鏡もち特集
◆鏡もち特集:新生活様式で初の正月 元来の日本文化復権へ
鏡もち市場は、年末商戦が本格スタートした。新しい生活様式となった中で初めての正月を迎える。来年の干支(えと)は「丑(うし)」。主力となっている小型商品の中でも、丑のキャラクター付き商品でかわいさや豪華さにこだわった個性あふれる商品が出揃った。消費は大型よりも小型化傾向にあり、上下一体型より個包装もち入りのトレンドは続く。市場全体では大きな伸びはなさそうだが、一方で今シーズンは、感染拡大予防の観点から家族で過ごす正月が増え、鏡もちを飾る日本古来の正月文化が復権することも予想されている。メーカーはもちろん、小売業にとっても売場を締めくくる大きなヤマ場となる鏡もち商戦に期待が高まる。(山本大介)
●トレンドは小型化・個包装
全国餅工業協同組合調べによる19年度(19年4月~20年3月)の鏡もち生産量は、前年比9.7%減の3903tだった。近年では、12~13年度に6000t台だったものが、16年度に5000t台を下回り、17~18年度は2年連続で4300t台だったが、ついに19年度は4000t台を割り込んだ。
生産量減少の大きな要因の一つは、ダウンサイジングが年々進んでいるため。特に平成の三十余年で鏡もち型の成形容器に充填(じゅうてん)する上下一体型から、個包装の小もち入りへ徐々にシフト。サトウ食品は、一体型をなくし、すべて個包装の小もち入り商品にラインアップを変えた。令和の時代になっても個包装入りの需要が強まっており、今秋でも個包装小もち入りの新商品が多くなっている。ただ、小もち入りの“使いやすさ重視派”が増えてはいるものの、大型・中型を含めた上下一体型の“本格重視派”も一定数はいるため、両方のバランスは重要といえる。
こうした動きは、時代の変化が色濃く反映している。住環境の変化で多くの住居に床の間がなくなり、ブラウン管TVの上に大きな鏡もちを飾っていた家庭が薄型TVに変わるなど飾る場所が減少、または飾り場所を選ばない小型商品が選ばれるようになった。ライフスタイルも、年末に国内外に旅行に出かけるなど様変わり。世帯構成の変化もあって、鏡もちを飾り年神様を迎える伝統意識が薄まり、日本の文化として伝えることが困難となっている。さまざまな要因が重なり、生産量は減少傾向にある。
一方、金額ベースの市場規模を見ると、19年シーズンは微減で着地したとみられる。本紙推計でも微減の108億~109億円で着地した。生産量減少に比べ、販売個数では健闘していることがうかがえる。事業所向け特大サイズや家庭向け大サイズの需要は減ったが、手軽な150~160gなど小サイズ、橙・干支付き・キャラクター付きといった幅広い選択肢がある小飾り商品の需要は高く、成長市場とはいえないものの安定している。
迎えた今シーズンの市場は、例年と大きく環境が異なる。新型コロナ感染拡大予防の新たな生活スタイルに変化していく中で、家族と過ごす正月や疫病を退散し新年を良い年で迎えたいと願う人が多くなることから、鏡もち文化復権のチャンスの年ともいえる。日本ならではの伝統が見直され、鏡もちの購買意欲アップも期待できそうだ。
市場の8割以上を占める新潟県内の各もちメーカーも好機ととらえ、今年度はさまざまな取組みや仕掛けを進める。トップシェアの越後製菓はプレミアムタイプのラインアップを充実。昨年の丸もち2アイテムに加えて「越後お鏡餅魚沼こがね切餅5号」を追加。たいまつ食品も新型の化粧箱や容器を採用し、豪華さや高い完成度を訴求することで単価アップを図る。同時に、これまで購入しなかった若い人にも受け入れられるデザインを意識した。
サトウ食品は、大量陳列がしやすい段ボール「らくらくパッケージ」を新たに採用し、売場での作業軽減を図る。新商品では、疫病退散に利益があるとされる妖怪をデザインした「小飾りアマビエさま」を発売し、新型コロナウイルス収束を願う。
さらに今年は、休校や緊急事態宣言による在宅勤務などで、通常では需要期でない春夏に包装もちの消費が急増。もともとのベースが低いとはいえ、4~9月の上期で前年比2~3割増加。もちの喫食経験が増えたことから、鏡もちの消費にも好影響が出そうだ。
このため食べ方をより訴求する動きとして、越後製菓が今年新たに「越後お鏡あんこ餅」を上市。鏡もちの容器に既存商品の「あんこ餅」を入れることで、簡便をアピールする。「あんこ餅入りお鏡餅」では先駆者のうさぎもちは前期も2桁伸長が続いたが、鏡開きに簡単でおいしく食べられる点が好評のため、今年も期待値は高い。アイリスフーズも「ぜんざいの素付」をラインアップしている。
今年はSMを中心に売上げの好調が続いており、廃棄ロスを考えると年末に鏡もちの販売で無理な数字は追わないという声も聞こえてくる。今後の市場自体も大きく拡大するとはいえないが、一方で急激に落ち込む市場でもなく、鏡もちを飾る文化は安定的に続くという見方が大勢。特殊な今年だからこそ前向きに「ちょっと買ってみよう」と思わせる仕掛けの中から、日本の伝統復権につなげられるかが注目される。
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