海藻はイタリアで注目の「未来食」 和食ブームで人気に

日本人にとってなじみ深い伝統的な食材の海藻。今イタリアでは、気候変動や第三世界の人口増加などによる今後の食糧問題を解決するための「未来食」の1つとして、海藻が注目されている。栄養素が豊富で、保存が容易、そして栽培が比較的容易であるのが大きな理由だ。

低カロリーでタンパク質が豊富なヘルシー食材

イタリア半島は日本と同様に周囲をぐるりと海に囲まれているが、海藻は有名な地中海式ダイエットにもまったく取り入れられてこなかった。海藻という言葉からイメージされるものは、食材というよりは海岸に漂ってくる「ゴミ」という印象の方が強かったほどである。

ところが近年、イタリア人の和食ブームで、寿司とともに海藻も食生活におなじみになってきた。特に、海藻の持つ豊富な栄養素が高く評価されている。なによりも、カロリーは低く、タンパク質やビタミン類、カルシウムなどをはじめとするミネラル分も豊富に含まれている。植物由来の食材に不足するビタミンB12が含まれているという点も大きなポイントだ。

海藻は、ダイエット中の人でもベジタリアンでも安心して食べることができる、健康的な食材なのである。

スーパーの惣菜コーナーにある海藻サラダ

イタリア風のスープやサラダにも

海藻の一番人気のある食べ方は、おそらく海藻サラダであろう。新鮮な海藻は、魚屋で魚と一緒に並んでいるのを見かける。また、スーパーの惣菜コーナーでも、寿司の横に置かれている。

乾物の海藻は賞味期間が長く重量が軽いので、輸出に適した食材である。最近では、イタリアの一般的なスーパーでは寿司で人気の海苔は必ず置いてある。アジア食材マーケットでなくてもオーガニックスーパーへ行けば、乾物のワカメや昆布、ヒジキ、アラメなど豊富な種類の海藻を手に入れることができる。

イタリア人にとって、乾物の海藻は日本食の味噌汁が一番有名だが、水で戻してサラダにしたり、ミネストローネに入れたり、イタリア風の食べ方も紹介されている。当初、見た目の黒い色に抵抗を感じる人も多かったが、実際口にすると、海の香りがしてほんのり甘い淡白な味わいなので、イタリア風の調味に合うことも強みである。

イタリアで紹介された昆布と豆腐のスープの作り方

世界の食料問題を救うキーにも

海藻はアジアから輸入・販売するだけでなく、新しいビジネスとしても各分野で注目されている。

2008年にはローマに本拠地を置く国連食糧農業機関(FAO)が、スピルリナを推奨するプロジェクトを開始したり、欧州連合(EU)では2012年から3年間、海藻の高収穫量を可能にするための国際プロジェクトが行われた。それらの研究成果をもとに、各国で最新技術を駆使した栽培技術の開発が進められている。

オーガニック専門店にあるヒジキと昆布。写真中央は大西洋でとれるdulseという海藻

また、イタリアには海藻専門のネットショップもあり、食材だけでなくサプリメント、はたまた化粧品まで、海藻の有効性にスポットを当てた商品も開発されている。

海藻は日本では当たり前の食材であるが、今後の食料・栄養問題を解決するキーとして、イタリアだけでなく欧州でますます市場の拡大が期待されている。(フードライター 鈴木奈保子)

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