「サステナビリティーシール」で消費者の信頼を獲得する南アフリカワイン

世界のワイン生産量で10位以内に入る南アフリカワイン。生産量ではチリワインと順位を競うワイン生産国だが、日本における輸入量ではチリに遠く及ばない。しかし、南アフリカワインは質が良いことからコストパフォーマンスの高さを評価されることも多く、「おいしい」という声も数多く聞く。それには納得の理由がある。

コンセプトは「自然環境保護とワイン産業の共栄」

南アフリカのワインのコンセプトは「南アフリカワイン協会(WOSA)」が掲げる「自然環境保護とワイン産業の共栄」である。1998年には「環境と調和したワイン生産(IPW)」のガイドラインも制定され、95%以上の生産者が順守している。

ブドウ栽培といえば病害が大敵だ。しかし、南アフリカは「ケープドクター」という強い風が吹くことで乾燥し、病害を防ぐことができる。そのため防虫剤など薬剤の使用が抑えられるのだ。また、緯度の高さのわりに南極からのベンガル海流によって冷涼で、ワイン用ブドウの栽培に適している。

ワイン産地の9割を担う西ケープ州はユネスコ世界自然遺産に登録された自然保護区だ。土壌は度重なる地殻変動によって多様に形成しており、世界最古の土壌であるともいわれる。複雑なテロワールの中で育つブドウによるワインは、生産者の個性が強く発揮される。

サステナビリティーシール

南アフリカワインはサステナビリティーにおいても世界的にリードしている。2010年のヴィンテージからは、世界初のサステナビリティーを保証するシールを導入。

キャップシールに貼られ、自然へ配慮した生産の証明、ヴィンテージ、品種、ワインの産地まで追跡が可能だ。独立した監査機関によって3年ごとの審査が行われる厳しい基準である。これにより、消費者はワインの品質を信頼し、安心して手に取ることができるのだ。

参照サイト:
WINES OF SOUTH AFRICA (WoSA)
Current situation of the vitivinicultural sector at a global level(OIV)
South African Government

南アのワイン市場を支えたKWVと若い小規模ワイナリーの台頭

南アフリカワイン市場においてKWV(Ko-operatieve Wijnbouwers Vereniging Van Zuid-Afrika Beperkt)の存在は欠かせない。2018年に100周年を迎えたKWVは、もともと栽培農家によって設立された南アフリカ・ブドウ栽培協同組合である。

「KWV コンコルディア」

フィロキセラの害虫被害や過剰な生産で苦難に立たされていた南アフリカワインを支え、ワイン産業として確立させたパイオニア的存在は私企業となり、さらなる発展を遂げている。品質の良い南アフリカワインを世界に普及させ、今でも南アフリカワインを支える存在だ。

また、小規模・中規模ワイナリーの存在も南アフリカワイン市場において重要である。かつて国際市場を意識した国際品種の大量生産が主だった南アフリカワインは、若い生産者が増え、多様な南アフリカのテロワールの中で丁寧に造られた個性あるワインが生まれている。

「リントンパーク 76 シャルドネ 2019」

コロナ禍で苦境に、SNSで応援の流れ

2020年3月以降、南アフリカではコロナ禍において3回にわたるアルコール販売禁止措置がとられた。輸出に頼るしかなくなったワイナリーにとっては大きなダメージである。2021年3月現在、禁止措置は解除されているが、ワイナリーはワイン在庫を抱え、苦難に立たされている。TwitterやInstagramでは「#SaveSAWine」のタグで南アフリカワインを応援する流れがある。

南アフリカのブドウ農園

多様なテロワール、自然環境保護やトレーサビリティー、品質保証への取組みや多彩な生産者の個性。コストパフォーマスの高さに加え、ポテンシャルの大きさも感じさせる南アフリカワインはこれからも躍進していくだろう。南アフリカワインは今こそ「推す」ときだ。(栄養士ライター 瀬山野まり)