オリーブオイル特集

◆オリーブオイル特集:家庭用400億円突破 キャノーラ油抜きトップに

乳肉・油脂 2019.08.05 11920号 06面
500億円規模も現実味を帯びるオリーブオイル。潜在需要も十分で、付加価値食用油の代表格としての伸長が予想される

500億円規模も現実味を帯びるオリーブオイル。潜在需要も十分で、付加価値食用油の代表格としての伸長が予想される

国内オリーブオイル市場は18年、家庭用で400億円の大台を突破。金額ベースでキャノーラ油を抜き、食用油トップカテゴリーの座に就いた。かねてから有望市場として注目を集めていた同市場だが近年、調味料として使う「生食(生使い)」での用途が引き続き拡大。17年は原料環境により停滞を余儀なくされたが、優れた健康価値や多岐にわたるアイテムラインアップなども後押しし、高付加価値カテゴリーとして食用油全体の規模拡大にも機能した。

19年も参入メーカー・小売サイドでは多彩な活性化策をすでに展開。メニュー提案やクロスMDに加え、新たな使い方提案も見られるなど上々の出足をみせる。「健康」「おいしさ」「楽しさ」を兼ね備えるカテゴリーとして注目も高い一方、購入経験率は約50%と低く、伸びしろも十分。スペイン・イタリアなど生産国の原料状況にもよるが、現在の国内需要が継続した場合、将来的には家庭用規模で500億円の大台も現実味を帯びてくる。(村岡直樹、久保喜寛、深瀬雅代、小澤弘教)

国内家庭用オリーブオイル市場は18年、17年比約15%増となる410億円(本紙推定)に到達。405億円のキャノーラ油を上回り、金額ベースでは食用油最大のカテゴリーとなった。エキストラバージン(以下、EXV)・ピュアともに前年を超えたが、中でもEXVは大きく伸長、高単価ながらボリュームゾーンとして拡大した。

EXVは高単価・差別化商材が主流だが、主要メーカーは総じて好調に動いた。さらに輸入・商社系のアイテムも原料危機に直面した17年と比べ供給体制が復旧、拡大に機能したようだ。成熟産業である食用油で、圧倒的物量を誇るキャノーラ油を付加価値カテゴリーであるオリーブオイルが上回ったことは、業界の歴史上でも大きなターニングポイントといえる。

国内でのオリーブオイルの歴史は、実は浅い。市場の本格形成は1990年代のイタメシブームを契機とするもので、95年の市場規模は約35億円。その後、97年、主要メーカーが仕掛けて規模が跳ね上がり、以降十数年間、安定推移の形で100億円台をキープした。

再度脚光を浴びたのは2012年で、「健康的価値」を背景に注目度が大きくアップ。情報番組での露出やイタリア料理以外の使い方提案などで売場は拡大、250億円規模に到達、この時点でキャノーラ油に続く食用油のストロングナンバー2の座を固めている。

以降、食用油への健康価値の見直しを背景とする積極摂取意向の浸透や、「アヒージョ」に代表されるキラーコンテンツの登場で年々規模を拡大。ここ数年はこれに加え、「生食」用途が拡大し、市場は右肩上がりを継続、16年は360億円に到達した。17年は主要生産国(スペイン・イタリアなど)の未曽有の原料危機により前年を割ったが、供給体制が整った18年は通年で需要に対応。初の400億円突破とカテゴリー首位をダブルで達成した。

18年の成長基調には安定供給化に加え、さまざまな要因があるが最も需要を引き出したのは「かける」用途による生食での楽しみ方提案が奏功した点。業界ではエントリーを含めた「間口」と、より多様な食シーンを増やす「奥行き」の両面の拡大を図り、いずれの面でも成長エンジンとなった。そもそもオリーブオイルは、食用油の「生食」需要を早期から開拓してきたカテゴリーでもあり、長きにわたる取組みが実を結んだともいえる。

