食肉・食肉加工品特集

◆食肉・食肉加工品特集:ハムソー苦戦 調理加工品は伸長傾向

乳肉・油脂 2019.09.25 11946号 10面

食肉加工品業界を取り巻く環境は厳しく、量販店においては定番商品中心の展開が続いており、新商品の導入が難しくなっている。ハム・ソーセージについては、既存主力商品のシェア争いが激しく、単価が下げ止まり傾向となっている。

また、物流コスト・人件費増などの経費負担が大きくなり、収益性が悪化している。その一方で、簡便ニーズが高まる中、ハンバーグや惣菜類などの調理加工品は、伸長傾向にある。

18年は前年同様その他ハムに分類されるサラダチキンの大幅伸長により、ロースハムの落ち込み分をカバーし、18年(1~12月)の生産数量は前年比80t増の55万4342tとわずかに前年を上回った。PB商品は若干縮小傾向となったが、差別化商品として、小売側からの要請が高まっている、留め型商品の開発強化がさらに進んだ。

19年上期はベーコン類が微増となっているが、主力のハム類・ソーセージ類が、前年割れとなっており、下期も苦戦が続きそうだ。現状、弁当・即食・簡便商品としてのハム・ソーセージの需要は底堅いが、大幅な伸長は望みがたく、新商品については、伸長カテゴリーである調理加工品を中心に開発を進めており、メーカー各社は調理加工品のラインアップ拡大を図る方針を打ち出している。(廣瀬嘉一)

●今年度前半の市場概況 ウインナー不振影響

今年1~7月累計の食肉加工品生産量は、次の通り(カッコ内前年比)。

▽ハム6万2108t(0.8%減)▽プレス1万4049t(9.4%減)▽ベーコン5万5829t(0.3%増)▽ソーセージ18万0278t(1.7%減)▽総合計31万2265t(1.6%減)

ベーコン以外のカテゴリーは前年実績を下回っている。主力のウインナーソーセージの不振が大きく影響している。

その他ハムに分類されるサラダチキンが引き続き伸長しているが、伸びは鈍くなっている。

●有力各社の業況 既存主力の競合激化 単価の上がる気配なし

大手ハム・ソーセージメーカー4社の20年3月期第1四半期(4月~6月)の業績は別表の通り(日本ハムは米国会計基準採用)。

ハム・ソーセージについては、各社の主力ブランドは比較的堅調だが、量販店の売場は、定番商品中心の展開が続いており、既存主力商品の競合が激化している。消費者の価格志向は依然根強く、量販店はEDLPの推進やPB商品の拡販、主力NB商品の特売など、価格訴求を強めており、単価が上がる気配はない。全体のパイが縮小傾向にある中で、各社がシェアを奪い合う形となっている。

消費者の簡便志向に対応した調理加工食品は、チキン関連品やピザ、ハンバーグ類、惣菜関連商品、レンジアップ商品などが順調に伸長している。マーケットの拡大が見込めることから、各社ともに下期も同カテゴリーの商品開発に力を入れている。

食肉事業については、相場変動に左右されバラツキが生じるが、輸入牛肉・鶏肉の伸長に売上げは堅調だが、国産豚肉・鶏肉の動きが鈍く、物流コスト増もあり、収益面では厳しくなっている。

4社の合計金額を前年と比較して見ると次の通りとなる(カッコ内は前年数字)。

▽売上高6781億7500万円(6724億2300万円)、前年比0.9%増▽営業利益208億0500万円(219億0400万円)、同5.0%減▽経常利益229億5200万円(240億8100万円)、同4.7%減▽四半期純利益164億6700万円(171億0500万円)、同3.7%減

ハム・ソーセージ部門の大手3社、日本ハム、伊藤ハム米久ホールディングス、丸大食品の同部門売上合計金額は914億6000万円(909億3700万円)で同0.6%増。調理加工食品の3社合計は売上高1123億3600万円(1090億0500万円)で同3.1%増、食肉は3285億8600万円(3330億0800万円)で同1.3%減となっている。

日本ハムは、加工事業が収益改善したものの微減収、主力の食肉事業は販売は伸長したが、物流コストなどの経費増で増収減益にとどまった。

伊藤ハム米久ホールディングスは、加工食品事業が好調に推移したが、物流コスト増で減益。食肉事業が伸長し、海外事業の収益も改善したことで全体を押し上げ増収増益で着地した。

プリマハムは、加工食品事業がハム・ソーセージの苦戦で前年を下回ったが、食肉事業の拡販で増収。利益面については、食肉事業の国産豚肉・鶏肉の需要低迷が響き減益となった。

丸大食品は、調理加工食品が2桁増と大きく伸長し、業績全体をけん引したことで増収増益となった。

●各社キャンペーン 市場活性化へ多彩に

ハム・ソーセージメーカー各社は、市場活性化に向け、キャンペーンを展開している。

伊藤ハムは、10月9日を“熟成の日”につなげ「熟成ウインナーThe GRANNDアルトバイエルンの日」として、17年6月20日一般社団法人日本記念日協会に認定されたことを受け、引き続きアルトバイエルンの最大の特徴である「“熟成”=おいしい」を伝えるため、同商品を対象に、「熟成キャンペーン」(11月30日当日消印有効)を実施している。

対象商品のNo.1マークを各コース必要枚数を集めて応募すると、「雪室熟成和牛サーロインステーキ用」「九州 熟成ロースハム」「雪室熟成和牛すきやき用」が抽選で各200人に当たる。

また、同社は予約の取れない和食料理店東京・恵比寿「賛否両論」店主、笠原将弘氏監修のギフトセットが当たる「醇」もらってうれしいキャンペーン(11月15日当日消印有効)も展開している。

丸大食品は同社全商品対象に、レコルトラクレット&フォンデュメーカーソルトやブルーツーススピーカー、オリジナルQUOカードが当たる「わんぱくハロウィンワンダーランドキャンペーン」(10月31日当日消印有効)を実施している。

●小売・畜産動向 全般的に低調な推移

ここ数年、小売の売上げをけん引してきた畜産が、今期は低調に推移している。月ごとバラツキがあるが、全般的に苦戦の傾向だ。

国内外で発生している疾病の影響もあるのか特に豚肉の動きが鈍い。鶏肉は相場安で比較的安定している。牛は輸入牛肉が伸長している。

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