冷凍食品市場は成長も利益で苦戦 物流費など上昇で

天候要因が例年に増して品目ごとの需要を左右した

天候要因が例年に増して品目ごとの需要を左右した

冷凍食品業界の2019年はさまざまな好・悪材料が入り混じり、全体として1.5%程度の市場成長は達成するとみられるが、利益面では引き続きやや苦戦といった年になりそうだ。最大の収益圧迫要因は物流費・保管料・人件費の上昇。また水産原料はじめコメや畜肉原料も高止まり傾向。資材・包材価格も上昇している。需要面はおおむね堅調を保って推移したが、各メーカーの直近業績を見ると、数社を除いて利益率は依然として伸び悩んでいる。

家庭用冷凍食品は弁当おかずが長期低迷

構造的なコスト増が長期的に重なるとみられる状況下、5G(第5世代移動通信規格)の活用などに期待は高いものの、労働節約型のイノベーションが一気に進むとは考えにくい。ならば未購入層の取り込みをさらに強化し、売上げ成長を加速させて利益確保を狙いたい。冷食市場の潜在成長力は大方の指摘の通り高い。今後、コスト抑制力とともに商品開発力がますます問われそうだ。

家庭用の2019年市場規模(末端売価ベース)は、前年比2%増程度と推測する。トレンドとして一昨年から、チャーハン・鶏唐揚げ・ギョウザ・ラーメンといった品目が安定して伸び続けている。

冷凍野菜も生鮮価格の不安定化で、着実に認知度を高めている。好調カテゴリーの伸び率は推定で米飯類6%増、鶏唐揚げ6%増、ギョウザ7%増、麺類5%増、冷凍野菜4%増など。

天候要因が例年に増して品目ごとの需要を左右した

今年の市場環境では、暖冬・冷夏・長雨・短期間の猛暑といった天候要因が、例年に増して品目ごとの需要を左右した。特に影響を受けたのは和風麺やスナック類。またメディアの影響も大きく、4月など定期的に放映されたTV特番が需要を後押しした。

そして台風・大雨による自然災害は、水・パン・即席麺などと同様に、家庭用冷食にも非常食としての需要をもたらし、日常食としての定着を印象づけた。

課題が一層浮き彫りとなったのが、前年比6~7%減とみられる弁当おかず市場の長期低迷。市場全体の約3割を占める最大カテゴリーだけにインパクトは大きい。食卓おかずの伸長とも相関して売場面積は縮小傾向。最大手ニチレイフーズを除き、各社とも有効な需要刺激策を打てないでいる。来春以降の各社戦略が注目される。

業務用冷凍食品、値上げ効果は限定的

業務用の2019年市場規模は、前年比1.5%の拡大と推測する。業態別ではスーパー・コンビニ・弁当向けがけん引役の中食惣菜が1%増、インバウンド需要が際立つ外食が1%増、介護食が依然として成長軌道にある給食は1%増とみる。物流費・人件費上昇と原料高から、3~4月にかけて各社一斉値上げとなったが、完全実施は大半が難航。商品入れ替えや実施時期の後ずれなどで効果は限定的に推移したもよう。

市場動向は上り下りの激しい展開となった。4~5月10連休は給食以外にプラスに働いたが、7月の冷夏・長雨や9~10月の台風・大雨は被災地に与えた影響のみならず、中・外食の客足が鈍るなど需要に影を落とした。

ラグビーW杯はインバウンド関連で、ホテルや行楽地需要にプラスとなった。消費増税導入の10月は外食支出の抑制を招いた。品目別で好調なのは畜肉加工品、麺類、卵加工品、エビ加工品、デザート類、お好み焼き・たこ焼きなどスナック類、冷凍野菜など。

値上げ後も利益回復は限定的な中、首都圏や関西圏の冷蔵倉庫の庫腹ひっ迫がさらなる圧迫要因となりつつある。遠隔地に入庫せざるを得ない場合、横もちの追加コストが発生する。厳しい状況が続く見通しだ。

※日本食糧新聞の2019年11月29日号の「冷凍食品特集」から一部抜粋しました。

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