本音から組織を変える技術
組織変革コンサルタントである筆者は大学卒業後、味の素に入社。問屋、量販店担当として営業に配属になった。仕事を通じて食品業界の複雑な構造や日本特有の商流など多くのことを学ぶ。入社当時の世の中はまさにバブル経済で、日本の人口も伸長していた。量販店の出店攻勢も激しく、まさに仁義なき戦いの「安売り合戦」が活況だったころだ。豆腐や卵の特売が「1円」で売られる時代だった。
今年2021年はバブル崩壊から数えてちょうど30年目を迎える。失われた30年、デフレ経済から抜け出せないまま推移してきた。そして、2006年にピークを迎え、急速な少子高齢化に向かっている日本。昨年2020年はピークから数えて202万人減、20年後の2040年にはなんと1685万人の人口減少が予想される。約1400万人の東京都の人口をはるかにしのぐ人数が日本からいなくなるのだ。
頭数が減るということは、美容院、理髪店に影響する。同様に胃袋が減れば食品の摂取量が減少する。この明白な社会構造の変化に対して、食品業界はなかなか変化し切れずにいる。食品業界は日本の食卓を支え、日本を代表する産業であるのは間違いない。一方、古い体質や考え方が色濃く残っている業界でもある。いまだ大量生産、大量消費を前提にしたサプライチェーンを変えることができずにいる。大量に破棄される食品ロスは年間600万tを超える(農林水産省、環境省「平成29年度推計」)。これは世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた食糧援助量の1.6倍に相当する。
世界の人口は伸びている。しかし、日本は先進国の中、最速で少子高齢化に向かっている国だ。そして、日本の食品会社で輸出比率が高い会社は一握りだ。つまりほとんどの企業が日本をメーン市場にしているということだ。そろそろ私たちは真剣にかじを切る時が来たのではないだろうか。前年比の結果で一喜一憂するのをやめ、新たな指標を立てることが求められている。かじを切るためにはマネジメント指標を切り替える必要がある。経営は指標の実現に向かうからだ。本連載では次回以降、この新たな時代に向けていかに会社のかじを切り、組織変革を行うかを提示し、持論を述べたいと思う。
(ジーンパートナーズ代表取締役・仁科雅朋)
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