ミネラルウオーター・炭酸水特集

◆ミネラルウオーター・炭酸水特集:伸長続く“いのちの水”、新価値訴求を加速

飲料 2019.05.31 11885号 05面
大自然が育む悠久な水は、限りある資源でもある

大自然が育む悠久な水は、限りある資源でもある

天然水×緑茶「サントリー天然水 GREENTEA」など、カテゴリーを超える提案は進化を続ける

天然水×緑茶「サントリー天然水 GREENTEA」など、カテゴリーを超える提案は進化を続ける

ラベルレス商品「アサヒ おいしい天然水ラベルレスボトル」など、環境配慮へのイノベーションも進む

ラベルレス商品「アサヒ おいしい天然水ラベルレスボトル」など、環境配慮へのイノベーションも進む

ECチャネル特有の価値を生かした提案となる「キリンのやわらか天然水」。そのデザインや容器特性が消費者からの支持を集めている

ECチャネル特有の価値を生かした提案となる「キリンのやわらか天然水」。そのデザインや容器特性が消費者からの支持を集めている

◇国産・輸入とも前年超え 環境配慮へ新価値訴求加速

ミネラルウオーター(MW)市場は、消費者の高まる自然かつ健康志向を背景に安定した成長を継続している。18年も数量400万9579kl(前年比2.0%増)、金額3111億6800万円(同0.2%増)と成長を果たし(いずれも国内生産プラス輸入・日本ミネラルウオーター協会調べ)6年連続で前年実績を更新している。同市場の成長とともに、「MW」を取り巻く状況も変化してきた。度重なる災害を通して、「スマートストック」など「備蓄の大切さ」を人々は痛感してきた。まさに「いのちの水」だ。

また、近年の伸長をけん引してきた「フレーバーウオーター」、ここ数年伸長を継続する「炭酸水」など、「MW」本体の「安全・安心」かつ「自然」な健康価値提案に加え、新たな「MW」の価値を提案する取組みも続く。自然が育む水源の恵みとなる「MW」の特性から、水源涵養(かんよう)活動や環境保護、最軽量化や再利用を目指す容器のイノベーションなど、「社会性」を有する製品として、MWの価値や存在は広がりを見せている。新たな時代の「令和」で、MWや炭酸水はどのような存在に進化を続けていくのだろうか。(本吉卓也)

●「サントリー天然水」がNo.1に

よく言われることだが、ほんの三十数年ぐらい前の「平成」初期までは、「水」や「お茶」はタダで飲めるものだった。それが、度重なる災害や猛暑による水不足などを経験するうちに、備蓄などの防災意識の高まりから「水は購入するもの」という消費者意識の転換が起こる。東日本大震災以降の高まる備蓄需要などから、飲用用途に加え、調理や生活用水など、「いのちの水」としての価値も再認識されている。

18年、飲料総市場でのナンバーワンブランドに「サントリー天然水」(サントリー食品インターナショナル)が就くなど、MWブランドの躍進は続く。

「サントリー天然水」ブランドは、18年の年間販売数量が、同ブランド最高となる1億1730万ケース(前年比9%増)を記録、国内清涼飲料市場でナンバーワンとなった。「南アルプス」「阿蘇」「奥大山」の水源にこだわった清らかなおいしさや徹底した品質管理による安全・安心の提供という価値が支持されるとともに、「天然水の森プロジェクト」など採水地を中心とした地域との取組みを推進しブランド自体の価値強化に注力してきた。加えて、サブカテゴリー創造による新規ユーザー獲得も奏功し、伸長を継続している。

●踊り場のフレーバーウオーター

近年の躍進をけん引してきたフレーバーウオーターは「現在、踊り場に来ているのではないか」という各メーカーの見解は共通しているが、その中で、日本コカ・コーラ社は「い・ろ・は・す」初の無糖フレーバーウオーター「い・ろ・は・す 天然水にれもん」(555mlPET)を投入している。消費者の高まる健康志向に応えた形だ。富重豪マーケティング本部ウォーターグループグループマネジャーは「『い・ろ・は・す 天然水』を第1の波、くだものフレーバーウオーターを第2の波とするならば、第3の波として“無糖フレーバーウオーター”を提案する。“無糖フレーバー”という新たなセグメントを創造する」と語る。

