ピスタチオグリーンにみる「色」からのトレンド訴求

ピスタチオがスイーツを中心に2021年のトレンド食品の上位に挙がっている。無印良品の「ピスタチオとバニラのクッキー」や、DEAN & DELUCA の「ピスタチオクリーム」など女性が好むショップで発売され、主要コンビニエンスストア3社においても、アイスやプリンなどでピスタチオ関連製品を多く発売している。昨夏にはピスタチオスイーツの専門店「PISTA&TOKYO」も開店している。ピスタチオは2019年ごろから人気上昇している食材なのだが、なぜ今、ピスタチオなのか。一過性のブームに終わらず、今後も人気は継続していくのだろうか。

ピスタチオの栄養素はコロナ禍のサポーター

ピスタチオは「ナッツの女王」とも称され、豊富な栄養素をもつ種子である。コロナ禍の2年間でピスタチオの人気が急激に上昇したのには、それらの栄養素がコロナ禍の消費者の不安を軽減する要素となったことも要因と考えられる。

例えば、不溶性食物繊維が100g中に9.2g(※)と、他のナッツ類に比べて多く含まれている。この不溶性食物繊維は水に溶けにくいため、腸を刺激し腸内環境を整え、便通をよくするとされている。巣ごもりになり運動不足で便秘になったという声は多い中で、この効果はうれしい。

「シェ・シバタ オペラピスターシュ」(名糖産業)

また、ピスタチオは抗酸化作用があるβ-カロテンやルテインを多く含む。アンチエイジングとともに、免疫力を高めて多くのウイルスや菌から守ってくれることが期待された。さらに、体内の余分な塩分を排出する働きがあるカリウムも、ピスタチオ100g中に970㎎(※)と含むため、むくみの解消や血圧を下げる効果が期待できる。

ピスタチオに限らずナッツ類は5大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミン)を豊富に含むのだが、それに加えて、このようにコロナ禍の不安を解決する要素がピスタチオには多く、需要を後押ししたと考えられる。

(※)ピスタチオ可食部100gから計算。文部科学省 食品成分データベース基準

人気の背景に利用価値と利便性の向上

さらに用途の充実も人気になった理由だと筆者は考える。2021年のトレンド食品にまでなったのには、さまざまなスイーツに素材として使われたことが大きいのだが、ピスタチオは甘いものとしてだけの利用価値が高いわけではない。酒のつまみとして、また、おやつや小腹がすいた時などにも、そのまま手を全く加えることなく可食できる。この点が、巣ごもりや家飲み需要にもフィットした。

「カレ・ド・ショコラ〈ピスタチオ〉」(森永製菓)

もともとナッツ類にはグルタミン酸などうまみ成分が豊富であるから、そのままでもおいしいと思えて当然なのだ。さらに、常温保存が可能であることも利便性が高かった。そして何よりも、ピスタチオグリーンともいえるインスタ映えする鮮やかな色が、マンネリ化しやすい家庭の食卓に彩を添えてくれた。

サラダにトッピングしたり、肉料理の仕上げに刻んで振りかけても華やかになる。食感も変化するので、食べても楽しく飽きさせない。こうした利用価値、利用頻度が高いことが、ブームを継続させたと考えている。

安心感をもたらすグリーン訴求

さらにいま「ピスタチオグリーン」と呼ばれる色からの訴求もピスタチオが人気の背景に大きく関与していると考える。そもそもグリーンは、「平和」「平穏」のイメージを持つ色だとされ、肯定的な意味合いを示す。将来への不安が大きい昨今において、ひとときの安心感をもたらす色なのである。

「ピスタチオアイスバー」(クラシエフーズ)

今までも緑色のスイーツブームがあった。ミントグリーンが大人気になった時代、抹茶の濃い緑が人気になった時代。その時代ごとに緑色スイーツが多々発売されていった。そして今もミントと抹茶は定番の人気を維持している。ピスタチオがブームの前から一定の消費者に人気があったことから考えて、今後もピスタチオを使った商品は、一定量の支持を得ていくだろう。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)