日本食ブームのイタリアで枝豆も人気 おつまみではなく…
日本の枝豆は、日本食ブームにともなってイタリアでも人気を獲得。ところが日本食レストランでの食材というよりは、パスタやサラダ用の新たな豆の種類としてベジタリアンを中心に家庭で使われている。その理由はイタリア産枝豆を生産、販売している大手メーカーが貢献しているところが大きいと思われる。イタリアの枝豆事情を紹介しよう。
枝豆のイタリア語は「EDAMAME」
イタリア料理には、豆を使ったものが多い。市場やスーパーでも、日常的に多くの種類の豆が販売されている。小豆や大豆も随分前からイタリアのベジタリアンには有名で、オーガニックのスーパーなどでは普通に手に入れることができるくらいである。
そのため日本食レストランの前菜で提供されるような枝豆も、日本食ブームに伴って比較的容易にイタリア人に受け入れられた。
枝豆のイタリア語での名前も、日本語そのままに「EDAMAME」、または大豆を意味するSOIA(ソイア)とともに「SOIA EDAMAME」である。
イタリアの野菜会社が栽培し売上げを伸ばす
イタリアで枝豆が受け入れられた背景には、日本食ブームももちろんだが、イタリア最大手の野菜会社による大きな貢献がある。まだイタリアで枝豆の知名度が低かったころ、イタリアでの栽培を始めたのである。
栄養が豊富でおいしく、調理も簡単なところに目をつけたという。イノベーションと変化が必要であるという理念のもと、女性をターゲットに、2014年自社産の冷凍枝豆の販売をスタートしたのである。
この枝豆が唯一イタリアで栽培されたものであり、遺伝子組み換えがないということを、はっきりとパッケージに明記。もとは遠い外国のものであっても、イタリアで栽培された安全な食品は、消費者に安心感を与えたのである。比較的値段が高いにもかかわらず、売上げを順調に伸ばしている。
現在、枝豆はイタリア北部の肥沃な250ヘクタールもの農地で栽培されていて、そのうち35ヘクタールがオーガニック栽培されている。
参考サイト:orogel(イタリア語)
グリーンピースのような感覚でパスタやサラダに
大手企業のプロモーションのもとでイタリアの家庭に登場した枝豆は、グリーンピースのような感覚で新しい豆の一種として使われている。パスタやリゾットの具としてはもちろんのこと、スープや肉や魚の付け合わせである。
日本のようなビールのお供の付きだしというのは、日本料理レストラン以外には見かけない。イタリアでは食事の前に食前酒を前菜と一緒に楽しむ習慣がある。前菜と言っても、ポテトチップスやピーナッツ、オリーブの実という簡単なものの場合も多いが、枝豆はみかけない。
イタリアのサイトで「枝豆のさやを指で押して豆を取り出すのは、日本人にとってストレス解消として好まれている」との記述を見かけた。イタリア人には食べ物を手で触る習慣は、ほとんどないので、日本食レストランでさやとともに供される枝豆は不思議なのであろう。
また、一度口に入れたものを出すのはマナー違反である。枝豆のさやごと口に入れて、豆だけ食べて、さやを口から出すという行為は好ましくない。さやから出して提供したところで、ゆでた枝豆の豆はオリーブの実のようにピックを刺すには硬すぎるのである。
そうなるとおつまみではなく、グリーンピースのように料理に使うほうが、イタリアの食卓事情にはしっくりくるのである。そのため、さやなしでむいた豆を販売している。
枝豆のイタリアにおける普及の仕方は、食に関心が高く、自国の食文化や食品に誇りを持っている国ならではの展開なのであろう。(フードライター 鈴木奈保子)