ニューヨーク通信 外食ビジネスの新発想(53)ウーピーパイ
アメリカで流行の兆しが見えるウーピー・パイ。最近は、スターバックスにもお目見えし、高級スーパーマーケットやベーカリーでも手に入るようになった。パイといっても、パイではないし、ケーキでもなくクッキーでもない。マカロンに似ているが、まったく生地が違う。一対の丸いスポンジ生地の間にたっぷりのクリームが挟まれているサンドイッチ型のケーキだ。
ブルックリンのベーカリーカフェ、「ワン・ガール・クッキーズ」は、知る人ぞ知る、ウーピーパイで知られた店。ウーピーパイ目当てのお客が来る。しかし、このウーピーパイの人気の秘密は、いったい何なのだろう?(外海君子)
◆バリエーションの可能性と食べやすさで人気
今年、ウーピーパイを州のデザートにしようという法案がメーン州の州議会に提出されたことから、ペンシルベニア州のランカスター郡が異議を申し立て、ウーピーパイの真の発祥地がどこなのかという議論に火が付いた。メーン州にはウーピーパイ協会なるものが存在し、ウーピーパイ祭りも存在する。そして、ペンシルベニア州では、州内で開かれるファーマーズ・マーケットでは、どこでもウーピーパイが売られ、ペンシルベニア・ダッチが生みの親だと主張する。
発祥地はどこであれ、今年になってウーピーパイの人気に火が付き、ウーピーパイのクックブックまで出版された。この本の著者によると、ウーピーパイの特徴は2つ。まずは生地がソフトで丸い形であること、もう1つは中にクリームがたっぷり挟んであること。
同店のウーピーパイは、パンプキン・スパイスとチョコレートの2種類だ。特にパンプキン・スパイスが人気だという。
オーナーのドーンさんがウーピーパイを作り始めたきっかけは、ペンシルベニア州の知人のウエディングに行ったとき、ホテルのウェルカムバスケットにあったウーピーパイを食べたこと。感動してニューヨークに戻って作り始めたというウーピーパイは、あまりの人気に店の定番になったという。
ウーピーパイ人気の理由の1つは、食べやすいこと。カップケーキを食べるには、クリームとケーキ台の割合を考えながら食べなければならないし、クリームが指や口の周りに付いて厄介だけれど、ウーピーパイは中にクリームが挟んであるのでその心配はない。しかも、いろいろなバリエーション作りが可能だ。チョコレート・ケーキにミントのフィリング、レッドベルベット・ケーキにラスベリー・フィリング、ジンジャーブレッド・ケーキにシナモン・クリーム、レモン・ケーキにレモン・クリーム、バニラ・ケーキにレモン・クリームなどといろんな組み合わせができる。この手軽さとフレキシビリティーがアメリカ人にアピールするのだろう。
同店は、他にもカップケーキやマカロン、各種クッキーなどのお菓子を揃え、店頭にはイートインのスペースを作って、コーヒーを飲みながら休むこともできる。放課後は、子どもたちとその親でいっぱいになり、周辺地区の住民の寄り合いの場所としても重宝されている。
●人気メニュー
・「パンプキン・スパイス・ウーピー・パイ」(1$50¢)
・「チョコレート・ウーピー・パイ」(1$50¢)
・6種あるティークッキーの中の3種
「ルシア」(ショートブレッド、キャラメル、チョコレートのレイヤークッキー)
「ペネローペ」(ナツで飾り、アプリコットのプリザーブを挟んだバタークッキー)
「セイディ」(ココナツをまぶしたバタークッキー)
(4個で2$50¢)
●事業データ
ワン・ガール・クッキーズ(One Girl Cookies)/所在地=68 Dean Street Brooklyn NY 11201/開業日=2005年11月/営業時間=月~木午前8時~午後7時、金午前8時~午後8時、土午前9時~午後8時、日午前10時~午後7時/席数=20