中田宏環境副大臣インタビュー(下)関係深い食料と環境 プラ汚染対策への行動を
–近年、食品企業のサステナビリティ推進活動が大きく進展しています。容器リサイクルを従前の熱回収からボトルtoボトルに切り替えたり、自然共生サイトの取り組みに加わる動きも活発です。この動きをどうご覧になっていますか。
中田 プラスチックの資源循環促進の重要性が高まっている中、ボトルtoボトルの取り組みが積極的に推進されていることは、大変ありがたいものと受けとめています。自然共生サイトについても、飲食企業の水源として保全されている森林や、食品企業の工場緑地として保全されている緑地などが広く認定されているところです。食料と環境が切っても切り離せない関係にあることが、こうした動きにつながってきているのではないでしょうか。引き続き自然資本の保全の概念が組み込まれたネイチャーポジティブ経営への移行を進めていただきたいと思います。
2月26日付の日本食糧新聞に明治さんが「きのこの山」の発売50周年に合わせて里山の保全などを訴求していくという記事が載りました。食品業界に限った話ではありませんが、日本企業は世界的にみてもこうした取り組みに昔から意欲的でした。そのことが今、日本全体にとって非常に大きな力になりつつあります。
例えばTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の開示宣言企業数も日本は世界最多です(25年1月現在140社)。ニッスイさんはこのTNFDの取り組みを好調な株価につなげています。企業の脱炭素経営が省エネによるコスト削減にとどまらず、企業価値を向上させ、好条件の資金調達や優秀な人材の確保にまでつながる時代になってきたということです。
そういう意味でいうと、脱炭素に早くから取り組んできた企業と、評価の流れが定まってから取り組む企業とでは、大きな差が生じてくることが予想されます。環境に関するさまざまな規制や、枠組みが固まってから行動するのではなく、世界の大きな流れを読み込んで主体的に行動していく力が求められているといえるでしょう。
このことと関連して最近の具体的な動きに少し触れさせていただきます。昨年、プラスチック汚染対策に関する国連の政府間交渉委員会は、国際条約の合意に達することができませんでした。しかし、海洋プラスチックごみは年々増加しており、50年に魚の重量を超えるという予測まで出ています。プラスチックの使用減・再利用、再資源化、生分解など代替素材の確保が国際社会にとって避けて通れない課題であることは間違いありません。
国民生活を支える食品のプラスチック容器などに関しても、いずれは対策が求められることになるでしょう。食に関わる企業の方々には、このことを今のうちから意識していただきたいと思います。
–長時間ありがとうございました。(横田弘毅)
=おわり
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