●天然水とのクロスオーバー活発

今春、サントリー食品インターナショナルの「サントリー天然水」から新たな提案がなされた。非急須世代に向けた「サントリー天然水 GREENTEA」だ。厳選された水源がもたらす同ブランドの根本価値「清冽(せいれつ)」「自然」「安全・安心」エクィティ(資産や価値)を生かしながら、新たなカテゴリーの創造に取り組む同ブランド初の緑茶とクロスオーバーするアイテムとなる。“清冽”な「天然水」と京都福寿園の茶匠が厳選した国産茶葉を使用した、ストレスフリーでゴクゴク飲める新感覚の緑茶(GREENTEA)だ。20~30代を中心とするRTD緑茶を原体験とする “非・急須茶世代”が好む“すっきりとした味わい”やインサイトに対応した提案を行い、新規ユーザーを獲得し、同ブランドのすそ野を拡大していく。

炭酸水でも、同様な提案が行われている。08年から11年連続で伸長を続けるアサヒ飲料の炭酸水「ウィルキンソン」ブランドは、18年、前年比11.8%増の2225万ケースの販売数量を記録し、この上半期も好調に推移している。4月には20代女性をターゲットに刺激の強い炭酸と紅茶フレーバーを合わせた「ウィルキンソン タンサンティー」を投入している。「紅茶のコクと香り」「すっきりした後味」「ウィルキンソンならではの強い刺激」が楽しめる炭酸水となる。「食事との相性が良く、一緒に楽しめそう」という女性の炭酸水に対するイメージに対応し食事との相性を考え、口の中がさっぱりするような味わいに仕上げている。

また、「MW」は厳選された水源から採取することから水源保護や水源の涵養活動など、社会性を有する製品といわれており、この春から「熱中症対策」を提案する「ヨーグリーナ&サントリー天然水」など、社会課題解決へ向けた取組みも活発化している。

●輸入水としての価値を生かして

減少傾向が続いていた輸入水だが、18年は輸入量35万1986kl(前年比3.7%増)、金額は181億7000万円(同1.8%増)と前年を上回った。「クールなMW」という価値が若年層の支持を集め、700mlPETが大幅伸長している「クリスタルガイザー」(大塚食品)や500ml以下の330mlなどの「小容量」かつプレミアム品質訴求に注力する「エビアン」(伊藤園・伊藤忠ミネラルウォーターズ)、さまざまな知見を高めながら、好調なECチャネル展開に取り組む「ボルヴィック」(キリンビバレッジ)など、採水地や社会インフラとしての役割など、輸入水が有する独自価値を訴求し、さらなる伸長を目指す。

●持続可能社会に向け容器開発も

アサヒ飲料がEC専用商品として展開するロールラベルを付けない“ラベルレス商品”「アサヒ おいしい水 天然水 ラベルレスボトル」(600ml、1.9L)、世界初の植物由来原料を100%使用したキャップを採用した「サントリー 阿蘇の天然水」、2LPETボトルの国内最軽量を更新する「キリン アルカリイオンの水」、「い・ろ・は・す 天然水」でパッケージ製造にかかる環境負荷を低減させるフレキソ印刷を導入するコカ・コーラシステムなど、環境に配慮した容器設計や開発が進む。

この辺りも“社会性を有する製品”といわれるゆえんでもあるのだろう。

●ECチャネルで新たな提案進む

ECチャネルの大きな特徴として、ユーザーが比較検討しながら、商品を購入できるという点が挙げられる。そのため、価格ではなく、さらに価値に重きを置いたユーザーへの提案がより必要になるといえるだろう。キリンビバレッジが通販限定商品として提案する「キリンのやわらか天然水」(310ml)が好調だという。“飲み切れるサイズ”“小さなカバンにも入る”という使い勝手の良さや“おしゃれなデザイン”“企業ICを極力小さくしたデザイン”から、来客向けや会議でのテーブルウオーターとして、支持を高めているという。「MW」の新たな価値を提案する例として、今後の展開を見守っていきたい。

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