グレープシードオイルはワイン醸造の副産物 サステナブルな廃物利用が欧州で注目

私たちの食卓にかかせない植物油はいろんな種類があるが、その中でも最近欧州で注目されているのがグレープシードオイルだ。ヨーロッパブドウの種子を100%使用して搾られていて、健康志向の人にも好適なピュアなオイルとして評判だ。しかもグレープシードオイルは、もともと、ワインを搾った後に大量に残るブドウ残しの種子を原料としていて、エコロジーな廃物利用である。サステナブルな取組みとしても注目のオイルについて紹介しよう。

ワイン醸造後の搾りかすを再利用

イタリア、フランスをはじめとする欧州諸国では、歴史的にブドウからワインを醸造してきた。2020年のイタリアのワインの製造量は世界一、49.1百万ヘクトリットルもの量を記録している。

赤ワインの製造方法は、ブドウの果汁を搾り発酵させた後、果皮と種子を取り除き、樽に詰めて熟成する。白ワインは果皮や種子を取り除いた果汁を発酵するので色がつかないという製法の違いがあるが、どちらにしてもワインの醸造後、大量の皮と茎、種子が搾りかすとして残るのである。

ワインの醸造後には大量の皮と茎、種子が搾りかすとして残る

ほとんどのワイン醸造家たちにとって、これらの残留物は廃棄物であり、処分するためのコストまで負担する必要がある。そのため、この廃棄物を新たな原材料として再利用する試行錯誤の中で生まれたのが、グレープシードオイルである。

料理だけではないグレープシードオイルの使用法

ワイン醸造後の廃棄物だったブドウの種子は、低温抽出(コールドプレス)、または溶媒を使用しての高温抽出プロセスを経て、グレープシードオイルとして新しく生まれ変わる。

グレープシードオイルは無味無臭で味も香りもないため、いろんな料理に合わせやすいうえに、発煙点(油脂を加熱していく時に煙が発生する温度)が約200〜230度Cと高く加熱調理に適している。

また、他の植物油と比較してグレープシードオイルは、ポリフェノールなどの抗酸化化合物が豊富なところが大きな特徴である。ビタミンEもオリーブオイルの約4倍もの量が含まれている。この高い抗酸化作用は、料理利用だけでなく、天然防腐剤としての食品業界、スキンケアやボディケアなどの美容業界、さらに医療分野でも注目されている。

加熱調理に適しているグレープシードオイル

参考サイト:
La produzione di vino nel mondo nel 2020 – aggiornamento OIV |  I NUMERI DI VINO

廃棄物だったブドウ種子の大きな可能性

イタリア半島中部マルケ州の農学校の研究によると、「D.O.C.G.」(イタリアワインの格付け等級の1つ。4段階ある格付けのうち、最上位の等級)のワインを作るブドウ畑では、ヘクタール単位でブドウの皮が660kg、ブドウの茎が110kg、ブドウ種子が250kg、乾燥した状態で産出される。そして、このブドウの種子から約25kgのグレープシードオイルを製造できる。2020年のイタリアのワイン畑の面積は約67万1000haである。

ワイン畑に新たなビジネスモデルが

ワイン醸造の廃棄物であるブドウの種子の副産物は、実はグレープシードだけではない。オイルを抽出するだけでなく、種子の皮から食物繊維が豊富なグレープシードフラワー(粉)も生み出している。また肥料や動物用の飼料など、さまざまな分野での再利用が研究開発されている。

グレープシードオイルは従来の製造過程を効率的に見直し、廃棄物に関する研究を深めることにより、これまでの処理のための支出が新たな収入源へと変化させたビジネスモデルである。これからの可能性に注目が集まっている。(フードライター 鈴木奈保子)