ウイスキー特集

◆ウイスキー特集:二極化進む家飲み 節約志向・プチ贅沢背景に

酒類 2021.10.15 12309号 05面

9月29日に改装オープンしたサミットストア深沢坂上店のウイスキー売場

9月29日に改装オープンしたサミットストア深沢坂上店のウイスキー売場

 自宅で飲まれるウイスキーの消費が二極化している。新型コロナウイルス下で強まる消費者の節約志向を受け、大容量品などリーズナブルな商品の需要が増えている一方、自宅で「プチ贅沢」を楽しむ受け皿としてプレミアムウイスキーの存在感が高まっている。コロナ禍で定着した家飲み需要を取り込もうと、ウイスキー各社は上質なブランド体験の機会を提供していく。(岡朋弘)

 ウイスキー市場は、コロナ禍の影響で「家庭用好調」「業務用低調」の構図が続いていた。9月までの業務用市場は、政府による飲食店の酒類提供禁止措置を受け20年以上に落ち込みが大きかったとみられる。

 政府は9月30日にコロナ対策の緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を全面解除し、10月1日から対象地域で禁止していた飲食店での酒類提供を全国で解禁。東京や神奈川などでは提供制限は残ったものの、今後の業務用の需要回復に向けて期待が高まっている。

 一方、需要回復に向けた懸念材料として、長引くコロナ禍で酒類に対してネガティブな印象が浸透したことが挙げられる。家飲みに慣れた人にとっては店飲みは割高感が強い。業務用市場が19年の水準に戻れるか各社の模索が続きそうだ。酒類市場の縮小が予想される中、定着した家飲み需要の取り込みと同時に外飲み需要の喚起が必要不可欠となる。

 家庭用市場では、コロナ禍でビール類や焼酎、ワインからウイスキーにユーザーが流入したもよう。今後もユーザー数の拡大が見込まれる。家飲みが定着し、グラスに氷を入れウイスキーを注ぐ「ロック」や炭酸で割った「ハイボール」など、自宅でのウイスキーの飲み方が広がった。飲食店で飲めない中、炭酸水を家庭に常備する人が増え、自宅でハイボールを楽しむ人が増えたと思われる。

 リーズナブルな商品を求めて大容量品の需要が伸びたり、ECを通じ料飲店で飲んでいた銘柄を購入したりする人が増えた。生活様式が変わり家飲みが広がったことで、自宅での晩酌需要やバーに行けない代わりに自宅で「プチ贅沢」を楽しむためプレミアム品の需要が高まった。

 キリンビールは取り扱うスコッチウイスキーブランド「ジョニーウォーカー」の「ブラック」「レッド」の家庭向け販売を好調に伸ばしている。「ホワイトホース」の販売も好調で、大容量品(2.7L、4L)に加え、上級品の「同 12年」も伸長している。年末に向けて、家庭用の提案をさらに強化していくほか、業務用でも可能な限り客単価アップなど得意先に貢献できるような提案に努める考えだ。

 国産ウイスキーでは、シングルグレーンウイスキー「富士」のブランド強化を図っている。料飲店に加え量販店へ販売チャネルを拡大したことで販売の伸びが加速した。上質なブランド体験の提供を軸に着実なブランド育成につなげる。

 サッポロビールは業務用向けの提案として、スコッチ「デュワーズ」ブランドで、樽詰めハイボールの提案を強化し市場の活性化を図る考えだ。食中酒としてハイボールに合うフードメニューも同時提案していく。

 ハイボール提案は居酒屋業態を中心に進めていく一方で、オーセンティックバーなどに対してはデュワーズのプレミアム品となる「デュワーズ 12年」「同 15年」を中心に提案していく考えだ。定番品の「同 ホワイト・ラベル」に加えてプレミアム品の付加価値提案を加速する。

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