英国経済に貢献するほど世界で売れるクラフトチョコレート、人気の理由は

英国製のクラフトチョコレートが海外で飛ぶように売れている。見逃せない国際的チョコレートとして脚光を浴びており、予想以上の人気に英国政府も笑いが止まらない。英国経済に貢献するほど売れるクラフトチョコレート。今回は、その背景と商品を紹介する。

主流のチョコレートの売上げは低下

チョコレートといえばスイスやベルギーを想起する人が多いのではないだろうか。ところが近年、英国ではこのような堂々たる諸国に追いつき追い越せの勢いで、クラフトチョコレートが売上げを伸ばしている。

英国では、大人も子供もチョコレートをよく食べる。チョコレートは気軽につまめるスナックとして、また大切な人への贈り物として、伝統的に愛されてきた食べ物である。なぜ今になって、クラフトチョコレートが注目されているのだろうか。

マーケットに並ぶ手作りチョコレート(筆者撮影)

夢中になっているのは、英国人だけではない。海外にも多くのファンがいる。クラフトチョコレート・Webサイトによると、2010年以降、英国のクラフトチョコレートの海外への輸出量は、過去の売上げに対して約84%も増え、2017年の販売総額の6800万ポンドが海外からの購入であった。

主流12社のチョコレートの売上げは、2016年に7800万ポンドも落ちている。その一方で、同年のクラフトチョコレートのHotelchocolat社の売上げは100%を超えた(テレグラフ参照)。

英国では年々、クラフトチョコレート業者が増え、生き残りをかけた市場競争が激しくなっている。選択肢が拡大する中で消費者は質の高いチョコレートを楽しんでいる。

参照サイト:
Craft Chocolate – An adventure into Craft Chocolate making(英語)
Why artisan chocolate makers are thriving and the best bars to buy(英語)

英国で人気のクラフトチョコレートは

ミニ・ランド・コレクション(Land)は25グラムの板チョコ6枚入りのアソートメント。6ヵ国のカカオが味わえる。黒オリーブとシトラス風味のニカリソ・ダーク(カカオ73%)が面白い。

ミニ・ランド・コレクション(写真提供:Land)

100%無糖のブラックチョコレート(Montezuma’s)は商品の質とエシカㇽなビジネスで英国のクラフトチョコレート業界の先端を走るブランド。100%カカオで作られた純粋なブラックチョコレート。100gで601 kcal。リサイクル可能な包装紙を使用。

100%無糖のブラックチョコレート(筆者撮影)

オレンジピール入りブラックチョコレート(Montezuma’s)はオレンジピールとカカオニブ入り超低糖ブラックチョコレート。100gで604 kcal。カカオニブの歯ごたえとオレンジの香りが楽しめる。

オレンジピール入りブラックチョコレート(筆者撮影)

消費者は個々のニーズに合わせた商品を家にいながら簡単に購入

なぜ英国では、クラフトチョコレートが売れるのだろうか。クラフトチョコレートのトレンドが到来する前に、英国人はクラフトビールとコーヒーの流行を楽しんでいた。多くの人々は小規模企業や個人が生産する面白くてユニークな商品を経験している。そのため、ワクワク感があって、自分が欲しかった商品を提供してくれるのがスタートアップや小規模業者であることを知っている。

こうした土壌があるため、英国では規模にかかわらず新規のビジネスでも成功する可能性がある。近年、Chocolatierというキャリアの人気が高まり、転職する者もいる。クラフトチョコレート業者数は、2015年から2016年の1年間に63%も増えているのだ。

英国のスーパーのチョコレートコーナー(筆者撮影)

クラフトチョコレートが消費者を引き付ける理由は、ユニークなフレーバーと質の高さだけではない。ビジネスとして品行方正であることも消費者を引き付ける重要な要素だ。例えばサステナビリティーの問題がある。

英国の消費者は、こうした社会問題にとても敏感であり、材料の原産地や生産プロセスを知ったうえで購入を決定することが多い。この点において、多くのクラフトチョコレート業者は成功していると言えよう。

主流のチョコレートには、パーム油が多く使われていたり、リサイクル不可能な包装紙が使われていたり、エシカルな面で消費者に強くアピールできていない。

またクラフトチョコレートの場合、ヘルシーな選択肢が多く、オンラインが主要販売ルートとなる。そのため消費者は、個々のニーズに合わせた商品を家にいながら簡単に購入できる。健康に関心があり、忙しくて買い物に行く時間の惜しい消費者には便利である。さらに商品のユニークなオリジナリティーが高級ギフトとして喜ばれている。(フードライター ラッド順子)

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