加工ごま特集

加工ごま特集:原料事情 コロナ禍でも輸入量は増加傾向

農産乾物 特集 2020.12.28 12165号 06面

 19年秋口クロップで大きく減産する国はなく、段階的に相場は緩んでいった。20年1月、中国で新型コロナウイルス感染が拡大し、ごまの需要期である春節が延長され外出規制されるなど外食事業は低迷した。西アフリカでも新型コロナウイルス感染拡大となり、ナイジェリアでロックダウン。需要家は供給不安から買いを進めた結果、相場が強含んだ。

 しかし、ごま生産地である開発途上国ではロックダウンであっても貿易は外貨を入手するための経済上重要な位置付けであるため、遅延はあるものの出荷が滞ることはなかった。5月、東アフリカ(モザンビーク、タンザニア)の生産量が20万tを超えたことで相場は緩み、一時搾油原料相場は1t当たり1000ドル割れとなった。

 秋口クロップの状況について、中国では自国産原料は歴史的な長梅雨の被害を受けて、生産量が30%減産の25万tとなった。インドでは断続的な降雨に見舞われ35万t以下となる見込み。ナイジェリアでは降雨が続き洪水の被害も発生したが、生産量は微減程度にとどまった。エチオピアでは国内需要のソルガムへの転作が進み作付け面積が減少、降雨の影響もあり20万t以下となった。スーダンではソルガムへの転作、断続的な降雨により35万~37万tと減産となる見込み。ミャンマーモンスーンクロップでは降雨量不足で生産量減。また、新型コロナウイルス感染拡大により移動制限がかかり集荷状況が不明である。

 需要状況について、相場をけん引する中国消費だが、コロナ禍であっても需要は減少することはなかった。輸入量は今年、過去最高を更新する90万t超えも確実。港湾在庫も高めで一時(8月末日)21万tまで達した。自国生産が減少した影響から港湾引取が急激に増加して、現在は16万tを切った。

 日本は輸入量が増加している。コロナ禍で業務用の外食向けは減少するものの、ごまは加工ユーザー向けが多く、内食需要に支えられほとんど落ち込みは見せなかった。輸入量では新型コロナが発症した際に、各社安定供給の懸念から買いを進めた。その後相場は東アフリカ産の豊作から相場は軟化、さらに買い増しを進めた。20年輸入量は1~9月で15万5000tと過去最高の輸入量で進捗していて、20万tに迫るペースだ。

 トルコはイスラム教徒が大部分を占め、古くから宗教的にごまを食する文化が根付いている。タヒーニ(練りごま)、ハルヴァ(ごま菓子)、シュミット(パン)などごまを使った代表する料理があり、食品ごまの需要国である。自国生産もあるが、大半は輸入で需要を補っている。主に輸入している産地は西アフリカ。同国では人口が増加しごまの消費量は拡大して、昨年の輸入量は17万2000tで過去最高。今年は前年をさらに上回るペースで輸入している。

 今後について、アフリカの政情不安から相場は上向く可能性が高い。アフリカからの出荷が不透明な状況なので、リスクヘッジで産地が分散されると思われる。ハーベストプレッシャーによる相場軟化の期待は薄い。中国では春節需要(2月初旬)に向けて11~1月初旬までは買いが止まらないと思われる。日本メーカー各社は在庫や既契約を多く保持している傾向である。

 (取材協力=カタギ食品)

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