出前の習慣がないイタリアもコロナ禍で一変 日本料理デリバリーも人気
食に関して保守的だったイタリアでは、新型コロナウイルスの影響で新しいフードトレンドが起きている。週に一度は、親戚や家族と大勢で食事する習慣のある人が多いが、ほぼタリア全土で感染拡大を避けるために飲食店での午後6時以降の店内営業が禁止されている。1年前のロックダウンでは家庭で手作りピザを楽しんだイタリア人も、その後、デリバリーディナーを楽しむことに方針変更したようだ。10人に7人が、デリバリーかテークアウトの予約を利用したともいわれる。新トレンドの状況を人気のメニューとともに紹介する。
午後6時以降の店内飲食が禁止
欧州で最初に新型コロナウイルスの被害が拡大したイタリア。あれから1年以上たった今も、感染を防止するために感染者数の状況に応じてさまざまな法令が施行されており、多くの事業者が営業形態を変更させられている。
レストランやバル(コーヒーショップ)などの飲食店は、昨年12月から午後6時以降の店内飲食が禁止され、テークアウトのみの営業である。クリスマス、年末年始、バレンタインには、昼間の営業も禁止された。
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そんな中、2020年のオンラインによるデリバリーフードの利用は、前年比180%増という調査結果がある。欧州の平均140%増に比べても高く、ピーク時には1312%増まで数字が伸びたというから、まさにデリバリーがイタリアにおける食の新トレンドという様相である。
日本と違って、出前という習慣がもともとなかったイタリア。数年前までデリバリーといえば1990年代あたりに始まったピザか中華料理くらいしかなかったことを思うと、大きな変化が起きたのだ。
出典元:
IN ITALIA CRESCE DEL 180% L’INTERESSE PER IL CIBO A DOMICILIO
人気のデリバリーメニューは
イタリア人は何をデリバリーで注文しているのか、調査結果をもとに紹介しよう。
料理の種類別でいうと、第1位はイタリアのデリバリーの伝統どおりピザ。そしてハンバーガーが続く。興味深いことに、第3位には日本料理であった。そのあとに続くのが中華料理にチキンである。
メニュー別にみると、1位はピザ。そしてポテトフライ、春巻き、スップリ(イタリア風ライスコロッケ)、オリーベアスコラーネ(オリーブの肉詰めフライ)と揚げ物料理が上位を占める。日本食はサーモンの握り寿司が9位に登場。ここでも、寿司や日本食の人気がわかる。
このほか、昨年急上昇した人気メニューのトップはポケ(ポキ)。白いご飯の上にサーモンやマグロなどの刺身とアボカドなどをのせて食べるハワイ料理だが、日本の丼ものに似ていることも注目に値する。
興味深いことに、ピザとピッツェリアで提供される前菜メニュー以外、パスタ料理などの伝統的なイタリア料理はランキングされていない。このことは、イタリア人にとってまだフードデリバリーがファストフード的な位置づけになっていることを表しているようだ。フィンガーフードのような手軽なメニューが多く並んでいる。
一方で、ミシュランの星付きのような高級イタリアンレストランも、デリバリーでの営業に多く参入している。今後、どのような伸びを見せるか注目である。
出典元:
Cibo a domicilio: le specialità più ordinate in Italia nel 2020
イタリアでのデリバリー予約方法は
日本でも有名なウーバーイーツが、ミラノに進出したのが2015年。続いて、ロンドンを本社にするJUST EATS、DELIVEROO、NY本社のGROVOなども参入し、現在では、こうしたデリバリー会社の配達員が自転車をこぐ姿を見かけない日はないといっても過言ではない。イタリアでは特に黒人系の移民の配達員が多い。
昨年にイタリア人の28%がJUST EATS、GROVO、そしてDELIVEROOを利用したという調査結果がある。さらに今後に関して、レストランやバル独自の予約システムを使うと答えた人19%に対し、デリバリー専門会社のサイトやアプリを使うという回答が36%であった。
参照元:
Il food delivery vince la sfida del lockdown e cresce nel 2020
家庭のポストに配られたピッツェリアのチラシを見て、直接電話で注文するこれまでの方法は変わりつつある。イタリアでは電話がつながるまで長い時間待たされ、届くまでも待たされ・・・と忍耐力を要するものだったので、大手による便利なシステムを利用するのは当然の選択である。最近では、こうしたチラシにもデリバリー会社のマークが入っていることが多い。
今後、レストランやバルが再開されても、もう1つの外食スタイルとして定着していくであろうフードデリバリー。コロナ不況を乗り越える方法として、飲食店の今後の展開が注目される。(フードライター 鈴木奈保子)