豆腐にトマト味やオリーブ味も イタリアのベジタリアンに大人気

米国や欧州のように、イタリアでも豆腐はベジタリアンに人気の食材である。ところが、最近では普通のスーパーでも目にする機会が増えてきた。それも、私たちが食べているようなシンプルな味のない豆腐ではなく、トマト味やオリーブ味のようなフレーバー豆腐である。実際にどういうものか試してみた。

イタリアでは「大豆のチーズ」とも呼ばれるTofu

豆腐は米国でのマクロビオティックの成功とともに、1960年代にはすでにイタリアに登場していたという。牛乳ではないが大豆のミルク(豆乳)を原料とし、見た目がチーズに似ていることから、イタリアでは「大豆のチーズ」とも呼ばれる。完全に植物性なのに良質なたんぱく質が豊富に含まれているので、ベジタリアンにとって乳製品の代用品として人気ナンバーワンの食品である。

イタリアのトマト味の豆腐を切ったところ。そのまま食べられる

そのためかイタリアでは豆腐はチーズのようでなければならないようである。イタリアで販売されている豆腐は、日本の木綿豆腐よりもずっと硬い。ちょっとやそっとでは崩れない。

一方、絹ごし豆腐のような軟やかい豆腐もあることにはあるが、こちらはリコッタやマスカルポーネチーズなどのフレッシュチーズがイメージである。クリーム状に塗って使うことを前提とした柔らかさなのである。

そのまま食べるのは難しいイタリアの豆腐

豆腐をチーズと比べた場合、色も形も似ているが、味は全く別物である。しかもどういうわけか、イタリアの豆腐は日本のよりもずっと苦味が強い。

日本の湯豆腐のように昆布だしで豆腐をゆで、ほのかな甘みを楽しむという料理は、もともとイタリアにはないし、イタリアの豆腐ではおいしくできるとは思えない。

オーガニックスーパーでは、多くのメーカーの豆腐が並んでいる。

そのまま食べるのは難しいので、トマトなどの味の濃い食材とともに焼いたり、クリーム状にして料理するのが一般的である。しかし、よく考えると日本でも湯豆腐はしょうゆや薬味など味の濃いものと一緒に食す。特に肉豆腐のように動物性たんぱく質とよく合う。

イタリアでは、豆腐は動物性たんぱく質の代わりの食材である。おいしく料理しようと思うと、けっこう調理が難しい。

味付き豆腐は調理の必要がないのも魅力

そこで豆腐をおいしく簡単に食べられる「味付き豆腐」なるものがある。イタリア人に大好きなトマトやオリーブを最初から直接練りこんだ豆腐である。

味がついている豆腐は、それこそチーズのように調理をせずにそのまま前菜に、メーンディッシュに食べられるところが魅力のようである。

オーガニックスーパーには、いろんな種類の味付き豆腐が販売されている。トマト味にオリーブ味、バジル味に燻製豆腐。「燻製豆腐、アーモンドとゴマ風味」は、シッカリした濃いめの味付けとカリッとした歯ごたえが魅力。冷たいままサラダにしたり、フライパンで野菜といためてとある。

さらにはピザ風豆腐の切り身なるものは、豆腐にピーマンやトマト、マッシュルームなどのたくさんの野菜やハーブがピザのようなおいしい香りを添えているとある。フライパンでオイルといためて、簡単な軽食に。またはパスタやサラダとも一緒に食べられると書かれている。

「豆腐 赤」トマト味豆腐のパッケージ

いろいろある中で、人気ナンバーワンと言われる「赤の豆腐」を買ってみた。豆腐が78%でトマトが約6%、オリーブが約7.5%含まれたイタリアの味とある。地中海料理にピッタリで冷たいままパンと一緒に、サラダに。フライパンでサッと炒めて、パスタやごはん、じゃがいもと一緒にと書かれている。

実際に食べてみると、豆腐とは思えない。豆腐が苦手なイタリア人でも抵抗なく食べられる。しかも手軽さがいい。ベジタリアンにとっては、簡単に食べられるファストフードだし、ベジタリアンでなくても、ヘルシーなおやつとして最適である。意外と日本人にも好まれる商品展開であると思われる。(フードライター 鈴木奈保子)