茶系飲料特集

◆茶系飲料特集:激戦続く ニューノーマルでの戦線の行方はいかに

飲料 2021.04.30 12222号 05面
透き通る「琥珀色の水色」を提案するサントリー食品インターナショナルの「伊右衛門京都ブレンド」

透き通る「琥珀色の水色」を提案するサントリー食品インターナショナルの「伊右衛門京都ブレンド」

日本各地の伝統工芸を未来につなげるコカ・コーラシステムの「綾鷹 伝統工芸支援ボトル」。ソーシャルグッドの取組みも各社が推進している

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活発な動きの紅茶飲料も注目カテゴリー。キリンビバレッジの「午後の紅茶」は35周年という記念すべき年を迎えた

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伊藤園が45年かけ取り組む「茶産地育成事業」は産地支援にもつながる

伊藤園が45年かけ取り組む「茶産地育成事業」は産地支援にもつながる

 2021年も茶系飲料市場は激戦が予想される。近年、生活者の健康志向などを背景に伸長が続いてきた同市場は20年、長引くウィズコロナによる外出自粛や移動の制限などの影響を受け、一服することになった。新たな社会様式でのスタートとなった21年、各社が英知を結集し、積極的な経営資源の投資が続く「緑茶飲料」での戦いの激しさは増すばかりだ。また、近年、情報発信の少なさなどから、少し落ちついていた「ブレンド茶」でも、新たな戦いが始まりそうな気配がある。「麦茶」「紅茶」飲料も、新提案などの活発な動きがあり、各ブランドが繰り広げるニューノーマルでの茶系飲料市場戦線の行方を見守りたい。(本吉卓也)

 ●20年の茶系飲料 生産量5.3%減の524万kl

 20年の茶系飲料市場(紅茶飲料を除く)の生産量は、524万2900kl(前年比5.3%減)、生産者販売金額は7441億3800万円(同6.7%減)となった(全国清涼飲料連合会調べ)。同市場は、紅茶飲料も含め、ウィズコロナによる外出自粛や移動制限の影響を大きく受けた形だ。消費者の行動変容として、在宅時間拡大で、大容量製品やECチャネルでのニーズが高まるとともに、緑茶や麦茶、紅茶などはリーフ製品の需要が伸長した。

 外出自粛による影響は、茶系飲料の外出先などでの飲用機会の高さが、あらためて証明されたといえる。味わいや健康性訴求とともに、自動販売機などで、手軽に喉や心の渇きを潤す(止渇性)ための即時飲用というニーズは、茶系飲料の強みでもある。

 20年の茶系飲料のトピックとして、4月にブランド史上最大の刷新が奏功した「伊右衛門」(サントリー食品インターナショナル)の好調がある。“おいしそうに見えて、実際においしい”淹(い)れたてのお茶のような鮮やかな「緑の水色(すいしょく)」提案が、ウィズコロナによる社会不安から、新製品や大型リニューアル商品に注目が集まりづらい状況下で、消費者の心をつかんだ。

 ●緑茶飲料 茶葉や色など多彩な戦略

 21年も最注目となるのは、各社を代表するブランドが揃う「緑茶飲料」だ。各社の多彩な戦略は各社動向で触れるため、ここでは、ポイントのみ触れたい。

 「茶カテキン」の力など、お茶の持つ健康性や原料茶葉へのこだわりをあらためて訴求する伊藤園の「お~いお茶」。「茶産地育成事業」など「お茶や原料茶葉へのこだわり」は茶農家や生産地支援にもつながっている。“21年の新茶”を使用した「お~いお茶 緑茶」や香りを高めた「同 ほうじ茶」「玄米茶」を投入。

 「お茶の質は色に出る」という新たな指針で攻め続けるサントリー食品インターナショナルの「伊右衛門」。「伊右衛門」本体は、味と香り、そして入れたてのような緑茶の緑の水色を進化させた。加えて、新発想のブレンド茶「伊右衛門 京都ブレンド」を4月6日から新投入した。すっきりとした上質な味わいと透きとおる琥珀(こはく)色が織りなす鮮やかな水色が特徴だ。新投入した「伊右衛門 濃い味」も好調なスタートを切った。

