11月12日。今日はパンの日
毎月12日はパンの日。1842年4月12日に、日本で初めて本格的なパンの製造が始まったことに由来する。
兵糧食として量産されはじめたパン
日本のパンの歴史はきわめて浅い。1543年に種子島に漂着したポルトガル人がパンを日本人に伝えたとされているが、その内容は定かではない。パンが明確に日本の歴史に登場するのは江戸末期の開国を迎えてからである。記録上日本人として初めてパンの試作を行ったとされているのが伊豆韮山代官江川太郎左右衛門であり、1842年に兵糧食としてのパンを製造している。
その後、明治時代に入り文明開化の時期を迎えると、日本人へのパンの普及が徐々に進み始めた。この契機となったのが、木村安兵衛による当時の日本人の 嗜好にあった酒種あんパンの開発である。その後、ジャムパンやクリームパン等の日本人の嗜好にあった菓子パンの開発と普及が進み、パンは日本人にもポピュラーな食べ物になった。しかし、食事用のパンの普及が外国人の居留地施設、ホテル、西洋料理店、あるいは軍隊の施設の域に留まっていたため、第二次世界大戦が終了するまでは日本におけるパンの消費量は低く、パンはあくまでも日本人の食生活の脇役であった。
日本のパンの消費量は、第二次世界大戦後の10年間に急激に増大した。これは、戦後の日本の食糧難に対する連合国軍最高司令部の支援によって、配給パン工場あるいは家庭委託パン工場がパンを消費者に提供したからである。そして 1962年から1982年にかけて食生活の欧米化が進み、パンの消費は再び急激に増大した。その後、飽食という言葉が使われるようになってからパンの消費拡大は停滞しているが、第二次大戦後のわずか40年の間に、パンは日本人の食生活において米に次ぐ主食として欠くことができない食品になっている。第二次世界大戦後の日本のパンは、当初米国の影響を強く受けたが、戦後の普及が進んでからは日本独自の菓子パン類の進化、あるいはフランス、ドイツ、デンマーク等の欧州のパン類の導入が進み、今日ではパンを大昔から主食として来た国々以上に多種多様なパン製品が市場を賑わすようになっている。
(日本食糧新聞社『食品産業事典 第九版』(引用箇所の著者:一般社団法人 日本パン技術研究所 井上好文 ))