こうや豆腐特集

こうや豆腐特集:免疫力高める効果 旭松食品など、産学連携研究

農産加工 2021.06.07 12240号 05面

 こうや豆腐が豊富に含む大豆由来のレジスタントタンパク質(SRP)に免疫力を高める効果があると旭松食品と信州大学農学部が4月に発表した。

 両者の共同研究によると、こうや豆腐を原料に調整したSRPをマウスの脾臓細胞に添加する実験の結果、SRPの濃度が高いほど抗ウイルス活性を持つタンパク質、インターフェロン-γの産生量が増えることが分かった。この研究論文は、学術雑誌「薬理と治療」に掲載されている。

 こうや豆腐普及委員会はこれまで、旭松食品研究所を中心とした産学連携の研究に基づき、SRPの働きを中心としたこうや豆腐の健康機能性を、数多く発表してきた。食後血糖値の上昇抑制や脂質代謝の促進、血中コレステロールの調整機能、褥瘡(じょくそう)の治癒を促す可能性など、得られた成果は多岐にわたる。

 木下委員長は「基礎研究を定期的に行い、そこで得たエビデンスを分かりやすく消費者に発信していく。この積み重ねで、こうや豆腐が持つ健康機能性の認知度は着実に上がっている」と述べる一方、「情報発信やPRの仕方」を課題に挙げる。

 「食やメニュー、レシピなどが数多く取り上げられているインターネットの動画配信・共有サービスは、在宅時間が伸びたことで消費者の視聴機会を増やしている。“ウィズ・コロナ”のPR手法として、こうしたツールの活用も考えていきたい」とする。

 ●大豆価格急上昇、価値再構築が急務

 コロナ禍のこうや豆腐市場はほかの食品と同様、「業務用はメタメタの状態、家庭用は堅調」(木下委員長)な売れ行きだ。ただ家庭用もこうや豆腐の機能性などがTV番組で取り上げられたことで起こった18~19年のブーム的な需要伸長の反動減で製造・販売実績は前年を割り込んでいる。

 国の緊急事態宣言が初めて発出された昨春は、保存性に優れた乾物ならではの特需に沸いたが「食べ方、メニューが『含め煮』などの定番からいま一歩、広がらない」こともあり、ストック需要からの消費拡大という理想的なサイクルは描けなかった。

 こうした中、原料大豆の国際価格が昨年後半から急激にはね上がり、業界は今後の動向に危機感を募らせている。

 同普及委によると、5月7日のシカゴ商品取引所・大豆価格は1ブッシェル(容量35L、約27.2kg)16.2ドルで、2012年9月4日に記録した過去最高価格、17.7ドルに迫る勢いだ。

 シカゴ大豆相場は18年後半以降、8~9ドルで推移してきたが、20年夏ごろから急上昇。9月には10ドルを突破し、年明けには15ドルを超えた。

 高騰の背景について同普及委は、「20年後半から南米の乾燥懸念が強まったほか、主に油用とみられる中国の輸入需要が増加したことから、大豆やトウモロコシを中心に価格が急上昇している」と説明する。また、「インフレ懸念が強まるアメリカでは、金融市場でダブついた金が穀物相場に流れている」(登内英雄・登喜和冷凍食品社長)との見方もある。

 今後の見通しは、「アメリカの金融引き締めが進めば、10ドル台に落ち着くのでは」(登内社長)、「投機筋の動きだけでなく、中国の油需要など実需も反映している。ここ15年ほどの上がっても落ちにくい相場の動きを見ると、12ドルに戻れば御の字」(木下龍夫・信濃雪社長)。

 ただ両者とも「いつになるかは、まったくわからない」(登内社長)、「しばらくかかりそう」(木下社長)と、半ば諦め顔で先行きに懸念を強めている。

 木下委員長は、「企業努力で吸収できるレベルではない上がり幅」と指摘し、「健康機能性を中心に、価格転嫁に見合う付加価値を早急に構築していきたい」と述べている。

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