 お茶の可能性を広げる「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」が好発進し「伝統工芸支援ボトル」など活発な提案を続ける「綾鷹」。多様化する生活者のニーズにブランド横断による多彩な選択肢で対応するコカ・コーラシステムは「革新」を担う新シリーズ「綾鷹カフェ」第1弾の「綾鷹カフェ 抹茶ラテ」を投入した。同品は、京都・宇治の老舗茶舗「上林春松本店」とスペシャルティーコーヒー専門店「猿田彦珈琲」が監修した新たな抹茶ラテ。新発売と同時に、圧倒的な支持を獲得している。

 環境フラグシップブランドとしてパーパス・ブランディングで存在意義を高める「生茶」を販売するキリンビバレッジは環境に優しい「生茶」を目指し、今春から、コンビニエンスストアでの“100%リサイクルPETボトル”の採用拡大、量販店や通信販売(EC)でのラベルレス6本パックやケース販売の開始、自動販売機でのラベル短尺化など、あらゆる接点で「生茶」の環境への取組みを消費者に訴求していく。

 ●ブレンド茶・麦茶・紅茶などでも攻勢

 21年は、「ブレンド茶」「麦茶」「紅茶」などでも活発な情報発信が目立つ。

 「ブレンド茶」は、中期的に見ると微減傾向にあったが、その要因は「カテゴリーとしてのニュース発信が少なかったことが要因ではないか」とアサヒ飲料の星野浩孝マーケティング本部マーケティング二部お茶水グループリーダーは分析する。その状況を踏まえ、同社のブレンド茶「十六茶」は、“人にやさしく、地球にやさしい”商品としてリブランディングを図る。同社は「最重点ブランド」として位置付け、ブレンド茶の活性化を図る。環境配慮素材(PET再生樹脂、バイオ素材樹脂)を使用した環境にやさしい新容器「ネイチャーボトル」を新たに採用した。

 「ブレンド茶」の強みは、各メーカーの知見や技術力の結晶となる「ブレンド(すること)」の妙技を味わえることだろう。「ブレンド」の妙技を訴求するのが、「伊右衛門 京都ブレンド」(サントリー食品インターナショナル)だ。有形無形の「京都」への思いを込めた「ブレンド茶」の一品となる。

 伸長を続けてきた「麦茶」は、外出自粛による家庭外飲用の減少や消費者の顕在化する節約意識などから、20年は影響を受けた。だが、今春はコカ・コーラシステムから大型製品「やかんの麦茶 from 一(はじめ)」が新たに投入され、活性化の兆しが見える。産地の文化や歴史、生産者の思いなど、産地との絆を深める「TOCHIとCRAFT」という独自価値創出に取り組むポッカサッポロフード&ビバレッジの「伊達麦茶」など、再成長が期待できるカテゴリーだ。

 19年に7年ぶりに拡大した「紅茶」は、20年はその反動の影響を受けた形だ。在宅時間増加で、緑茶やコーヒーなどと同様、手入れのリーフ製品伸長の影響もあったもようだ。だが、逆の見方をすれば、リーフやティーバッグなど、嗜好(しこう)製品の味わいを体験したユーザーが、各社が提案するRTD紅茶飲料に対する心意気や味わいの妙技を堪能する良い機会になる。35周年というアニバーサリーイヤーをさまざまな活動で彩っていく「午後の紅茶」(キリンビバレッジ)や、コカ・コーラシステムが新投入した「紅茶花伝 無糖」、食事に合う「テーブルドリンク」というブランドのアイデンティティーを提唱し続ける大塚食品の「ジャワティ」も活発な動きを見せ、19年を超えようと、紅茶飲料の反転攻勢に注目だ。

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