日本の伝統食材「MISO」がイタリアで注目 背景に地中海式ダイエットとマクロビの融合

イタリアで「世界で一番良い食事」といわれることもある地中海式ダイエットは、本場イタリアで最近さらにグレードアップしている。地中海の食事法に日本由来のマクロビオティックを融合した新しい食事法「マクロ地中海ダイエット」が考案されたのである。日本食と地中海食の利点を集めた食事法であるが、その中で注目を集めているのが「味噌」である。今やイタリア語にもなった「MISO」についてレポートする。

2つの健康食事法に共通点

地中海式ダイエットは、世界でもトップレベルの長寿国である日本の食生活と融合し、さらに強化した食事法が発明されている。それが「マクロ地中海ダイエット」である。

この「マクロ」とは日本人発案のマクロビオティックを意味する。玄米、全粒粉を主食とし、豆類や野菜、海草類などの日本の伝統食をベースに組み立てられている食事だ。イタリアでも健康に関心の高いベジタリアンに以前から注目されている食事法である。

ローマのオーガニック系スーパーにはマクロビオティックコーナーがある。左から甘酒、ワサビ、梅干、葛、下段にはワカメやアラメも陳列(筆者撮影)

興味深いことに、日本と地中海諸国と遠く離れた2つの健康的な食事法には、共通点が多い。地元で採れた季節の野菜を中心に、精製されていない炭水化物や豆類、そして化学物質を含まないことなど。また、マクロビオティックは「陰と陽」というミステリアスな東洋思想のある食事法である。イタリア人にとって当たり前すぎる地中海式ダイエットに、新しい哲学的な要素まで追加され、まさに「最強な食事法」へと進化した。

日本の伝統食材は長寿の秘訣として認知が広がる

マクロ地中海ダイエットの発案によって、注目を集めたのがマクロビオティックの基本となる日本の伝統食材である。食に関心の高いイタリア人にも取り入れるべき長寿食材として認知を広げている。

キッチンに用意しておくべきマクロ地中海ダイエットの基本食材として、玄米、海藻、味噌、醤油、葛、梅干、米酢、シイタケ、みりんがあげられている。実際、オーガニック系のスーパーへ行くと、イタリアでも普通に買うことができるほどである。

イタリアのオーガニック系スーパーに並ぶ「米味噌」と「麦味噌」。別の棚には「白味噌」もあった(筆者撮影)

その中でも、特に人気が高いのが「味噌」。寿司ブームとともに、イタリアではすでに味噌汁が一般的に広く知られていたのが要因であろう。しっかりした味わいの味噌汁は、イタリア人の口にもあうのだ。そのおいしい味噌汁のベースとなる味噌は、体にもいい発酵食品ということで、さらに注目を集めている。今や「MISO」は、若い世代を中心にイタリア語でも完全に通じる言葉となっている。

多様な味噌を選ぶ楽しみも

少し前に、バチカン市国の日本大使館で両国の友好80周年を記念するイベントの一環として、味噌の講座が開催されたのだが、すぐに満席となった。味噌のテイスティングができるというのも人気の理由であったようだ。確かに味噌は発酵の時間によって、赤味噌に白味噌、八丁味噌と味が大きく変化する。

また、米味噌だけでなく、麦味噌や豆味噌など、さまざまな種類がある。われわれ日本人と違い、出身地域による味噌のこだわりがないイタリア人は、新しい食材として好みに合わせて選ぶことを楽しんでいる。イタリアの料理サイトによると、ミネストローネのような感覚で使うことも奨励されており、「MISO SOUP(味噌汁)」は身近に感じやすいようである。

一般的なフランスの大手スーパーでもインスタント味噌汁が並び、他にも餅や醤油などが手に入る(筆者撮影)

また、市販の味噌の商品ラインアップが充実するにつれ、インスタント用味噌汁も普通のスーパーで手軽に購入できるようになった。体によくておいしい、しかも手軽に使える味噌が、イタリアで「MISO」として定着するにつれ、今後、味噌汁だけでなく味噌テイストの商品やメニュー提案なども期待される。(フードライター 鈴木奈保子)