今年はこうなる業種別業態別展望 弁当=競合・競争さらに激化
持ち帰り弁当ショップ。ハンバーガーやドーナツチェーン同様に、街中でよく見かけるところだが、この業界も競合・競争がし烈で、チェーンビジネスとしては寡占化が進行中という印象を深くする。
弁当ショップは、客席を有しないオールテークアウトの運営形態であるので、店の規模は小さく、物理的には出店は容易だ。
このため、バブル経済のころは多様な弁当チェーンが乱立したが、現在は淘汰が進んだせいか、特定のチェーンしか見ることがない。
弁当ショップの運営コンセプトは、温かいご飯と作りたてのおかずを提供することにあるが、しかし、これは最近は必ずしも、優位性がある運営形態とはいえなくなってきている。
コンビニエンスストアでの弁当販売が一般的になってきており、弁当チェーンにとっては強力なライバルという存在になってきているからだ。
コンビニはセブンイレブンをトップに、ダイエーローソン、ファミリーマートなど大手チェーンを上位に、全国に五万店以上が展開しており、弁当など食品販売が五、六割と大きなウエートを占める。
コンビニの弁当は専門業者(ベンダー)からデリバリーされてくる作り置きのもので、店では電子レンジで温めて提供する。
コンビニはご飯物の弁当のほか、おにぎり、パン、サンドイッチ、麺類なども豊富にそろえており、端的にみれば専門の弁当ショップを越える豊かな品ぞろえだ。
コンビニは飲料や日常雑貨の品ぞろえもあり、また二四時間営業が一般的であるので集客力が大きく、弁当チェーンが脅威に感じるのは当然のことだ。
弁当はパン屋、惣菜店、スーパー、百貨店などでも売っているほか、最近は喫茶・スナック、居酒屋、キッチン、レストランなど一般の飲食店でもテークアウト機能を付加しており、競合・競争相手は広がる一方だ。
弁当は「中食」マーケットとしてのとらえ方になるが、その意味では同じ米飯商品のすしショップ、丼専門チェーンのほか、ハンバーガーなどFFショップもライバル関係になる。
こうみてくると弁当業界は、同業他社ばかりがライバルではなく、コンビニを筆頭に弁当(中食商品)を扱う異業種・異業態がすべてコンペティターということになる。
このため、内と外で競合・競争が激化してきているので、体力やマーケティング、マーチャンダイジング力がないと、チェーン展開も低迷し、やがては戦列から離れ淘汰されることになる。
すでにこういった現象は起きている。かつて弁当チェーンは、ほっかほっか亭をはじめ、本家かまどや、ホットフーズ、おべんとう広場たきたて、キッチンほっかほっか弁当、いろは亭(現ランチボックス)などが乱立し、店舗出店を競っていたが、現在は(東京地区においては)ほっかほっか亭や本家かまどや、たきたてなど数チェーンをみるのみだ。
弁当メニューは単価三〇〇~六〇〇円前後の安さで、温かいご飯、バリエーションに富んだおかずが大きな魅力だ。
しかし、弁当、中食マーケットへの参入企業が増えた現在、消費者にとっては選択肢が拡大して好ましい状況だが、弁当チェーンにとっては厳しいビジネス環境だ。
低価格志向を反映して客単価も二割近く低くなっている。客単価がダウンすれば、店の売上げも落ちることになる(大手弁当チェーン)。
一つの対応策としては、各チェーンともにさらに低価格商品を投入して、一定客数を確保するという戦略に出ているが、これも思惑どおりには実績は上がっていないという実情だ。
弁当チェーンの原材料コストは四五%前後、包材五、六%が一般的だが、低価格商品の投入といっても、おかずのバリエーションは抑えられないし、また消費者の口は肥えている。
食材は冷凍物も扱っているが、旬の食材は高くつく。まずいものは消費者に敬遠される。食材コストを落とすわけにはいかない。
すでに弁当チェーンのリストラ、コスト削減は限界にきている。生産性の向上、省力化対策も同様だ。
チェーンとして生き残るために、良質で安全な食材を使い、安くておいしい弁当をどう提供し続けるか、弁当チェーンの課題は続く。