だしの素特集

◆だしの素特集:味噌汁復権で回復加速 小容量・減塩に支持 若年層開拓を市場持続に

調味料 特集 2021.08.06 12272号 07面

 だしの素は鰹節などの乾物原料を粉末・顆粒にし、軽量・安価でだし採りが簡単と底堅い需要を誇る。だしそのものは低塩、低脂肪で食材の味わいを増し、健康価値は絶対的。味噌汁の復権とともにだしの素も回復速度を加速。和食全般の再評価、市場持続へ段階を高めたい。(吉岡勇樹)

 同市場は20年度、前年比5%増の417億円で着地したとみられる。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ巣ごもり志向が奏功。家庭内食が増加して、時短・簡便で経済的と消費者に選ばれた。

 20年2月末の政府の休校要請からコロナ禍が始まり、本市場のピークも4月。緊急事態宣言による外出自粛で内食が急増した。調味料全体で4月は前年比2桁成長。だしの素で特筆されるのが以後の好況。前年実績を大幅に上回る月が続き、再購入された。

 相関するのが使用率8割の、味噌汁の食卓への登場増。前年の19年度から頻度が微増し、20年度は同2桁増。だしの素市場も連動して勢いを増した。増えた内食で味噌汁の健康・経済価値が再評価された。近年は発酵食品である味噌の健康・栄養成分が広く知られ、「長生きみそ汁」も話題になった。

 トップメーカーの味の素社はメニュー価値の向上に長く努め、推進する「うちのみそ汁」応援企画も貢献。具だくさんにすれば、手軽に野菜や卵、肉などバランスの良い栄養価が取れる。脇役から主菜へ徐々にステップアップ。即席味噌汁市場の同質廉売といった成熟、二極化を横目に、コロナ共存の自衛社会では伝統食の安心感も求められ、手作り派も増えたとみられる。

 商品別動向を見ると、4~8g小袋・スティックといった小容量タイプが特に伸びた。試しやすいサイズからトライアルが進み、主流の1~2世帯にも合致。残さず使える使い勝手、鮮度感といった現代価値も支持され、ノン・ライトユーザーだった若年層の開拓にも寄与した。

 このほか減塩タイプも成長傾向を加速。コロナ禍で健康志向が深まり、だしを利かせて減塩してもおいしい、という商品設計はだしの素の基本価値も伝えた。少量・減塩化は価値とともに単価も向上。約20年も続いた縮小・成熟市場はコロナを契機に持続性を高めた。

 味の素社は減塩を前向きに楽しむ「Smart Salt(スマ塩)」企画を本格化。地域連携のエコシステムとして減塩週間のスムーズな定着を促進。市場そのものの価値も高めている。

 続く21年度は前年から反落して推移。特に4月の反動減を余儀なくされたが、主力のかつおだしを中心に回復傾向にある。内食と味噌汁の高止まりが追い風になり、小容量と減塩タイプは前年実績超え。生活者価値と認められて試買、再購入、連続購入という好循環を生んでいる。

 今後ワクチン接種が進み、感染が落ち着けば外出、外食が増える。価格競争で前年ボリュームを追うのは高めた持続性を損なうだけ。市場2番手のシマヤは既存の煮炊き用途を脱した、手軽でだし感が伝わりやすい「だしわざ」メニューを紹介し、市場の奥行きを増す。理研ビタミンは人気動画でだしの基本価値を伝える。ヤマキはエキスや調味料に頼らない、だしパックを量販チャネルで拡大。無添加で味付け自在の付加価値が認められれば、一般量販での可能性が開けそうだ。

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