肉の代替ではない「進化系豆腐」は市場を広げるのか

肉類の代替として、各国における大豆商品の市場はさらに広がるといわれている。欧米と異なり古くから大豆加工品を日常食としていた日本ではさほどの市場へのインパクトはないともいわれるが、明らかに代替品を扱う飲食店や小売店は増えつつある。大豆加工品の代表ともいえる豆腐は、冷やしてそのまま食べる、加熱して料理に使うなど、いずれにせよ「豆腐」そのものを利用してきた。揚げることで油揚げや厚揚げにはなったが、中身は豆腐をしっかり感じられる加工品だ。しかし最近、豆腐の進化系商品が目立つ。「豆腐らしくない豆腐商品」だ。

「大豆」市場から抜け出した「豆腐」の進化系商品

大豆という広域のくくりから抜け出して「豆腐」は単独でも進化している。豆腐というシンプルな加工品の市場は今後も広がっていくのだろうか。

豆腐メーカーの相模屋食料が開発した「うにのようなビヨンドとうふ」は、濃厚でクリーミーな食感が特徴だ。ディップ状なので、そのまま野菜や肉類、クラッカーのディップソースとして利用できる。オードブルにもなり、和洋中問わず用途が広い。また、鍋に加えると新たな「だし」が加わった味に変わるのも面白い。

相模屋食料「うにのようなビヨンドとうふ」

商品名にある「ビヨンド」は「超えて」との意味がある。「豆腐を超えた豆腐」をコンセプトとした商品は他にも、ハンバーグの代替をイメージした「肉肉しいがんも」、「マスカルポーネのようなナチュラルとうふ」など「BEYOND TOFU」シリーズとして7種類のラインアップを持つ。

※参考記事
食品ヒット大賞特集:優秀ヒット賞=相模屋食料「うにのようなビヨンドとうふ」

進化系が生まれる背景に「豆腐離れ」

アサヒコは、噛み応えがあり、片手で食べられる利便性を兼ね備えた「TOFU BAR」を販売している。一般的な絹ごし豆腐の約2.7倍の植物性タンパク質を含み、1本(68g)で10g摂取することができる。

アサヒコ「豆腐バー バジルソルト風味」

太子食品工業も「なめらか食感豆腐バー」を発売したが、アサヒコの「TOFU BAR」に比べ、より「おかず」な味わいが強いだろうか。こちらも高タンパク質をうたい、アサヒコ同様に1本で10gの植物性タンパク質を有する。これらは、コンビニやスーパーなどにて気軽に購入可能なため、若い世代にも人気となっている。

直江商店では、かねてから豆腐とかまぼこを掛け合わせた練り商品「とうふかまぼこ」シリーズで定評がある。豆腐よりも歯ごたえがあり、かまぼこよりもまろやかでうま味もある。そのままでも食べられるが、醤油をつけるイメージも残しており、従来の和惣菜の印象は強い。

こうした進化系商品が生まれる背景には、危機的意識があると考えられる。総務省の家計調査(2人以上の世帯)によると、かつて平均5602円(2015~2017年)だった豆腐の年間購入金額は、平均5171円(2020~2022年)に減少している。

筆者が勤める大学の学生から、「先生、木綿ってコットン(布)しか知らなかった」と言われたことがあった。木綿も絹もなく、調理された麻婆豆腐や居酒屋の冷ややっこを「豆腐」として彼らは食している。豆腐離れと、豆腐への興味喚起が課題ともいえるのだ。

※参考記事
【わが社の商品開発】アサヒコ「TOFFU PROTEIN(トーフプロテイン)」シリーズ 豆腐の概念と視点を変える

進化系豆腐の可能性は

豆腐は、味噌、醤油、唐辛子など何かしらの「味付け」をして食べるものであった。比べて進化系はすでに完成品として味付け無用であるものが多いのが特徴と感じる。そして、時にはウインナーのように、時には卵の代わりに、あるいはチーズの代用として、いわば肉類に限らず“あらゆる食品の代替”となり得るのではないだろうか。

ニップン「よくばりプレート<豆腐から作ったお肉のミラノ風ドリア&カポナータ>」

筆者もメニュー開発を仕事にしているため、さまざまな新作アイデアが浮かんでくる。考えるだけで楽しく興奮する。ただ、それが消費者の日常食まで発展するのか、もしくは、「あ~、アレが食べたい!」と渇望させるような個性を放っていくのか、海外への市場は期待できるのか。可能性はいろいろありそうだ。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)