ジャム特集
●19年生産量は4.8%減、5万t割り込む
新型コロナウイルス感染拡大防止対策による、人々の在宅時間の増加に伴い、朝食喫食率が増加していることを受け、ジャム・スプレッドの需要が拡大している。20年3月以降は、市場全体で前年比2桁増と高い伸長を示している。緊急事態宣言が14日、39県で解除されるなど外出自粛は緩やかに解消されているが、20年は引き続き在宅時間の増加による内食需要が高まることが予想され、ジャム・スプレッドの需要は、伸びていくものとみられる。
ただ、あるメーカー担当者が、「新型コロナウイルスの影響で、買いだめが発生したことで、一時的に伸長はしているが、長期スパンではそれほど大きな影響はない」と語るように市場は冷静な対応を示す。背景には、ジャム市場は長期的に見ると緩やかな減少傾向を示していることがある。実際、19年度のジャムの国内生産数量(日本ジャム工業組合調べ)は、4万9161tで前年の5万1603tから4.8%減少し大台の5万tを割り込んだ。アヲハタの調査でも19年の市場規模は、前年比3%減の401億円と減少している。日本の朝食欠食率の高さや糖質制限の動きなどがその要因だ。
さらに、急激な需要増による供給への不安を指摘する声や、原材料のフルーツがグローバル調達であり、新興国の経済発展による食生活の変化で、需要が増加していることに加え、新型コロナウイルス感染が世界的に拡大する中、調達を不安視する声も出始めている。
ジャムのパートナーである、食パンの需要は堅調に推移するものの今後大きな伸びは難しい。高級食パンブームも、パンそのものを楽しむ動きが強く、ジャムに追い風とはならなかった。新たなパンのパートナーとなったヨーグルトも、健康訴求商品が食品業界で相次いで発売されたことで、市場は停滞傾向で推移する中、昨年からジャム業界が熱い視線を送るのが、近年高い成長を示すチーズだ。ジャムと乳製品の相性の良さは知られ、メーカー各社は、ジャムとチーズの提案を継続強化するものとみられる。さらに、高齢層に支えられているジャム市場では、若年層の開拓が急務だ。新型コロナ禍でジャムの喫食機会が増加し、その良さに気付く若年層が増えることに期待がかかる。
日本ジャム工業組合は、4月20日の「ジャムの日」の認知度拡大を目的にしたイベントを新型コロナウイルス感染拡大防止対策の一貫として中止した。昨年は、「ジャムの日を広める会~ジャムに恋する3日間~」を長野県小諸市と東京・銀座NAGANOで開催。恒例イベントとして定着していただけに残念な結果となった。さらに、メーカー各社が「ジャムの日」に合わせ計画していた店頭プロモーションなども中止となった。(青柳英明)
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