おにぎりブームは海外へも 国内外のコメ消費拡大にどうつなげる
前回、消費者視点から見た「おにぎり」ブームの背景を書いたが、おにぎりは外国人にも人気が高い。外国人訪日観光客には、コンビニエンスストアの商品で食事を済ますケースも少なくない中で、安価で腹持ちが良いおにぎりは人気が高いと聞く。海外ではおにぎりは「ONIGIRI」として急速に人気上昇しており、販路も広がっている。日本同様に、コロナ禍で一層需要が高まったとされる。海外でも専門店が登場し、おにぎりの料理教室も人気が高い。
※前回のコラム
おにぎりブームに見る、スマホ時代の消費者の需要変化 専門店が提供する新しさと安心感 – 日本食糧新聞電子版
ヘルシーなイメージのONIGIRIが需要拡大
例えば、香港の専門店「華御結」は過去約10年の間に、店舗数を約120店舗まで増やしている。欧州では日本の大手専門店の出店ラッシュが続いており、売上好調という。フランスのパリ市内のスーパーではおにぎりのコーナーができるほどの浸透ぶりだ。
おにぎりは、動物性食材を入れずとも作ることが可能で、ベジタリアンやヴィーガン、ムスリムにも対応できるのが強みだろう。調味料も塩のみで製造できる。筆者は、世の中の基本的な調味料の中で、最も宗教に関係なく使用が可能で、土地柄に適して採取が可能な調味料は塩だと考えている。その点からも、多種多様な宗教や価値観がある国では、日本よりもさらに利用価値が認められやすい。
さらに、コメという原料に対する野菜感覚も含めたヘルシーなイメージもあり、おにぎりの需要は今後もさらに増えるのではないかと考える。
価格が安定するコメに注目
国内の専門店出店急増には、小麦の価格高騰も一因にあるだろう。食品全体の価格高騰の中でコメの価格は比較的安定している。消費者需要の広がりを味方にして、おにぎりは低コストで出店でき、アレンジがしやすい商材といえる。
2021年の米飯類の販売市場は4兆4429億円と前年比より104.8%と増加傾向にある(一般社団法人日本惣菜協会『2022年版惣菜白書』より※米飯類=弁当、おにぎり、寿司など)。
一方で、農林水産省の調査では、国民1人あたりの年間のコメの消費量は、1962(昭和37)年度の118.3kgピークを境として一貫して減少傾向にあるとしており、2020(令和2)年度は50.8kgとピーク時の約半分以下となっている。また、総務省の家計調査では、2人以上の世帯がコメにかけた支出金額は、2020年から2022年までの直近の3年間においても23213円~19825円と毎年減少している。これは、20年前になる2002年と比べて5割近くの減少となっている。
また、水稲収穫農家の数は、1970年の約466万戸を境に減少し続け、2020年には約70万戸と50年間で約7割まで減少している。さらに、円安やロシア・ウクライナの情勢による輸入原料の価格が上昇していることで、コメの生産に必要な肥料などの価格が大きく上昇していて、農家の経営はますます厳しい環境になっているという。
万国共通の動きに対応し得る商材
しかし消費者の米飯の消費は、外食・中食に関してはゆるやかだが伸びつつあるとされる。こだわりの感じられるおにぎりは、健康志向、宗教問題、地域性、環境保全などさまざまな世界万国共通の世の動きに対応し得る商材である。おにぎりの市場拡大が、今後の国内コメ消費につながるのだろうか。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)