パスタ・パスタソース特集
◆パスタ・パスタソース特集:パスタ・パスタソースともに需要高止まり
◇潜在需要の掘り起こしを
パスタ・パスタソースの市場規模は、拡大が続いている。2月末からの新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、外出自粛や外食の営業自粛の影響で巣ごもり需要として売上げを伸ばした。乾麺のパスタは賞味期限が約2年と保存性が高いこと、パスタソースをあえるだけで食せる簡便性などが売上げ増加の要因となっている。直近ではストック需要だけでなく、パスタメニューが日常的に食卓に並ぶ頻度が増えてきているため、引き続き高い水準で需要が推移しているようだ。今後は、あえる・かけるだけの簡便性だけでなく、一手間かける調理の楽しさを提案していくことで、パスタ・パスタソースの潜在需要の掘り起こしにつなげていきたい。(久保喜寛)
●パスタ 巣ごもり需要で大きく伸長 ロングパスタがけん引
パスタは、巣ごもり需要で大きく伸長している。日本パスタ協会によると、パスタの用途別生産量で家庭用の20年1~6月は、前年比16.7%増と2割近く増加している。2月末から始まったコロナウイルスの影響は家庭用のパスタカテゴリーを直撃し、店頭から商品がなくなった。メーカーは商品の安定供給に向けて、生産体制を整えていったものの、需要には追いつかない状況が続いた。
内容で見ると、ロングパスタが1~6月で同19.7%増、ショートパスタが同0.2%増と、ロングパスタがけん引役となっている。ロングパスタが伸びているのは使い慣れていることが要因のようだ。半面、ショートパスタはサラダやグラタンなどメニューとして主食になりにくいというイメージがいまだに根強いため、ロングパスタに比べて需要が伸びなかった。日本製粉(ニップン)が、昨秋から高品質パスタブランド「REGALO(レガーロ)」で主食に対応するショートパスタを展開し、堅調に推移しているものの、ショートパスタ全体としては、低調な市場環境が続いている。サラダやグラタン以外でショートパスタを使った新たな定番メニューの提案が今後の課題といえる。
需要に関しても、国産ブランドから売れていき、続けてメジャー輸入ブランド、無名ブランドと、非常時でも人気のアイテムを選ぶ傾向にあったようだ。商品不足の中でトルコ産などの大容量(1kg)タイプが隙間を狙ってSMなどで採用されていたものの、売れ残るケースもあっったという。5月中旬には商品が揃いはじめてきてはいるが、中には一部商品を休売して、定番アイテムに生産を集中しているメーカーもある。その他の加工食品ではコロナ禍によるストック需要が落ち着きはじめた6月に入ってもパスタは単月で同34.5%増と需要が高止まりしている状況だ。
「国産の家庭用パスタ商品を提供しているメーカーは8社とプレーヤーの少なさも需給が逼迫(ひっぱく)している要因」(メーカー関係者)といわれている。そのため、メーカー各社は、安定供給を最優先とした取組みを行っている。例年だと夏場の7~8月はパスタの需要が落ちてくるため、「秋冬の本格需要を迎える前に2~3ヵ月分の在庫を持っておきたい」(同)考えだが、6月までの状況を踏まえると、需要の増加がどこまで続くか見通しが立たないため、在庫を確保できるか不安なところだ。
一方、業務用は伸び悩んでいる。1~6月の前年比では0.3%減と、ほぼ前年並みで推移しているが、コロナウイルスの影響が出る1~2月の貯金があったためだ。3月以降は前年でマイナスが続いており、6月単月では同7.8%減と大きくマイナスとなっている。学校の休校やテレワークによる、学校・事業所給食の減少や、外食産業の営業自粛、CVSの中食の販売減が影響している。
外食産業などはテークアウトや宅配などの対応を行っているものの、本来の需要にはほど遠い状況のようだ。今後はテークアウトに対応した経時変化の少ないパスタの開発など、コロナ禍の新たな生活様式に向けた製品の開発などが求められているという。
●パスタソース アレンジ楽しむ オイル系が好調
パスタソース市場もパスタと同様に需要が高止まりしている。近年では、あえる・かけるの簡便性タイプがカテゴリーのけん引役として、伸びていたが新型コロナウイルスの感染拡大によるストック需要などで、パスタソース全体の需要が急激に伸びた。8月に入っても休売している商品があるなど、需給の逼迫した状況は続いている。パスタ同様にメーカーは安定供給に向けて取り組んでいる。
アイテムでは全体的に大きな伸長となっているのだが、インテージ調べによると、オイル系のソースが前年比で4割以上伸びている。オイル系がソース類の中でも汎用(はんよう)性が高いため、そのまま食べるだけでなく、アレンジして楽しまれているようだ。
パスタソースの需要が2月末に増加してから、ニーズも変化しているようだ。あえる・かけるの簡便タイプだけでなく、2~3人前のアレンジができるパスタソースも売れているようで、在宅勤務など内食化が進む中で、調理機会も増加しているためと分析している。そのため、パスタメニューは、昼食で食卓に並ぶシーンが多かったが、野菜や肉を具材を使って夕食でのパスタメニューの登場頻度が上がっているという。
コロナ禍による喫食機会、調理機会の増加を本格需要とするため、パスタソースのアレンジ性の高さを訴えていきたいところだが、販促活動において小売店の店頭での活動に制限があるため、SNSなどを活用した取組みが主流となってくるかもしれない。
あえる・かけるタイプについては、定番中心の供給となっているため、早期に既存の全アイテムを供給できるようにして、商品ラインアップを充実させていきたい考えだ。簡便タイプは、店頭で選ぶ楽しみもあるため、消費者を飽きさせないためにも、商品供給の正常化を目指す。
また、コロナ禍の影響で収入の減少などで、低価格商品への需要が伸長しているようで、メーカーもパスタソースカテゴリーの価値を下げない低価格商品の展開を検討しているという。