ドーナツとカヌレの人気再燃 長く愛されるスイーツの共通点に「軽さのバランス」
ドーナツ、カヌレなど、以前ブームを起こしたなじみのスイーツが再び注目を浴びている。そして、その人気が長く続く傾向にある。「ドーナツ2022年」「カヌレ2022年」で検索するとドーナツが2800万件、カヌレで455万件であった。インスタにアップしている人も多い。「かつてのトレンドスイーツが再燃」するのはなぜか。そして、再燃した懐かしのスイーツに持続力があるのはどうしてなのか。
ドーナツ第3次ブームの特徴は
ドーナツは、第3次ブーム到来ともいわれている。最初は米国に本社を置くダンキンドーナツが東京の銀座に上陸した1970年以降だろう。ドーナツは手作りするのが定番だった当時、米国のスイーツの甘さをほうふつとさせる色とりどりのドーナツチェーン店が新鮮に映った。
第2次ブームは、やはり米国からクリスピークリームドーナツが上陸したときだ。ふわふわな食感と、丸ごと1個のおまけ付きの特典は話題性もあった。紆余(うよ)曲折をしながらも2022年で16年目を迎える。
さまざまな色合いや形状、食感などのバリエーションを増やして、日本でも独自にドーナツは進化していった。現在は個性的なドーナツや、フレーバーのバリエーション、そしてトッピングの楽しさなど「映える」ドーナツが増えている。生地がブリオッシュの生地であったり米粉を使ったり、揚げずに蒸したり、フワフワからしっとり、半生までさまざまな食感があり、中にフルーツやナッツ、和素材などを入れるなど、味わいと調理法に特徴があるのが今のはやりだ。
カヌレはバリエーションが多彩に
フランス伝統菓子カヌレの日本での第1次ブームは1990年代後半、当時一世を風靡(ふうび)したピエール・エルメが発売してからだ。洋菓子店やベーカリーなどでもカヌレが売られて認知が広がった。
その際のブームはやがて静まったのだが、2012年以降に芦屋の洋菓子の名店「ダニエル」や、大阪のカヌレ専門店「カヌレ堂 カヌレ ドゥ ジャポン 桜川店」などによって再び注目されるようになった。今度は静かに、じわじわ人気が高まったといえよう。関西から端を発しているのも注目したい。
現在、第2次ブームともいわれるが、第1次ブームとどのように違うのだろうか。1つは商品のバリエーションだろう。くぼみの形状をいかして、カヌレのトップにフルーツやホイップクリームなどのトッピングをしたり、生地に抹茶やフルーツなどさまざまなフレーバーを練りこみ色彩を豊かにしたり、インスタ映えするように進化している。
洋菓子店やベーカリー、専門店のほか、ホテルやレストラン、カフェなどでもカヌレを看板商品とするお店が登場しているとともに、さらにその使い方も広がっている。パフェのトッピングに使用したり、ホテルのアフタヌーンティーメニューに取り入れられたり、レストランのランチコースのプチデザートなど幅広く利用されている。
軽ろやかな楽しみ、そして安堵感
ドーナツとカヌレに共通するのは、片手で食べられる手軽さとかわいさ、そして飽きのこないバリエーションやそれぞれの店の個性だろう。彩りよいスイーツは新鮮な発見もありつつ、それでも周知の安心感が根底にある。大きさから形状、食感、色合い、原材料などエンドレスにアレンジが効きやすいところが飽きさせないポイントだろう。
さらに、食べた感触が軽いのも共通項。罪悪感を持ちにくいので1つといわずいくつか選びやすく、そしてかしこまらずに気軽に人にプレゼントできる。ケーキと比較すれば1つ500円以内に収まる価格帯はなじみやすい。すでに周知の商品という安堵(あんど)感もある。
すべてに重くない。見た目、食感、価格、食べ方…、そして期待値も適度な軽さがある。それら「軽さのバランス」が良いのではないだろうか。物価高騰が生活にのしかかっている中において、気負わない楽しみとして、笑顔を導き出すものとして、飽きずに愛されているのだと感じる。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)