ヘルシートーク:薬膳料理研究家・東洋美食薬膳協会代表理事 谷口ももよさん

2025.06.01 359号 05面
『女性の100の不調を整える薬膳と漢方』 谷口ももよ著/エクスナレッジ 定価:1,980円(税込)

『女性の100の不調を整える薬膳と漢方』 谷口ももよ著/エクスナレッジ 定価:1,980円(税込)

本の中身ちょっと拝見:イベントで披露したレシピより、さらに簡単な「白きくらげのシロップ煮」

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本の中身ちょっと拝見:気持ちがほぐれる「しそ入りしょうが茶」と「菊花とミント入りの緑茶」

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「おやつに身近な食材を組み合わせれば養生に」と谷口さん

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「肌のうるおい」をテーマに食材を組み合わせた「クコとレモンのジュレ」

「肌のうるおい」をテーマに食材を組み合わせた「クコとレモンのジュレ」

参加者にはレシピの試食も!

参加者にはレシピの試食も!

 ◇身近な食べ物で養生しましょう 自分の症状に気づいて

 4月17日開催の「ホビークッキングフェア2025」クッキングライブステージに登場の薬膳料理研究家の谷口ももよさん。日々の生活の中で薬膳を取り入れる方法やおいしく手軽につくれる薬膳スイーツ、さらにこれからの季節の養生ポイントを伺いました。

 ●体調、体質、天候に合わせて食材を組み合わせるのが「薬膳」

 「薬膳」と聞くと、生薬や漢方薬、高麗人参などが入っているものと思う人もいるのではないでしょうか。東洋医学における薬膳の定義は、「中医学(中国伝統医学)に基づいてつくられた食事で、その目的は、疾病の予防や病気の回復、そして健康を保つためのおいしい食事である」こと。症状だけでなく、体調や体質、天候に合わせて食材を組み合わせ、食べて元気になれるのが薬膳です。東洋医学には、薬も食物も同じ自然のものであり、それぞれに薬効を持っているという「薬食同源(やくしょくどうげん)」の考えがあります。要は、身近な食べ物もそれぞれ効能を持っているということです。

 生薬も食べ物も、効能は五味によって分類されます。例えば、苦みは熱を下げたり解毒する効果、辛みは気血の巡りを良くする働き、甘みは痛みを軽減する働きがあるとされています。

 何だかだるい、最近疲れがとれない…という時、薬に頼っていませんか? 自然界にあるものが材料になっているとはいえ、漢方薬でも身体の負担になってしまう場合があります。ちょっとした不調を感じた時は、身近な食材の中から自分の体調や体質に応じて必要なものを組み合わせて食べ、バランスを整えるほうが、実は身体に合っています。そして、それこそが薬膳による食養生なのです。

 天候による体調の変化や感じ方は、人によって違います。だからこそ、大事なのは、自分の症状に気づくこと。ちょっとした不調を感じたら、最近食べたものや天候などを振り返ってみましょう。原因を見つけて身近な食べ物で養生していくことが、薬膳の第一歩だと思います。

 ●「肌のうるおい」がテーマのクコとレモンのジュレ

 今回、クッキングライブステージで披露したレシピの1つが、薬膳スイーツ「クコとレモンのジュレ」です。薬膳の定義に沿っていながらも、食べやすく、簡単につくれます。材料に使う「クコの実」は血に栄養を与え、肝機能を高めてくれたり、目の働きを良くしたりします。シミ対策や美肌にもいいと言われているので、シミが気になる時は、小さじ1~2杯程度を週に4~5回とるといいでしょう。

 他にも薬膳では、美肌やうるおいを与える食材の「白きくらげ」、熱を冷まし身体をうるおす働きもある「レモン」も使用します。この3つの食材は「肌のうるおい」をテーマにした組み合わせです。薬膳は、何のために組み合わせるのかが大事なのです。

 作り方は、鍋に水、砂糖、アガー、水で戻した白きくらげを入れて沸騰させ、1~2分したら火を止めて、クコの実とレモンを加えて冷蔵庫で冷やせば完成です。凝固させるのに「アガー」を使うことですぐに固まり、キレイな透明のジュレに仕上がります。

 ●梅雨時は消化に良いものを食べ利尿や発汗を促して

 東洋医学では、季節の天候の変化が身体に影響を及ぼすと考えるため、季節に応じて養生することも大切です。これから梅雨に入ると、むくみやすく、胃腸の調子も悪くなりがちです。

 雨が多いと、人の身体も植物と同じように水分を吸収します。スポンジのようにいろいろなものを消化吸収する胃腸には、いつも以上に水がたまった状態に。そのため、消化不良やむくみだけでなく、身体がだるい、頭が重いといった症状も出やすくなるのです。養生するには、消化の良いものを食べて胃腸を補い、利尿や発汗を促すといいでしょう。利尿には、とうもろこしやそら豆、あさりなどがおすすめです。

 水分不足になりやすい夏は、乾燥を感じたら水を飲むだけでなく、野菜や果物をとることも大事。きゅうりやなす、トマトは水分が摂取できるだけでなく、体内の熱を冷ましてくれます。旬の野菜は、気候に勝ち抜く力があり、季節に応じた効能を持っているものも多いので、取り入れることで基本的な養生につながるのです。ただし、天候も体調も日々変わるので同じものを食べ続ければいいというわけではありません。

 朝起きて「すっきりしている」「なんだか疲れている」など体調の変化を感じ、今日は何を食べようかと考え、身体をケアする食材を少しでもプラスしていけば、それが日々の養生になるのです。

 日本人には日本の食材が一番合っていますし、季節のものを中心に体調に合わせて食材を選び、バランスをとることで体調も少しずつ変化すると思います。あまり難しく捉えず、食材の効能を考えて、日々の食卓に薬膳を活用するといいでしょう。

 ◇プロフィール

 たにぐち・ももよ 2009年、薬膳料理研究家として活動をスタート。薬膳料理教室「Salonde Maman」主宰。東洋美食薬膳協会代表理事および日本豆腐マイスター協会理事。2023年12月に中医学の最高権威団体「世界中医薬学会連合会」の日本人女性初の理事に就任。著書にグルマン世界料理本大賞を受賞した『身近な10の食材で始める 薬膳ビューティーレシピ』(講談社)など。

 ●BOOK

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