寿司が人気だったイタリアで、若者を中心にハワイ発祥のポケ丼に人気が高まっている。寿司よりも野菜が豊富でヘルシー、具材も魚に限らずバラエティーにあふれていると評判に。コロナ禍でテークアウト需要が増えたため、寿司よりも持ち運びが簡単で食べやすいところも大きなポイント。苦境に立たされている飲食店が多い中、オシャレなスタイルの専門店が続々オープンし、新しいファストフードとして定着しつつある。

おしゃれなポケ丼専門店が続々オープン

コロナ禍で何度もロックダウンが繰り返されるイタリア。最近では、店内飲食にワクチンパスポートの適用が義務付けられ、苦境に立たされている飲食店は少なくない。そんな中、続々とオープンしているのがポケ丼のレストランである。

「ポケ・ボウル」と呼ばれるポケ丼の店は、若者をターゲットとしたポップでカラフルな内装が特徴。一見すると、スイーツやジェラート店のようだ。

ポケ丼はご飯や具材の魚などのタンパク質、野菜類、ソースの種類をそれぞれ選んでもらい、ボウルの中に入れていくので、レストランというよりもジェラート店に近い手軽なスタイル。

イタリア中にフランチャイジング展開しているいくつかの有名店は、スタイリッシュなロゴを使い、ファストフードのようなイートイン形式のコンパクトな店舗も見かける。

野菜がたっぷり食べられる

ポケ丼人気の秘訣は材料にもある。きわめて寿司に似ているが、よりバリエーション豊富な点が大きな魅力。

まずご飯にしても、普通の白米だけではなく玄米やキヌア、黒米などよりヘルシーなものも選べる。糖質制限中であれば、炭水化物を入れずにサラダでいい。また、タンパク質も魚だけにこだわらず鶏肉や牛肉、ベジタリアンのために豆腐まで用意されている。個人の食事情に合わせて選択できるので、誰でも食べられる。

さらに、寿司には足りない野菜が豊富に食べられる利点はとても大きい。手軽で簡単なのに、野菜も食べられ栄養バランスがとれる安心感は大きい。

好みに応じてナッツやソースなどトッピングを施した料理は、カラフルでインスタ映えもする。そのうえ、ファストフードのような手ごろでわかりやすい料金設定と、若者に人気な要素を兼ね備えている。

テークアウトにも最適なワンプレート

昨年のイタリア飲食業界のトレンドである宅配やテークアウトも、ポケ丼ブームの大きな要因である。ポケ丼専門店はほぼ大手の宅配業者と提携しているので、気軽にオンライン注文が可能。

コンパクトな大きさの蓋付きボウルの中にきちんと詰め合わせるので、配達にも適した形態だ。

フォークやスプーンを使うポケ丼は、テーブルを使わず簡単に食べられるのも大きな利点。宅配を頼んでソファーに座ったままでも、テークアウトして公園のベンチででも食べられる。しかも、こんなに簡単で手軽なのにヘルシーとあれば、人気が出るのは当然だ。

コロナ禍で食生活を見直す人が増える一方で、自炊するよりも手軽に食べたい願望を満たすことができるという意味でも、ますますポケの需要は高まると考えられる。今後の展開が楽しみである。（フードライター　鈴木奈保子）