●食用油の市場規模拡大に寄与

19年の市場だが、原料の適正確保とこれに見合う価格適正化は必須として、本紙では(1)定着傾向にある生食需要の「細分化」への対応(2)加熱分野を含めた「汎用(はんよう)性」の再訴求(3)「情緒的価値」をベースとする新需要の開拓–の3点が鍵を握ると分析する。

(1)生食需要の「細分化」は、従来までの「かけて楽しむ」食シーンがさらに多様化することを想定するもので、近年では、例えば和食やスイーツなど新たなオリーブオイルの楽しみ方が顕在化している。この傾向がさらに進んだ場合、対応する用途シーンに最適なオリーブオイルを提案する重要性はより増すだろう。

オリーブオイルはオリーブを搾った天然ジュースであり、それだけに生産国や土壌、気候や栽培方法などでおいしさの質が大きく変わる。生食での楽しみ方が多様化し、数多くのアイテムが存在する中で、場面に応じて何が最も適するのかを示唆していく必要がある。すでに一部メーカー・小売では同取組みに着手しているが、生食需要の「奥行き」をさらに拡大するためには、啓蒙(けいもう)活動を含めた取組みも必要となるだろう。

(2)「汎用性」の再訴求は、物量ベースでの拡大や購入率上昇の面で重要な意義を持つ。生食が浸透する一方で、食用油本来の価値である加熱媒体としての汎用性は日々の食卓に不可欠であり、生食と比較して物量ベースでも圧倒的な構成比を持つ。

同分野に関する取組みは近年、大手を中心に展開。これまで日清オイリオグループ「日清やさし~く香るエキストラバージンオリーブオイル」「日清さらっと軽~いオリーブオイル」、J-オイルミルズ「ユーロリーブ」(ブレンドタイプ)などがけん引していたが、今秋はJ-オイルミルズが100%タイプの「AJINOMOTO 軽くて あっさりしたオリーブオイル」を上市し、昭和産業も同じく100%タイプの「オリーブオイルライトテイスト」を発売。加熱用途に適したオリーブオイルとして、汎用領域での拡大が進む可能性が高い。

(3)「情緒的価値」での新需要開拓は、オリーブオイルならではのプレミア感やファッション性を生かした新領域への挑戦施策を意味する。独自の優れた世界観を持つオリーブオイルは、「加熱媒体」「生食(かける・あえる)」に続く、新たな食シーンを生み出す可能性が食用油の各カテゴリー中、最も高い。

その最右翼として注目されそうなのが、日清オイリオグループが「BOSCO」で提案している“食べるハーバリウム”。野菜や肉、ハーブやスパイスなどを透明瓶でオイル漬けするもので、簡単レシピでオリーブオイルの本格感を享受できる。キッチンインテリアとしてのSNS映えや、オリジナルレシピの拡散効果など近年のトレンド性を含むほか、物量ベースの拡大やかねてからの市場の課題でもある若年層の発掘の面でも注目したい。

オリーブオイルは日本では歴史は浅い部類に属するが、海外(特に欧州)では伝統食品として長い歴史を持つ。本場での知られざる魅力的な使い方も数多く存在すると考えられ、重要なヒントとなりうるだろう。

また、市場拡大に伴い、国際基準に準じたい規格形成も急がれる。業界では現在、国際オリーブ協会(IOC)基準の国際規格を取り入れる動きが進み、近年中の実現が予想される。主要メーカーの大半はこれを上回る厳格な自社基準をすでに敷いているが、食の国際化や品質に関する誤認を払しょくするためにも重要となる。

これらを踏まえると、19年の国内家庭用オリーブオイル市場は、生食の多様化をベースに汎用的領域を拡大し、これにいくつかの話題喚起が後押しする形で規模を拡大しそうだ。4~6月は大きく前年を超え、秋からの本格需要期に対応できれば、約10%増の450億円規模も射程圏内にある。将来的に、500億円を突破した場合、食用油の構図はさらに大きく変わり、かつてない新たな局面を迎えることになる。

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