即席麺特集
◆即席麺特集:5年連続成長へ順調なスタート 値上げの浸透が課題
即席麺市場が順調なスタートを切っている。19年度(4~5月)のJAS受検数量(ドライタイプ)が前年比7.7%増となり、初動は好調に推移しているといえる。ただ、6月1日から各社価格改定を実施。小売の店頭価格が値上がりし始めると、スタート時の勢いがやや鈍化してきているようだ。18年度まで4年連続で成長している即席麺市場なだけに、値上げや夏需を乗り越え、5年連続の成長を目指していきたい。(久保喜寛)
●18年度総生産量、初の57億食を突破
日本即席食品工業協会調べによる2018年度(18年4月~19年3月)の即席麺類総生産量は、57億2349.8万食(前年比0.6%増)とわずかながら増加するとともに、初めて57億食を突破した。2015年以降4年連続で過去最高数量を更新したことになり、即席麺市場が日本の社会環境の中で求められている結果といえる。このうち袋麺(ドライタイプ)が16億4210万食(同0.9%増)、カップ麺(同)が39億2587.6万食(同0.5%増)、袋麺(生タイプ)1億2010.7万食(同0.0%)、カップ麺(生タイプ)3541.5万食(同2.5%増)となっている。生産比率(ドライタイプ・生タイプ合計)は、袋麺が30.8%(17年度30.7%)、カップ麺が69.2%(同69.3%)と、前年度との比率に変化はなかった。
18年度の即席麺類総生産額(出荷額ベース)は、袋麺が1299億5600万円(同0.9%増)、カップ麺が4633億9600万円(同1.2%増)の合計5933億5300万円(同1.1%増)となった。出荷額ベースの比率は袋麺が21.9%(17年度21.9%)に対し、カップ麺が78.1%(同78.1%)とこちらも変化が見られなかった。
18年度の総生産量のうちJAS受検数量は、46億8747.2万食(同0.5%増)、非JAS品の生産量は8億8050.3万食(同1.1%増)で、JAS比率は84.2%(17年度84.3%)だった。また、生タイプ麺の総生産量については、袋麺が1億2010.7万食(同0.0%)、カップ麺が3541.5万食(同2.5%増)の合計1億5552.2万食(同0.6%増)で、即席麺類全体の中に占める生タイプ麺の生産比率は2.7%(17年度2.7%)とこちらも動きはみられなかった。
JAS製品の種類別(フレーバー・タイプ別)構成比は、図2、3の通り。袋麺では油処理麺(フライ麺)への需要回帰、味噌味やとんこつが増加した。一方、ノンフライ麺は前年より2.4ポイント減少している。なお、ノンフライ麺の生産比率は、袋麺の中華タイプが総需に対して23.4%(17年度25.8%)、和風タイプも加えると全体の23.7%(同26.1%)となっている。一方、カップ麺ではフライ麺が醤油味、塩味、焼そばなど全体的にわずかながら伸びて、ノンフライが0.9ポイント下がっている。ノンフライの中華タイプが総需要に対して9.0%(同9.9%)、和風タイプを加えると全体の9.3%(同10.2%)とこちらも低下している。
19年度の4~5月のJAS受検数量(ドライタイプ)は、袋麺が2億3959.8万食(同12.1%増)、カップ麺が5億7622.7万食(同5.9%増)の合計8億1582.5万食(同7.7%増)と伸長している。これに生タイプ33.2万食(同7.0%減)を加えた合計では、8億1615.7万食(同7.7%増)で推移している。月別推移を見ると、4月が4億2249.1万食(同6.3%増)、5月が3億9366.4万食(同9.2%増)と順調な2ヵ月となっている。4月は10連休を見込んで仮需が増えた。5月はその仮需の在庫が前半に残っていたものの、後半は売上げを伸ばしていったようだ。また、各社6月1日の出荷分から値上げをスタートしているが、5月は値上げ前の駆け込み需要は予想ほど大きくなかったという。
ちなみに1~5月累計ベースでは、袋麺が5億6796.5万食(同2.4%増)、カップ麺が13億6616.1万食(同0.2%増)の合計19億3508.2万食(同0.8%増)と暦年ベースでもわずかながら伸びている。
今後の見通しとしては、6月1日の価格改定が大手流通を中心に導入が始まっているため、まずは値上げの浸透が課題となってくる。10月に消費増税が行われる見込みで、それまでに価格改定後の店頭価格を標準にしていく必要がある。そのため、各社、販促活動や特売といったものをできるだけ抑え、値上げを着実に行っていく考えだ。
値上げ後の6月の販売状況は、動きが鈍いようで「新しい価格が消費者に受け入れられるには、2ヵ月ぐらいかかるかもしれない」(メーカー関係者)ようだ。
このような状況下、メーカー各社は、需要喚起に向けた新商品発売やリニューアルを行っている。夏に向けて、外食でもトレンドとなっている辛さ・しびれといったフレーバーの商品を投入するとともに、気温上昇に伴い、スープタイプが敬遠されることを見越して、焼そばや油そば、汁なし担々麺といった汁なしに加え、即席麺でも冷やしの提案など、バラエティー豊かに商品を揃えている。魅力的な商品を提供していくことで盛夏シーズンを乗り切り、秋冬の本格需要期での販売増につなげていきたい。