3密回避の新ルールでイタリアのレストランも奮闘

イタリア人のライフスタイルにおいて、レストランでの食事は大切な要素。特に夏のバカンスのシーズンには、遅い夏の夜を何時間もかけて、おしゃべりしながら家族や友人と外食を楽しむのである。欧州の中でも新型コロナウイルスの被害がひどかったイタリアは、ロックダウン解除の6月以降、これまでどおり安心してレストランを楽しむための新ルールが決められた。厳しい状況下、工夫を凝らして対応しているイタリアのレストラン事情を紹介しよう。

レストラン再開を求めデモも

欧州の中でいち早くロックダウンをしたイタリアでは、約3ヵ月近くも予約による配達のみの営業で、本来の意味でのレストランの営業は完全に禁止されていた。しかも、レストランでの3密を政府が懸念し、他の業種に比べて再開の日程もなかなか決まらず、長引く休業で困難を極めたレストランが多かった。

そのため、レストランのオーナーたちが再開を求めるデモを行い、紆余曲折を経てようやく営業再開が決定した。ただし、新型コロナウイルスの再流行を防ぐため、いくつかの新ルールが決められた。

地面に描かれた矢印で、店内に入る人と出る人を区別。奥のウエイターはマスクと手袋着用で接客中

3ヵ月の休業に加え、市民の新型コロナウイルスへの恐怖による外出や外食の減少、会社員のランチ客の減少、さらに観光客の減少など、イタリアのレストランにとっても、まだまだ厳しい状況が続いている。

ローマのオフィス街エウル地区のあるレストランオーナーも新聞社のインタビューに「昨年同時期で90~95%も売上げが減少している」と答えていたほどである。そんな中で、イタリアのレストランも新ルールに従い奮闘している。

食事中以外はマスク着用が義務付け

新型コロナ対策で政府によって義務付けられたレストランの新ルールは、まず「マスクの着用」だ。ウエイター、ウエイトレスはもちろん、レストラン内を歩く人は、すべてマスクの着用が義務付けられている。つまり、客側も入店時と出店時、加えてトイレに行くために席を立つ際は、マスクを着用しなければならない。なお食事中、テーブルでは外してもよい。

そのかわり、各テーブル間は最低1mの距離を保つこと義務付けられた。実は当初は2m、または4m離すべきだという意見もあったが、最終的に1mで決着をみた。

消毒液だけではなく、使い捨てのビニール手袋(下部)も設置しているレストラン

まずはテラス席のみ再開という当初の政府の案も、換気を行うという条件でレストラン内での営業も可能になった。

このほか、消毒液の店内設置が義務付けられたことと、ビュッフェスタイルの食事の提供禁止が、安全対策として取られることになった。

メニューはカラーコピー

ロックダウンが解除されてからの実際のイタリアのレストランの様子を報告しよう。

メニューに関してはスマートフォンなどへのアプリ対応が推奨され、ミシュランの星付きレストランなどで導入している。

また、筆者が実際に足を運んだ庶民的なピッツェリアでは、アプリではなく、メニューのカラーコピーという対応を行っていた。毎回、新しいものへ取り換えることにより、ウイルスの蔓延を防ぐというアイデアである。レストランオーナーはシステム開発などに不慣れな場合が多いため、際立った対応であると思われた。

カラーコピーしたメニュー

また、規模が大きなピッツェリアなので、入口と出口を分け、観客がすれ違うことのない工夫までしていた。

また、あるレストランでは、入店時に熱を測られたこともあった。これも義務ではなく、あくまでも推奨であるが、37.5度を超える発熱のある人の入店を制限するという目的である。このレストランでは、従業員が手袋をしてサービスしてくれるほど、注意を払っていた。

ドアや小窓も開け放して換気に努めるレストラン。テーブルも間隔を離している

しかしながらイタリアらしく、各レストランによって対応が違っているところが国民性を表している。ただ共通して、どのレストランでも消毒液を設置し、店内をきれいに消毒し、レストランの従業員も全員マスクを着用していたので安心して食事を楽しむことができた。

現時点では、観光客も少なく、客の入りが通常より少ないので、新ルールに従っての営業も比較的容易だと思われる。しかし、いつまでこうした対応を続けていかなければならないのか先が見えないだけに、レストラン側にとってのアフターコロナはまさにウィズコロナで苦難が続いている。(フードライター 鈴木奈保子)