名古屋名物「ういろ」がカジュアルに進化 伝統品とのギャップで客層を拡大

「ういろ」は名古屋名物の一つ。「ういろう」とも呼ばれる昔ながらの和菓子である。数百年の歴史があるういろは今、名古屋で従来のものとは一線を画す変化が訪れている。今回はういろの進化をご紹介したい。

若い人にも受け入れやすいデザインに

ういろは全国複数の地域で名物として売られている。各地で原材料や製法に違いがあり、ういろと一口で言っても味わいは異なる。名古屋のういろは、うるち米から精粉した米粉を原料とするものが主流だ。

ういろと聞いてどんなものを思い浮かべるだろうか。深い茶色や白色の棒状で、切り分けていただく、そんなイメージを持つ人も多いだろう。名古屋駅のキヨスクなどおみやげショップでは必ず目にするものだ。

昔ながらのういろの隣に、ういろの従来のイメージとは異なるういろ商品が並ぶようになってきた。どれも若い人にも受け入れやすいデザインで、カジュアルな商品を展開している。SNS上でも若い世代を中心に、幅広い世代の人が話題にしている。

ういろの特徴や良さをそのまま盛り込みつつデザインや食べ方、食感など、さまざまな工夫をすることで手に取る人の世代を広げることに成功しているのだ。

食べ方をがらりと変えて斬新な印象に

例えば、大須ういろの「ウイロバー」はレトロモダンともいえる落ち着いたデザインのパッケージ。開けばアイスキャンデーのように棒に刺さったカラフルなういろとないろが並ぶ。種類は「さくら」「くろ」「しろ」「ないろ」「まっちゃ」の5種類。

ウイロバー(5個入り 税込み702円)

ないろは大須ういろの商品の一つで、ういろにこしあんを加えたものである。見た目もかわいらしく、思わず写真に収めたくなるものだ。

包装を取り外し、ういろに巻かれているフィルムを剥がしていただく。ここまではさみも包丁もいらない。ういろの味はまさしく、昔ながらのほっとする味わいだ。しかし棒を持ちながらいただくと、何か別のものを食べているような錯覚も覚えるようだ。

同じく大須ういろの「ういろモナカ」はモナカとあん、そしてういろが別包装で入っており、自分で合わせていただくものだ。種類は「ういろ白」「ういろ抹茶」「ういろ桜」の3つ。バラと3個セットで売られている。

ういろモナカ(3個入り 税込み745円)

ういろは米粉を原料にしているものであり、あんにもモナカの皮にもよく合うことは想像に難くない。しかしういろというものはそれだけで完成されている和菓子であり、何かと合わせるという発想になかなか至りにくい。

さっくりとした皮と弾力のあるういろ、そして甘いあんの食感や甘さの違いがバランスよく合わさり、確かにういろの味でありながら、もなかとしていただくことで新鮮な風味を楽しめた。

食感そのものを劇的に変化

餅文総本店の「わらびういろ」は、従来のどっしりとした重厚感があるういろとは大きく違う。ぷるぷると震える様子は、まるでわらび餅。しかし、瑞々しさとやわらかさを持ちながらももっちりとした食感はまさにういろを思い出させるものだ。包装紙で包み蒸し上げてられることでコシのある弾力が生まれている。

わらびういろ(6個入り 税込み648円)

6個入りの「わらびういろ」は黒蜜やきなこをかけていただく。ひんやりとした上品な甘さのわらびういろに濃厚な甘味の黒蜜が絶妙だ。定番のものはそのままに「ちょこわらびういろ」や「濃い抹茶わらびういろ」など期間限定商品も売られている。

バラエティーに富んだ商品展開をすることで購入者の興味が続き、ひんぱんに話題にされやすい。単に期間限定商品があるというだけではなく、これまで長く続いていた伝統的なスタイルとのギャップがフック要素となっているのだ。

伝統を引き継ぎながら新しい驚きを

「ウイロバー」や「ういろモナカ」は発売して数年、「わらびういろ」は10年以上経つが、今でもSNSでは従来のういろとの大きな違いに驚く声が見られる。長い歴史を持つ伝統的な和菓子の印象はやはり根強いのだ。

新商品は誰も見たこともなく想像もつかない奇抜なものにしても受け入れられることは難しい。ヒットに方程式はないとはいえ、前例を見れば、これまで人々が触れていた馴染みあるものに新しい要素を加えながら、少しずつ進化していくことが、長く続き根付く商品となりやすいだろう。

カジュアルな展開をしている「ういろ」

今回紹介した「ウイロバー」「ういろモナカ」「わらびういろ」の他にも青柳ういろうの「青柳ういろうforアスリート」4枚入り(税込み411円)や雀おどり總本店の「茶あわせういろ」6個入り(税込み680円)などさまざまな形態のういろが増えてきている。

どれも新しさと驚きを感じさせながらも、伝統ある和菓子ならではの深い親しみが存在するものだ。今、手に取っている若い世代が受ける意外性がある新鮮な印象は、いずれは浸透しギャップが埋められ驚きは落ち着いていく。しかし、ういろはまた伝統を引継ぎながら新しい驚きをもたらしてくれるだろう。(栄養士ライター瀬山野まり)