中元ギフト特集

中元ギフト特集:首都圏百貨店 コロナ休業明け最初の商戦 今後の催事の試金石

特集 小売 2020.06.17 12066号 06面
巣ごもり消費に百貨店ギフトならではの非日常的な要素を提案(西武池袋本店)

巣ごもり消費に百貨店ギフトならではの非日常的な要素を提案(西武池袋本店)

地域や生産者の応援企画も各店の共通テーマに(そごう横浜店)

地域や生産者の応援企画も各店の共通テーマに(そごう横浜店)

店頭では感染防止策を徹底(西武池袋本店)

店頭では感染防止策を徹底(西武池袋本店)

新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされた百貨店にとって、中元ギフトは反転攻勢の最初の機会だ。店頭のギフトセンターが感染防止策の制約を受ける中、オンラインショッピングの取組みが従来にも増して重要になる。新型コロナに伴う行動変容に対処しつつ、店舗でもネットでも百貨店ならではの買い物体験をどのように提供していくか、中元ギフト商戦は今後の催事展開を見据えた試金石になる。(宮川耕平)

ギフトセンターの開設は多くが例年よりも遅れ、通路幅を確保するために陳列什器を削減したり、試食を取りやめたりと営業の取組みは制限されている。まして密集を避けるため店頭への集客そのものが従来のようには行えない状況だ。今年の中元商戦の見通しは困難で、販売計画を未定とする店舗も多い。

店頭施策が制限される分は、オンライン強化で補う以外に方法はない。そもそもオンラインへのシフトはここ数年の流れで、直近の19年歳暮期でも漸減が続く店頭に比べ、ネット販売は伸びていた。各社はオンライン購入で送料を無料とする特典や、ネット限定品の拡充など戦略的に取組みを強化してきた。

ネット販売の増加は、新たな購入動機の創出とも関連している。贈答よりは自家消費を目的とするもので、年末年始に特別なごちそうを楽しみたいという需要は拡大している。特別な商品を共に楽しもうとする意向から、カジュアルギフトや手土産との境界もあいまいになってきた。また、自然災害が多発した昨年来、備蓄用の商品選択も一段と増えている。

これまでも中元・歳暮市場は伝統的な贈答スタイルから多様化することに活路を見いだそうとしてきた。今も贈答と返礼がイメージの核であることは確かだが、よりカジュアルなギフト需要や、自家消費も含めた総合的な季節ギフトの催事へと商戦の意味合いは変化している。

●オンライン化が促す多様化

新型コロナを受けた今年の中元ギフトは、市場の変化をさらに加速させそうだ。販売機会として店頭からネットへのシフトが進み、同時に購入動機の多様化も一段と進むだろう。

オンラインの強化は各社共通の取組みだが、新型コロナの影響下で数値目標を設定しづらい状況であることは店頭と変わらない。ただ、大丸松坂屋のように前年比40%増と野心的な目標値を掲げる企業もある。

外出リスクを減らしたい消費者にとっても店頭での混雑を避けたい企業にとってもオンラインは重要なツールになる。高島屋は、ネットでの購入者に抽選でカタログギフトをプレゼントするなど特典を拡充、小田急百貨店も要件を満たした購入者にオンラインクーポンを提供する。

三越伊勢丹は5月29日、主要ギフトを動画で紹介するライブ配信を行った。中元ギフトのサイトには、ネット限定品の紹介ページを用意したほか、価格帯別の売れ筋ランキングを公表するなど、利用者がオンラインで購入する際の手掛かりを工夫している。

東武百貨店も中元ギフトの中心商品「逸品伝心」の特集ページを展開、各商品に担当バイヤーのおすすめコメントを掲載して商品理解の促進を狙う。

大丸松坂屋は、ギフト用サイトで疫病退散の精霊「アマビエ」を取り入れた夏季限定イラストを壁紙データとして提供する。販促とは直接関係するものではないが、新型コロナを関連させながらギフトとオンライン購入を結びつける工夫だ。

●巣ごもり消費に非日常性

オンライン化が進めば、ギフトの購入機会はむしろ増える。客層が広がるだけでなく、前述のように購入の目的も広がってくる。新型コロナの感染拡大防止のために、当面は「巣ごもり消費」が社会的にも求められる中、オンライン購入で届くギフト商品は、巣ごもりの中の非日常的な体験として需要が高まる可能性もある。こうした需要にマッチするのは、ネット専業の大手EC(電子商取引)とは限らない。百貨店が持つ品質や安心のイメージは、ギフト購入先としてオンラインでもブランド力を有する。

そうした百貨店ならではのイメージを核に、各社の中元ギフトは巣ごもり消費に注目する。全国各地の美味を家に居ながらにして楽しむことが今期の中心テーマだ。

そごう・西武は「すごもり応援」をスローガンに、「イエナカ旅気分」として各地のグルメを取り揃える。保存が利く乾麺などを「とっておきストック」として付加価値型の備蓄品に、増える内食の機会にはレンジアップ商品などを「かんたんスグごはん」として提案する。また、そごう横浜店では継続テーマである「美と健康」の切り口で、地元メーカーの発酵食品を特集する。

松屋銀座店は、有名レストランの味や、百貨店ならではの高級生鮮品を充実させるほか、家飲み用に蔵元別の飲み比べ清酒10本セットなどを打ち出す。京王百貨店は、自家用限定としてボルドー産の赤ワイン12本セット、ワケありでリーズナブルな有明産焼き海苔、レンジアップ食品などを揃える。

大丸松坂屋の「全国各地のおいしいものを食べて応援!がんばる日本の美味特集」のように、生産者の応援という切り口での地域特集も、各社それぞれに見られる今年の特徴となっている。

新型コロナ以外の傾向として、洋菓子を中心にデザートの売上げは着実に伸びている。京王百貨店はアイスケーキなどのクールデザートを前年比1.5倍の32種類に拡充した。見栄えもするデザートは、巣ごもり消費を華やかにするアイテムという意味でも、各社が力を入れている。

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