福袋のようなワクワク感で食品ロス防止 欧州で普及に成功したアプリ

欧州で急速に利用者を増やしている食品ロス防止アプリ「Too Good To Go」。前回のコラムでは誕生の背景についてご紹介したので、今回は「システムに参加している店舗の声」と「実際に使ってみた感想」など、筆者が住むオランダでの生の声をお伝えしたい。

提供者と利用者のマナーが守られて成立するシステム

前回のコラムはこちら

食品ロス防止アプリが欧州で急速に普及 消費者を巻き込み2450万食分の廃棄阻止

まずは、簡単にアプリの使い方を説明しよう。サイトからアプリをダウンロードし、メールアドレスの登録を済ませる。GPS機能で現在地から近い加盟店舗が検索できるので、そこから希望の店舗を探してほしいものがあれば購入する。支払いは銀行口座引き落としだ。

食品ロス防止アプリ「Too Good To Go」は近所の店舗の登録もできる

購入手続きが終わると確認メールが届き、銀行口座引き落とし後にも確認メールが届く。店舗側の設定料金は平均が5ユーロ(約600円)。そして店舗が指定する時間帯に引き取りに行く。店舗でアプリを見せて、購入のサインインとなるスワイプをしてもらうだけで手続きが完了する。

そして店舗で「Magic Bag」と呼ばれる袋を受け取る。通常、購入金額の3倍程度の販売金額の商品が受け取れる。購入する店舗により、提供数や引き取り時間、またサイトに出てくる時間帯もまちまちだが、だいたいが夕方から閉店の時間にかけてが引き取りタイムだ。

店舗側に提供品がない場合には、店舗のページに「本日売り切れ」の表示が出るので明確にわかる。

ある日のパン屋さんの中身。なんとケーキがホールで

このシステムは、あくまでも廃棄対象処分品を安く提供することであるため、返品は受け付けない。また、店舗の処分品の状況により内容物が変わるため、内容物の事前確認や指定は不可能だ。これらの条件を理解している人にのみ販売することがサイトにもキチンと記載されている。提供者と利用者のマナーが守られてこそ成立するシステムだ。

ある日のスーパーの中身。デザートやチーズも入っている

新規顧客の開拓効果も

さて、本システムに参加している企業はどのような思惑から参加し、実際に運用した感想はどうだろうか。近所の加盟店で聞いてみた。

近所の肉屋オーナーは「肉以外にデリカテッセンなどの取り扱いもあり廃棄には頭を悩ませていた。参加後からは、廃棄になりそうな商品はMagic Bagに入れて販売し、今まで廃棄にかけていたコストとストレスがなくなった。それに、システム参加により新規のお客さまも増えた。引き取り時に、別の商品を購入される方もいて、ありがたい限りだ!良いことずくめのシステム」と絶賛していた。

食品ロス防止アプリ「Too Good To Go」参加店舗の店員さん

また、パン屋では「鮮度が売りのパン屋では、今まで廃棄品に頭を悩まされてきた。参加してからは、いろいろなお客さまに会えるようになった。もっと幅広い客層の利用を目指し、アプリサイトへの記載時間を常に変えるなどの工夫をしている」と話していた。

廃棄と新規顧客開拓に頭を悩ます店舗にとって、思わぬところでの効果も期待できるようだ。

魚屋さんの中身。この日はパエリアも

中身が分からないのでワクワクドキドキ

「時には外れもあるけれど、それもまた楽しい。引き取り時のワクワク感が楽しい」とは、スーパーでのコアなアプリ利用客。「友達に聞いて初めて利用。とにかく興味津々」とは、パン屋で順番待ちをしていた40代の女性。「2セット購入して、一人暮らしの母と分ける予定」とは、肉屋のお客さん。

ちなみに筆者がよく利用するのは、スーパー2店とビュッフェカフェ・パン屋・肉屋・魚屋など。各店舗で引き取りまで中身が分からないのでワクワクドキドキだ。

今までで最高金額の内容物だったMagic bag。既定の倍額の約30ユーロ分が入っていた

このシステムは、その日の台所事情で購入先を決められるのも魅力の一つ。Magic Boxは、連日ワクワク感を買え、なおかつ地球と財布に優しく食品廃棄問題も解決できる「福袋」ともいえるのである。(オランダ在住フードコンサルタント 白神三津恵)