これでいいのか辛口!チェーンストアにもの申す(3)すかいらーく

1998.03.02 147号 15面

●日本一の「すかいらーく」なら何でもできるか?

「すかいらーく」は売上高一四五億円、総店舗数一四六〇店舗を誇る日本最大規模の外食グループである。低価格業態の「ガスト」で外食市場に価格破壊をもたらすなど話題もこと欠かない。それに当然一部上場の優良会社でもある。すかいらーくは常に外食業界の花形として注目されている。しかしその華々しさやニュース性の陰に大変脆弱な点が隠されている。

すかいらーくの最大の弱点は高級店がうまくいかないことだ。ガストやバーミヤンのような低価格業態は得意なのだが、それより高級になるとうまく経営できないのである(それは大した高級店でもないが)。

高級店とは客単価の割合高い店のこと、すなわち夕食時に繁盛する夜型店のことだ。すかいらーくはレストランであるにもかかわらず夕食時に弱いのである。

●すかいらーくの悩みはうまくできない高級店経営

過去にカジュアルレストランの「イエスタディー」の展開がある。これはカジュアル感覚でカクテルも飲めるすてきな店だった。まるで西海岸のリゾートレストランの雰囲気で、週末ともなるとウエーティングの行列が店の外までつながったものである。しかしいまはない。「スカイラークガーデンズ」に変わってしまった。そのガーデンズもうまくいっていない。

フランス料理の「フロ」もそうだ。高級店が苦手なためフランスからノウハウを持ってきて六本木に開店したものである。だから開店した当時は予約の電話が鳴りっぱなしで行列もできた。が、いまとなっては閑古鳥が鳴いている。飲食店関係者のあいだでも評判は悪い。「お客さんを連れて行く、デートに使う、ごちそうを食べに行く店ではない」とさんざんである。

そして、和食の「藍屋」もしかりである。当初、客単価二〇〇〇円の和食店は驚異であった。初めて行ったとき“凄い”と感動したものである。しかしあれから一〇年、だれに見取られることもなく藍屋はひっそりと姿を消そうとしている。最近では、ほとんどが「夢庵」に転換している。

それ以外でも、店舗のほとんどに「For Rennt(貸店舗あり)」の看板が掛けられている。

●スカイラーク・ガーデンズの登場

高級店を苦手としている弱点は、すかいらーく自身が一番良く知っている。だから日本一の外食産業企業として何が何でも高級店を育てたいのである。それができなければ一人前の外食企業とは呼ばれないと考えているのである。

「外食なら何をさせても日本一!」と呼ばれたいのである。だからFFや持ち帰り弁当、デリカにも挑戦した。でも失敗した。

すかいらーくには日本一というメンツでもあるのか。やめた方がいいのに高級店に何度も挑戦してくる。そこで登場したのが「スカイラーク・ガーデンズ」。ガストという低価格業態はすでにつくり上げた。でも、安売りのすかいらーくといわれたくない。高級な店もやりたいのだ。

そこで客単価一一〇〇円のスカイラーク・グリルをつくり、客単価一二八〇円のスカイラーク・ガーデンズをつくり上げたのである。しかし、早くも大苦戦が始まっている。客単価一二八〇円ぐらいの高級店。なぜ、この程度の店がうまくゆかないのか?

●食べ放題・バイキングレストランで、一〇年続いた事例を見たことがない

スカイラーク・ガーデンズはカジュアルイタリアンを標榜していたはずなのに、1月25日の日曜日に厚木店へ行ったらいつの間にか食べ放題のバイキングレストランに変わっていた。

バイキングが悪いわけではない。お客も大勢入っていた。しかしバイキングレストランが長続きするのか。食べ散らかされた結果、店は荒れるだけである。しかもノーサービスで楽しくない。急いで争って、料理を詰め込むだけである。

それに、ガーデンズのバイキング料理には特徴や売り物がない。イタリア料理はスパゲティとピザがある程度で、ほかの料理は種々雑多。何でも食べ放題では、お客は何のお店なのか見当がつかない。

第一、平日のお客の入らないアイドルタイムはどうするのか? その時間も四〇種類の料理を出し続けるのか? 人のいないとき、わずかなお客にもおいしい料理が用意できるのか?

午後3~4時の回転ずしが良い例である。乾いたネタは食べる気がしないという前に、それは食べ物商売ではない。

●チェーンレストランの落日

すかいらーくは日本一の外食産業企業である。であるなら、業界がモデルとするような模範的な行動をとってもらいたい。バイキングが悪いのではない。しかし、自分の弱点は弱点として素直に認め、もう変な高級店開発は止めるべきだ。低価格の安っぽいFRという、自分の得意分野を伸ばすべきであり、またそれで良いのではないか。いまもそれで十分儲かっているのだから。「死ぬまでに一度デパートをやってみたい」というスーパーの経営者と同じ考えなんだろうが、その成金志向をやり続けることが企業の収益を食いつぶし、すかいらーくの落日を呼ぶのである。

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