本場韓国の雰囲気が味わえる横丁スタイル「ポチャ」の人気上昇 定着の鍵は焼肉店との差別化

韓国旅行好きなら知っている人も多い「ポチャ」。国内でも2022年あたりから徐々に人気を高めている。「ポチャ」とは屋外の屋台形態の飲み屋のことで、「ポチャンマチャ(布帳張馬車)」を略した言葉。オリジナルは、その名の通りテントのようにテーブルの場所がビニールシートで囲まれた空間だ。今は、室内食堂スタイルの「室内韓国ポチャ」や、逆にビニールシートも張らず屋外にそのままテーブルとイスが並ぶ簡易的なポチャもある。ドラマやK-POP、コスメなどの安定的な人気もあり、東京・新大久保の韓国通りも再び活気を取り戻している「韓流」。日韓関係に進展がみられるともされる昨今、“素材”としての「ポチャ」は、日本にも根づくのだろうか。

韓国に来たようなしつらえ

2021年に誕生した「新大久保韓国横丁」の一角など、東京を中心に新業態や既存業態として日本にもポチャが増えつつある。もともと日本にも江戸時代から屋台文化や横丁文化は存在しているので、ポチャの形態には違和感はないだろう。しかし韓国の店とは多少の違いがみられる。

「新大久保韓国横丁」の店頭。周りは韓国の歓楽街のイメージ一色

日本では、室内のレストラン業態がメーンで、室内に足を踏み入れると韓国に来たようなしつらえによって、エンターテイメント性を作っている店が目立つ。新大久保にある「新宿ポチャ」は、韓国屋台に多いステンレスの丸テーブルにドラム缶椅子といった本国をほうふつとさせる内装で若者に人気の店だ。

渋谷の「人生ポチャ」は、簡易な丸テーブルに丸椅子のスタイル、四角テーブルで背もたれのある椅子、靴を脱ぐ小あがりの座敷など、客のニーズによって使い分けができる業態になっている。清潔感もあり、ポチャに馴染みのない客にとっても入りやすい「韓国惣菜料理店」といえそうだ。

日韓「ポチャ」の特徴と違いは

営業時間や客の利用動機、メニュー構成も日韓では異なる。韓国ポチャは夕方から夜にかけての営業時間が主流で、使い方も2次会、3次会のシメの一杯を楽しむ店が多い。一方、日本ではランチ営業も行う店が多く、定食や焼肉を出す店もある。まだ日本では、コロナを経て、何軒もはしごをする飲み方が減少したこともあり、1軒目の店の価値が高い。

そのためメニューは、日本人に馴染のあるキンパ、トッポギ、ヤンニョムチキン、スンドゥブ、プルコギなどが定番で、小皿の惣菜を多種類置く韓国の店とは異なる。また韓国料理は、日本人にとっては「外国の料理」なので、ふらっと立ち寄る店ではなく、ポチャはわざわざ行く店だ。そのため1次会に利用する場合が多いと想定されるので、お腹にたまるメーンの料理は必要となり、レストラン業態であることが求められる。

「新大久保韓国横丁」での週末の夜の様子。20代、30代の女性2人連れでにぎわっている

本場では一切辛味成分の入らないキムチの種類も豊富で、ご飯のお供になる副菜料理が多々ある中で、ようやく日本での韓国料理もバリエーションが増えつつあるが、まだまだ「肉」「キムチ」「コチュジャン味」が強い。今後も、メニューの種類を増やして内観と内装を本場に近づけ、いかに既存の「焼肉店」と差別化するかが、日本のポチャ業態の定着には必要と思われる。

日本におけるポチャの強みと課題

立ち食い(立ち飲み)業態では面識のない客同士が密着することもあるが、ポチャはプライベート空間を保ちつつ、比較的リーズナブルな価格で異国の雰囲気を味わえる楽しさがある。これは、コロナ禍で旅行もままならなかった昨今のニーズに合うと考えられる。

日本人の知らない韓国料理はまだまだ多数ある

既知の関係性の中で、少人数で気軽に楽しめて、かつエンタメ要素もある点は、ポチャの強み。また日本人の知らない韓国料理はまだまだ多数あるため、メニューに飽きさせない工夫もしやすい。定番料理から新たな料理、新たなドリンク、新たなスイーツをどのタイミングで提供していくのか、味のバリエーションやバランス構成も定着の鍵だろう。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)