国産・日本ワイン特集

◆国産・日本ワイン特集:日本ワイン、存在感増す ユーザーの裾野広げる原動力に

酒類 特集 2019.06.05 11888号 08面
第10回ワイン&グルメジャパンの会場

第10回ワイン&グルメジャパンの会場

東急ストア武蔵小杉店のワイン売場

東急ストア武蔵小杉店のワイン売場

日本ワイン祭りでアピール

日本ワイン祭りでアピール

国産ブドウだけを使い国内で造る「日本ワイン」の存在感が増している。18年施行の新表示ルールを機に、小売店では売場構築が進む。国内ワイン市場が伸び悩む中、ワインユーザーの裾野を広げる原動力として期待が大きい。一方、10月の消費増税と20年のワイン増税により、消費が落ち込みかねないと身構える声も多い。(岡朋弘)

18年の国産ワインの課税数量は、前年比3%増の約12万klとなった。輸入ワインは約7%減となり、ワイン計では4%減と前年を割った。19年1~4月の国産市場は2%減程度で推移したもよう。年間では前年並みで推移しそうだ。

19年2月発効の日本と欧州連合の経済連携協定(EPA)は、海外原料を使った国内製造ワインにとって逆風だったとみられる。

日欧EPAを機に、関税が撤廃された欧州産の取り扱いが小売店頭で増えた半面、国内製造ワインの棚が減少傾向となった。ワインユーザーの間口が広がらなければ、輸入ワインが増加しても国産ワインが縮小し総市場は伸びない。

酸化防止剤無添加やポリフェノールといった機能性価値を持った国内製造品は、輸入ワインにはない価値として受け入れられ需要が底堅い。酒類各社は、国内製造の主軸として提案を強化する方針だ。

日本ワインの出荷数量は、17年に約173万ケース(720ml×12本換算)となり、14年と比べて約7%増えた。18年の日本ワイン市場は好調に推移したもよう。過度な成長は欠品リスクを招くため、年5~6%のペースで成長するのが望ましいとの意見もある。

国内ワイナリー数は300場を突破した。日本ワイン市場は、日本ワイン人気の高まりを受け裾野が拡大し、1人当たりの飲用量も拡大したもよう。料飲店での取り扱いや小売店での露出が増えた。

日本ワインは繊細な日本の風土を表現したワインとして海外の品評会でも高い評価を獲得するなど、品質向上が進んでいる。海外産ワインと比べ、物語性を理解しやすく、ブランドに親しみを感じやすいことが、日本の消費者に受け入れられている要因と考えられる。

踊り場と指摘される国内ワイン市場だが、メルシャンの長林道生社長は、日本ワインを「市場活性化の最大の鍵」と位置付ける。ワインの多様さを打ち出す一つの切り口として、ワイン市場全体の活性化につなげていきたい考え。

日本ワインのシェアは国内ワイン市場の約4%といまだ小さいが、飲酒人口減少や高齢化により国内酒類市場が縮小する中で、中長期的に伸長する成長カテゴリーと期待される。

同社の調べでは、直近1年間に日本ワインを飲んだことがある人は、約7割にも上り、20~30代の飲用経験は5割を超えるなど若者にも飲まれていることがわかった。

増産に向けた原料ブドウの調達力向上も各社共通の課題だ。大手は増産体制を構築するため、自社管理畑の拡大に相次ぎ乗り出している。ワイン生産者も増加し、既存のブドウ農家から数量を増やしてもらうのが難しい状況だという。

ブドウ苗木の不足が指摘される中で、メルシャンの勝野泰朗・桔梗ヶ原ワイナリー長は、「苗木作りには時間がかかるため長期的な計画が必要だ。畑の拡大に伴い突発的に苗木を求める生産者が苗木を買えない状況が背景にあるのでは」と指摘する。

近年の日本ワインブームで輸入苗木の需要量が増え、国の検査ほ場の受け入れ可能本数を上回る状況が続くようになった。国は18年1月から条件を満たした民間農地でも隔離検疫ができるようにし、輸入苗木の受け入れ拡大を急いでいる。

日本ワインに対する消費者の理解・認知度アップも課題だ。18年10月にワインの新表示ルールがスタートし、日本ワインに限りラベルに「日本ワイン」と記載できるようになった。しかし、いまだ海外原料を使った国内製造ワインと日本ワインの違いが消費者に伝わっていないと指摘する声が多い。食品スーパーなどの小売も日本ワイン専用の棚を展開する店が増えているが、今後はより一層の情報発信が求められる。

日本ワインを除く国内製造は、表ラベルに「濃縮果汁使用」「輸入ワイン使用」などの表示が義務付けられた。消費者からは「原産国はどこなのか」といった問い合わせが以前と比べ増えたという声もある。

9月開催のラグビーワールドカップや東京2020オリンピック・パラリンピックに向け、インバウンド(訪日外国人客)需要を取り込む動きが活発化する。アサヒビールは五輪公式ワインの店頭販促を強化。キッコーマンは、今春から金箔入りのスパークリングワインを首都圏限定で展開する。サッポロビールは東京・銀座のワインバーを活用し、インバウンドを取り込む。

世界的に認められている認証の地理的表示(GI)制度を活用した提案も重要だ。GI「山梨」「北海道」の2産地が日本ワイン市場を先導することで、訪日客に対し他産地への興味・関心を喚起することができる。

●消費増税ワイン増税、消費落ち込みを懸念

20年の税率改正では、ワインが720ml当たりで現行の税額58円から約7円上がり65円となる。日本ワインのような高単価品は増税の影響が小さいとみられる一方で、1本500円程度の低価格品は大きな影響がありそうだ。

19年10月の消費税増税で、酒類と外食は現行の税率8%から10%に引き上げられる。飲食店の値上げにつながる可能性があり、客数減が懸念される。業務用のワイン消費にマイナス影響を与える恐れがあると警戒感を示すメーカーもある。

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