英国で豆腐の製造販売に挑戦 ビーガン市場の拡大を追い風に急成長

英国北部に位置するヨークシャーの豆腐製造メーカー「The ToFOO CO.」が売上げを急激に伸ばし話題になっている。同社は2020年の売上げが1470万ポンド(約20億円)を超え、前年比89%と急成長した。

米国での市場拡大に注目

英国北部に位置するヨークシャーの豆腐製造メーカー「The ToFOO CO.」が売上げを急激に伸ばし話題になっている。同社は2020年の売上げが1470万ポンド(約20億円)を超え、前年比89%と急成長した。

2015年、同社の現オーナーであるDavidとLydia夫妻は、米国内の豆腐市場規模が1億7500万ポンドと評価されているにも関わらず、英国では700万ポンドしかない状況を知り、ビジネスチャンスと考えた。英国で豆腐が過小評価されていると思ったからだ。そして翌年の2016年、日本式の豆腐を作っている小さな会社を買収。その際の売上高は60万ポンドであった。

筆者の家の近くのスーパーにも陳列されている豆腐製品

買収後、リサーチとブランディングを経て、「Tesco」「Sainsbury」「Waitrose」といった英国大手スーパーへ出荷を開始。その後も新商品の開発、その他の大手小売店への配荷を続け、さらにビーガン市場の拡大も追い風となって売上げを伸ばし、英国の豆腐市場において最大手企業となった。

参照サイト:
Year of growth for The Tofoo Co | Insider Media
Founder Focus: David Knibbs of Tofoo Co. – BALANCE
The Tofoo Co in Malton toasts best year with £14.7m turnover | York Press

英国人が好むクリスピーな豆腐も

同社が提供している商品ラインナップは以下となる。

Block(ブロック):普通の四角い豆腐。スモーク、照り焼きなどのフレーバーもある。

Crispy(クリスピー):豆腐をフライしたクリスピーな食感。英国で人気のカツのように仕上げている。

クリスピー(画像提供:The ToFOO CO.)

Sizzlers(シズラー):ソーセージのような形態で、英国人が慣れ親しめ気軽に調理できるようにしている。

シズラー(画像提供:The ToFOO CO.)

Tempeh(テンペ):もともとインドネシア料理の大豆発酵食品であるテンペを豆腐バージョンで提供。厚揚げ豆腐みたいに野菜炒めの具として使用したり、カレーやパスタにも使用可。

豆腐の用途を拡大

現在、同社製品を含む英国の豆腐製品群は、ベジタリアン・ビーガン市場の拡大とともに成長しているが、「The ToFOO CO.」のDavidオーナーは「豆腐自体が非常に用途の広い製品であり、決してビーガンのためだけの食材ではない」と語っており、より多くの消費者に豆腐を届けたい狙い。

オーナーのDavidとLydia夫妻(画像提供:The ToFOO CO.)

また豆腐に関する大きな誤解――例えば「湿っている」「味気がない」などのイメージを、消費者とのコミュニケーションを取りながら、製品開発やレシピの提案によって改善しようとしている。2021年は英国で初の冷凍豆腐を発売したり、日本から新しい製造機械も購入したり、さらなる成長を目指して活動中だ。

豆腐という日本では昔から馴染み深い食品が海外に出て、現地でローカライズ・リブランドされ、人気商品になっているという流れは非常に面白い。その過程には、食品の持つ力だけに頼らず、その食品が地域で受け入れられるよう改善する工夫が多く見られた。今後も英国の豆腐市場は拡大すると予測している。(フードライター 武田高建)