「肉と米」でハンバーグ第4次ブーム到来 進化系から見える日本人に合うハンバーグとは

「ハンバーグ」が熱い。ハンバーガーはブームが来て以来、今も人気だが、今回取り上げるのはハンバーグである。ひき肉で作るハンバーグは、家庭の定番料理になり、今では国民食のひとつといえるだろう。洋食として日本に入ってきたメニューだが、国内で独自にアレンジされ、さらに今、東京中心に進化系が増えて第4次ブーム到来ともいわれている。

進化系にみる新たなエンターテイメント性

2020年にハンバーグ専門店として開業した「挽肉と米」は、ブームのきっかけになった店のひとつだろう。店名にあるように、店のウリはハンバーグとともに釜で炊く白飯である。オープンキッチンをカウンターで囲む店内では、客の目の前でハンバーグが炭火で焼かれ、香ばしい匂いを奏でるとともに、釜で炊きあがるブランドの白米は、見た目も茶系のハンバーグと対比されてそそられるコントラストだ。どんぶりご飯の上に焼きたてのハンバーグをのせて、白米にしみ込む肉汁とともに食べ進めるのがこの店の食べ方スタイル。最後の卵かけご飯も人気となっている。

釜元はん米衛の熟成和牛レアハンバーグ定食

2022年に開業した「釜元はん米衛」も釜炊きご飯を提供する点は同様だ。この店は、客が自ら焼くスタイル。一人用の溶岩プレートには、ハンバーグとカマンベールチーズがのっていて、シズル感が凄まじい。ハンバーグの上にとろけたカマンベールチーズをのせ、それをさらにご飯の上にのせて食べる客が多い。

しらすおろしや筋子の醤油漬けなど多種類の小鉢の惣菜が選択できることで、客が自ら「ハンバーグ定食」としてカスタマイズすることで飽きさせないメニュー構成となっている。惣菜メニューに牛タンシチューなどの料理もあるが、全体として白ご飯に合うメニューに統一されている。

進化系ハンバーグの共通項は

「東京バーグ屋」も客が自らハンバーグを焼くスタイル。こちらの店は客1人につき七輪1台を提供し、ミディアム程度に火入れしたハンバーグを七輪に乗せ、仕上げを客が自ら行う。数種類の調味料が用意されており、一つのハンバーグをさまざまな味付けで食べることが可能だ。

東京バーグ屋の東京バーグめし

「挽肉屋神徳」では、毎朝「挽きたての肉」を炭火焼きにして提供する。この店のハンバーグ定食では、牛や豚だけではなく、羊肉や鮪や鯛などの魚のハンバーグも含めた6種類から客が好みの挽肉を2種類(1人前)、3種類(1.5人前)を選択する。小ぶりのハンバーグが一度に多種類食べられる楽しみ方だ。ご飯と赤だし、小鉢がついているので和定食の様相となっている。

都内に開業した「ハンバーグとはんばーぐ」は、8種類用意されているオリジナルソースを2種選び、それぞれの味でハンバーグを食する。プレートに仕切りがあり、分けて盛り付けられるようになっているためソースが混ざり合うこともない。とろろわさびや明太クリーム、メイプルなど個性的なソースはたっぷりの量があり、ハンバーグとは別にご飯にかけて食べても楽しめる。

現代の進化系ハンバーグは、“肉と米”という2代看板をもち、「ご飯に合うハンバーグ」が共通テーマになっている。また、ハンバーグの量を選び、トッピングや調味料で遊ばせるのも特徴だ。肉と米のツートップの素材には、産地やブランドなどこだわりをもたせて付加価値を作っている。

さらに調理工程を客の目の前で見せ新たな食べ方を推奨するほか、映えるさまざまなソースもエンターテイメント性が高い。

日本人が作る日本人に合わせたハンバーグ

進化系ハンバーグとは何かを端的に説明するとなると、「日本人が好きなハンバーグ」「日本人が家庭内でどのように食べているか」を徹底的に追求したものだと筆者は考える。ご飯の上にのせてかき込むという外食ではこれまで「品が無い」と思われやすい食べ方だったが、実はおいしく、「家ではご飯の上にのせて食べている」人も少なくないという潜在的なニーズを、あえて店側が推奨させてエンターテイメントに引き上げている。

挽肉屋神徳のハンバーグ定食

また次のポイントとして、注文をして食べるというシンプルな工程だけではなく、客に「考えさせる」「魅せる」「五感を使わせる」など店舗を“会場”にし、客を巻き込む舞台演出をしている。この演出は、「ハンバーグ」と「コメ」という国民が誰しも周知している強い商材だからこそできうる。そして、家でも食べ慣れた料理ではあるが、家では真似しにくい炭火や溶岩プレートなどを使う。この対比が現代人の「少し冒険したい」求め方にマッチした。

近年では日本のハンバーグは、ハンバーグの元祖の国といわれるドイツなどの外国人旅行者にも人気だ。食の世界はまだまだ飽和状態ではないと再認識させるハンバーグブームである。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)