが国を含め、今後も大きな流れは変わらないと考えています。

 このような中、わが国は先日(2月18日)、30年から先の新たな温室効果ガス排出削減目標について、13年度比で35年度に60%削減、40年度に73%削減を目指すことを政府として決定しました。今後、脱炭素と経済成長の同時実現を目指し、国内での排出削減に着実に取り組むとともに、わが国の経験や技術などを成長著しいアジアを中心として海外に移転し、世界の脱炭素化とわが国の経済成長に貢献していきます。

 同時にさまざまな機会で米国の関係者と対話し、協力の道を探求するとともに、欧州やアジア諸国などと連携し、G7やG20などの多国間の枠組みも活用しながら、国際的な議論を主導して参ります。

 –そのことは日本の産業競争力の強化にもつながりますね。

 中田 おっしゃる通りです。わが国の自動車産業は排ガス規制や省エネの要請にいち早く対応することで世界的な評価を獲得してきました。世界に先んじて脱炭素化を進めていくことは、今後のわが国の経済にとって間違いなくプラスになります。

 少し極端な例え話になりますが、温暖化を食い止める一番の早道は、経済活動を停止することです。国内の工場を閉鎖すれば、NDC(パリ協定に基づく国が決定する貢献)の達成を引き寄せることもできる。しかし、そんなことをしたら国民生活が成り立たなくなってしまう。

 長い道のりではあるけれども、負荷を減らす経済活動を推し進めていくよりほかに、解決の手だてはないのです。そのことが経済を強くし、最終的に温暖化に起因する災害の抑制という壮大な話にまでつながってくる。そういう意味からすると、これからの環境省は経済官庁としてのカラーが色濃くなってくる。決して規制にばかり取り組む役所ではないのです。

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